魅力:産地が一体となって新規就農者をサポート!!
平均年齢39.1歳! 20代~30代が中心の総社もも生産組合
取材班がお邪魔させていただいたのは、岡山県主催の就農希望者向けのイベント『晴れの国おかやま もも・ぶどう産地見学ツアー』。参加者は全5組10名。小学生のお子様連れのファミリー、20代からシニアのご夫婦、愛知県からの参加者など、顔ぶれは多彩です。開催時期によっては、定員以上の申込があるイベントです。
大阪市梅田を出発したバスは一路、岡山県総社市へ。岡山市、倉敷市に隣接し、高速道路や鉄道などの交通アクセスに恵まれた総社市は、教育施設、商業施設、公共施設も充実した暮らしやすい街です。
ツアーバスは、総社もも生産組合が管理する桃のほ場に到着。組合長の秋山陽太郎さんからお話を聞きました。9戸の農家からなる同組合。特徴は1戸あたりの平均栽培面積が1.3haと県内でも大規模なことと、桃専業農家が集まっていること。 また、就農希望者を積極的に受け入れているから経営主の平均年齢が、なんと39.1歳。全9戸のうち30代が3人、20代も4人います。
「総社市で桃農家になりたい」という若い就農希望者も増えており、同組合でも毎年1~2名の研修生を受け入れ、栽培技術から農地や住居の情報提供まで総合的にサポートしています。
先輩就農者の体験談~「好きなものをつくりたい」と農業の世界へ
「岡山県倉敷市出身で大学は京都府内へ。モノづくりがしたいと思い、茨城県のメーカーで15年働き、3年前に総社市に来ました」と話すのは中原明仁さん(41歳)。社会インフラを支える仕事にやりがいを感じつつも、時代が変わっても価値が揺るぐことのない農業に魅力を感じるようになったと言います。 会社を辞めて農業をすると聞いたとき、奥様の恵理さん(33歳)は「私自身も企業の研究職という働き方に不満を感じていたので、タイミングも良かった。好きなことを考えながら働けるほうがいいと思ったので躊躇はなかったです」と、おおらかな笑顔で答えてくれました。
秋山組合長の栽培技術の指導はどうだったかとの問いに、「秋山さんは、技術を教えてくれることももちろんですが、見守りながらまず自分で考えてやってみろと言ってくれるタイプ。自分で試行錯誤するなかで尋ねればアドバイスもしっかりもらえます。ただ、収穫の忙しい時期を除いてですが(笑)」と冗談交じりに答えてくれました。
新規就農者にとって一番気になるのが収入面。「どれくらい、稼げるもの?」との質問には「総社市の場合、すべての樹で収穫ができるとすれば年収は1000万円程度になりますよ」と秋山組合長。収入保険や農業共済などの保険、桃の栽培に必要な防風ネット等の助成といった国や県の支援制度もあります。 JA岡山西吉備路アグリセンターに移動してのランチミーティングでは、「家賃の相場は?」との質問が。「研修中は2DK、2台分の駐車場付きで3万円~5万円くらいの集合住宅などを利用しています」とのことです。
《桃栽培の年間スケジュール》
▶12月~3月 蕾を落とす(花が咲くまでにやりきる)
▶4月 受粉作業
▶ゴールデンウイーク頃 「樹も人と同じ。刺激しないよう距離をあけます」と秋山さん 年中忙しいわけではなく、オンとオフのメリハリがはっきりした暮らし方に魅力を感じる就農者も
▶6月~9月 収穫
▶9月~ 収穫しつつ剪定作業など
▶10月~11月 とくに作業なし。ライスセンターでお米の出荷のアルバイトをする人、海釣りに出かける人、何もしないでのんびりする人も
魅力:行政機関等も新規就農者をサポート!!
2万7000㎡!広大なブドウ研修用ほ場がある吉備中央町へ
午後、バスが向かった先は吉備中央町。岡山県中央部に位置するこの町は標高300~500m、高原地帯で夏は涼しく冬も比較的温暖というリゾート地のようなエリアです。バスの車窓から見えてきたのは、幾つもの棚田と里山が織りなす田園風景。日本の原風景に癒されながらに吉備中央町に到着しました。
次に見学したのは「くだもの王国おかやま」で、桃とならぶ2大看板のブドウ産地です。 案内していただいたのは公益財団法人吉備中央農業公社の研修用ほ場。岡山県が全国有数の生産量を誇るブドウの「ピオーネ」を中心に2万7000㎡もの広さの畑です。ここではブドウの基礎を教えていただきました。
「ピオーネが鮮やかに色づくには、夜間の低温が必要」と備前広域農業普及指導センターの田村さん。標高の高い同町はピオーネ栽培にぴったりというわけです。1本の樹には約300房が実ります。2月に枝切りを行い、4月に芽が出て、6月に花が咲きます。7月に果実が色づき始め、9月から収穫できます。
公社が研修を担当。安定的で均一な研修を実現
ほ場での説明後は、吉備中央町の研修制度、受入体制についてお聞きしました。 同町の特徴は、2年間の研修を公益財団法人吉備中央農業公社が主体となって行うこと。決められたカリキュラムに基づくことで、安定的で均一な研修を受けることができます。さらに農業研修中は年間150万円の研修費が支給されますが、同町では30万円が上乗せされるそうです。(要件あり)
先輩就農者の体験談
「就農して良かった70%、つらいこと30%」こう語るのは、この制度を利用して埼玉県川口市から移住し、3年前に独立した瀬尾さんご夫婦。 「震災が起こり、今後の生活を考え直したのが就農のきっかけ。二人で九州、東北、関東、そして中国地方と全国を回り、岡山を選びました」と夫の和弘さん(56歳)。やることをやればのほほん、としていられるイメージでしたが、果実の成長は想像以上に早く、スピード勝負なのが意外だったとか。「つらいことも多いけど、奥さんが全力で支えてくれたからやって良かったと胸をはって言える」と笑顔で話す和弘さん。やって良かったと思うときはとの問いに「丹精込めて作ったブドウを、おいしいと言ってもらえる喜びは何ものにも代えられない」とご夫婦で口を揃えます。
「家族との時間を大切にしたい」と思い、北海道から移住し、奥様とお子様(1歳、3歳)とともに暮らす佐々木貴宏さん(36歳)は、豊富なサポートに安心感を抱いています。マイホームを建てるべく、土地も確保済み。
「定年の後、何も生きがいがないのは虚しい」と考え、岡山での就農を決めたのは三上淳子さん(55歳)。兵庫県明石市から移住し、夫、長男の3人暮らしです。地元の吉備中央町出身という丸山淳之介さん(35歳)は、Uターン組。以前同様のバスツアーに参加し、楽しそうな生産者を見て決意しました。
先輩生産者が忙しい時や就農後の技術支援については? との問いに、「農協の指導員や、農業普及指導センターの職員に聞けるので安心です。」とのこと。
県の担当者によると、「農業普及指導センターは県の組織で県下9地域にあり、就農後も技術アドバイスなどのサポート体制が整っているのも魅力」だそうです。
◆◆バスツアーを終えて◆◆◆
岡山県での就農に興味を抱き、バスツアーに参加した皆さんからは、 「実際のほ場を見て規模などの想像が出来、とても参考になりました」「支援体制がとても良いと分かった」「生産者さんや移住された方々からのリアルな御意見・アドバイス、その地での暮らしがイメージできました」などの声が聞かれました。
岡山県では今回のようなバスツアー以外にも、全国各地で年間30回ほど就農相談会を開催。実際に就農計画を立てる、というリアルな体験ができるセミナーも。相談会では、研修体制や日程、住まいや暮らしなど、就農に関する相談をなんでも受け付けているので、就農に興味のある方は参加してみては。
【編集後記】
先輩就農者はいずれも、未経験から農業の世界に飛び込んだ方々。
「暑い中での収穫は大変」「猪や蛇が出るんですよ」と言いつつ、とても楽しそうだったのが印象的でした。
吉備中央町でぶどう農家として歩みだした瀬尾さんは
「自分の育てたシャインマスカットが1房3500円に! 岡山のフルーツは単価が高いからワクワクしますよ」
とうれしそうに語ってくれました。
こうした声を聞く参加者一人ひとりの表情が驚きと喜びに包まれる印象的なツアーで、取材班としても参加できてうれしかったです。(笑)
【関連情報】
ホームページ:晴れの国岡山で農業をやってみませんか?
【連絡先】
〇岡山県 農林水産部 農産課 担い手育成班
〇住所:〒700-8570 岡山県北区内山下2-4-6
〇電話番号:086-226-7420