湘南をオーガニックの街に 作る・届ける・楽しむの3方向で取り組む地産地消

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湘南をオーガニックの街に 作る・届ける・楽しむの3方向で取り組む地産地消

湘南をオーガニックの街に 作る・届ける・楽しむの3方向で取り組む地産地消

最終更新日:2019年03月11日

神奈川県平塚市の1.2ヘクタールの畑で炭素循環農法を用いて野菜を栽培する株式会社いかすは、栽培のほか、個人宅配、有機農法を学ぶ学校や都内にレストランも経営する多角経営に取り組んでいます。「湘南をオーガニックの街に」との目標で、野菜を作る・届ける・楽しむの3方向から有機野菜の普及と地産地消にも挑戦する同社代表の白土卓志さんに、これまでの歩みと、今後について伺いました。

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きっかけは「未来日記」 炭素循環農法に惹かれ農業界へ

2015年設立の株式会社いかすは、炭素循環農法で栽培された農作物の加工・販売、レストランの経営、自然栽培や有機農業についての知識や技術を学ぶ学校の運営などを行っています。2017年には、神奈川県平塚市に1.2ヘクタールの畑を借り、野菜の栽培と農業体験・イベントなどにも取り組んでいます。

平塚市内の畑(株式会社いかす提供)

代表の白土さんは15年近く人材紹介関係の仕事についていたという異色の経歴の持ち主。農業を始めたきっかけは、なんと学生時代に書いた「未来日記」だそうです。2008年、31歳になったら始めることとして「農業大作戦!」と書いてあったのを読み返し、農業を始めるべく、すでに農業を仕事にしていた友人2人に連絡を取ったといいます。そして、出会ったのが炭素循環農法でした。

「畑にいたら、人生が楽になる」

炭素循環農法とは、炭素の投入量を増やすことで、微生物を活性化させて土の発酵を促す、化学肥料や農薬を用いない有機農法の一種です。「窒素肥料のあげすぎによって植物がメタボ状態になると病気が発生するという考え方は、目からうろこだったのと同時に、直感的に納得する部分もありました」。白土さんはその奥深さに魅了されたといいます。

当時経営していた人材紹介会社で在宅勤務の制度を作り自ら活用。都内から神奈川県二宮町で炭素循環農法を実践していた農家に通い始めました。最初は月1、2回、次第に週2回通うようになり、白土さんの中で農業を仕事にしていくという将来が形になっていきました。

炭素循環農法での野菜作りについて説明する白土さん

「畑の癒しの効果を、特に微生物がたくさんいる畑で体感して、『畑にいたほうが人生楽になる』と感じました。会社員時代も会社を経営しているときも無我夢中で働いて楽しかったけれど身体をないがしろにしていたんだなと知ってしまった。こういう感覚をもっといろんな人に体験してもらえたらと思いました」。

農作物を作るだけでなく農業を楽しむ機会や有機農法に取り組む農家の支援も提供したいと考え、2015年に仲間と経営していた人材紹介会社を辞め、本格的に農業に取り組むための新会社を立ち上げました。

当初の主な事業は、レストランの経営と全国にいる炭素循環農法の仲間の有機農家から集めた野菜の個人宅配。会社設立前から仲間の野菜をマルシェに出店していた経緯があり、これを会社の事業として引継ぎました。友人だったシェフもちょうどそのタイミングで京都から東京に出てきて、同時期に居ぬき物件も紹介されたことからレストランの経営も開始。湯煎するだけで味わえる有機野菜をふんだんに使った冷凍食品のシリーズなど、野菜の加工事業も始めました。さらに、2017年には平塚市内に念願の畑を借り、野菜の栽培を開始しました。

有機農業の課題、流通の確保に挑戦

事業を拡大していく中で、次第に形作られてきた「湘南をオーガニックの街に」との構想。出発点は、「地元の野菜が地元のスーパーで購入できないのはなんでだろう」という疑問でした。「この辺りはタマネギをたくさん作っているのに、地元産のタマネギは地元のスーパーには置いていない。ちょうど宅配業者が一斉に送料を値上へした時期でもあり、そもそも有機農業に取り組む際に、どう流通を確保するかという問題は避けて通れない。地産地消という言葉はあったけれど、自分の中で本気で取り組む時代がきたと感じました」。

炭素循環農法の野菜は、糖度だけでなく高酸化力やビタミンCも平均値と比べ高いという調査結果が出ているという(株式会社いかす提供)

現在いかすでは、野菜を作る・届ける・楽しむの3方向から湘南地域での有機野菜の普及と地産地消に取り組んでいるそうです。

まず「作る」の部分では、自社で野菜を栽培するだけでなく、有機農家の仲間を増やすために、有機農業の知識や技術を学べる「サステナブル・アグリカルチャー・スクール」を2018年から開講。県の農業技術センターと連携して、慣行農業に有機農法のノウハウを取り入れて生産効率を高める研究も進めています。また、東京大学農学部とともに、炭素の循環を意識した有機農業の研究も進めているそうです。

野菜を「届ける」仕組みとしては、2018年から平塚市内のスーパーに有機野菜のコーナーを設置してもらい仲間の野菜を含め販売しているほか、野菜の包装・店への運搬を担う流通の仕組みも2019年中に作り上げる予定だといいます。「まずは農家の手取りが増える流通の仕組みを整える。うまくいけばニーズの高い個人宅配まで、独自の流通網を整えたいです」。

平塚市内のスーパーにある専用の売り場(株式会社いかす提供)

最後の「楽しむ」は、湘南地域に住む消費者に有機農業や地産地消の楽しさを伝える取り組みです。現在は畑でのイベントを開催するほか、東京で野菜の美味しさと料理の楽しさを伝えるクッキングクラスを開催しており、地元でも開催する準備を進めようとしているところです。
「食べると遊ぶは結構近くて、有機野菜の場合、野菜が美味しいのでそれほど料理の手間をかけなくていい。今の時代、『料理しない』という流れを止めるのは困難だけれど、手の込んだ料理をしなくても時短で十分楽しく美味しいものが作れることを伝えたい。地元のレストランとも連携していけたら」。

湘南地域の有機農家10軒ほどと連携し、勉強会を開催するなどして生産技術の向上にも力を入れています。地元の有機野菜を手軽に味わい、楽しめる「オーガニックの街」構想は、少しづつ形を作りつつあります。

農業体験イベントで(株式会社いかす提供)

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