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水耕栽培とは 土耕栽培や植物工場と何が違う? 

水耕栽培とは 土耕栽培や植物工場と何が違う? 

農業に詳しくなくても「水耕栽培」という言葉を知っている人は多いのでは? スーパーマーケットの店頭で売られている野菜の中には水耕栽培で育てられたものがたくさんあります。意外に身近な水耕栽培、一体どんな仕組みなのでしょうか。気になる味や栄養に関してもお伝えします。

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水耕栽培とは

水耕栽培とは養液栽培(※)の一種で、培地を使用せず、水に養分を溶かした培養液で野菜等を栽培することです。養分は液体肥料。主にハウスなどの施設内での栽培となるため、季節に左右されることが少なく、虫や病気などの外的要因による被害を受けにくいのも特徴です。土を使用しないため、土耕栽培より衛生管理が簡単であると言われています。

※「養液栽培」とは、土を使わず養分を水に溶かして水や固形培地で栽培する方法を言います。

土耕栽培とはどう違う?

植物にとっての土の役割は何でしょうか。
土は、植物に水や養分、酸素を与えます。植物は土に根を張ることで体を支え、その根元の温度を保ってもらうこともできます。また、土の中で有機物が分解されて栄養として吸収しやすくなります。
この土の担っていた役割を別のもので代替することで、水耕栽培(養液栽培)が可能になるのです。
水はもちろんのこと、栄養分は液体肥料が与え、体を支える役割は水に浮かせた水耕パネルなどが担います。水温の管理も制御システムを使えば可能ですので、植物にとってはより生きやすい環境を実現できるでしょう。
また、土耕栽培で問題となる「連作障害」は水耕栽培では起こりません。連作障害が起こる原因は、土の中の栄養素と微生物生態系のアンバランスだと言われていますので、そもそも土を使わない場合は発生のしようもありません。

水耕栽培の種類

湛液(たんえき)型


ベッドと呼ばれる、ある程度の深さのある水槽に水をためて、その中または表面で栽培する方法です。水に浮くパネルなどに苗を定植して栽培します。
湛液型では水を大量に使用するため、野菜を育てるベッドは、水の重さに耐えられる強度がなければいけません。また、根腐れを防ぐために水中に空気を送り込むポンプを設置する必要があります。水量が多いので水温が安定しやすいのがメリットです。
レタス・水菜・葉ネギなどの葉物野菜が向いていると言われています。

薄膜(はくまく)型

NFT(Nutrient Film Technique)とも呼ばれます。薄膜型水耕は、わずかに傾斜を付けた浅い栽培槽に薄く水を流して作物を栽培します。ベッドを勾配1~3%ほどの緩やかな坂にして、そこに浅く溶液を流し、その液をずっと循環させるか、かけ流すことになります。循環させる場合には、培養液を殺菌する装置が必要です。
根が空気に触れているので、湛液型の時のような酸素供給は必要ありません。また、使う水の量が少ないためベッドの強度もそれほど必要でなく、多段式にでき、狭い土地で収量をあげられる場合もあります。
しかし、ずっと水を循環したりかけ流したりする必要があるため、停電すると水の供給がなくなり、野菜が枯れてしまうというデメリットがあります。

植物工場とは違う?


水耕栽培でも、施設を使わず休耕している水田を使う方法があります。一方、植物工場でも土を使用している場合があり、「植物工場では必ず水耕または養液栽培」というわけではありません。
水耕栽培の施設内の温度、湿度、光、培養液、CO2濃度などの環境条件を完全に制御した場合、植物工場の定義に当てはまると言えるでしょう。

【参考記事】知ってる?農業キーワード~植物工場~

水耕栽培の培養液はどういうもの?

培養液とは、植物の成長に必要な養分を吸収に適した組成と濃度で水に溶かしたものを言います。作物や使用しているシステムによってその処方(養分の組み合わせ)は異なります。

原水とは

培養液に使用される水のことを「原水」といいます。地下水や雨水、ため池や河川からの農業用水、または水道水を使用する場合もあります。
原水として使用するには、病原菌や有害物質を含んでいないなどの要件をクリアする必要があります。
要件を満たしていない場合は、フィルターでろ過するなどの水質改善を行います。

栄養分は液体肥料

原水に液体肥料を加えて、培養液となります。
野菜づくりには三大要素の窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)が必須。その他にもカルシウム・マグネシウムなども必要です。水耕栽培で使われる培養液には、これらの栄養分が含まれていなければなりません。
この培養液に入れる液体肥料は栽培する野菜の種類によってその処方が異なり、研究機関やメーカーが開発しています。また、それぞれの農家でも工夫を行っています。

水耕栽培の野菜の味は?

さて、気になる味の点ですが、2018年6月、興味深い研究結果が発表されました。
筑波大学の草野都(くさの・みやこ)教授と株式会社キーストーンテクノロジー、国立理化学研究所による研究グループが、水耕栽培と土耕栽培で全く同じ組成の液体肥料を用いて、サニーレタス2品種(ブラックローズとレッドファイヤー)を33日間栽培。その結果、味や見た目に違いがみられたというのです。
二品種とも、土耕の場合の方が甘みを示すショ糖やレタス特有の苦みの成分であるセキステルペン類の値が高く、水耕の方はうまみを表すグルタミンの成分の値が高く出る結果となりました。
この研究結果は、水耕と土耕など栽培方法の違いによって、よりカスタマイズされた野菜の生産が可能性を示唆しています。

水耕栽培は土耕栽培の代わりではなく、水耕栽培ならではの発展を遂げ、より差別化した野菜の生産が可能となっています。研究者や生産者の今後の努力によって、さらなる進歩が望めるかもしれません。

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