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学生が作る「一夜限りのレストラン」 クラウドファンディングで資金調達

学生が作る「一夜限りのレストラン」 クラウドファンディングで資金調達

2019年3月13日。ある調理専門学校の学生8人が「農家の思いを伝えたい!」というテーマの下「一夜限りのレストラン」を開きました。彼らはこのイベント用の食材探しをする過程でたくさんの農家と出会い、大いに触発されたとの事です。その経験をどのように料理に昇華させるのでしょうか? レストラン開店を決めてから当日までの様子をお伝えします。
(写真提供:若林佳太)

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若き料理人たちの挑戦。そのコンセプトは?

奥左から加藤さん(グリーンバスケット)、鈴木さん、三木さん、石井さん、飛田さん、若林さん。手前左から青木さん、宮園さん、遠藤さん

「一夜限りのレストラン」開店の背景には、調理専門学校の調理実習チームで苦楽を共にし、卒業後は別々の道を歩む学生8人が一丸となり、卒業前に何かを成し遂げたい!という思いがあったそうです。イベントの経緯や作った料理、彼らの将来の夢などについて聞きました。

Farmer’s Market@UNU での一コマ(写真提供:若林佳太)

──イベント開催にあたって、最初に始めた事は何ですか?

「食材探しです。調理実習では学校側が食材を用意するのですが、今回は自分たちで探す必要がありました。僕たちは食材を生産している農家を誰一人として知らなかったので、青山・国際連合大学前広場で開催されているFarmer’s Market(ファーマーズマーケット)@UNUを見学しに行きました」(青木・石井)※以下、敬称略

「Farmer’s Marketでは農家の方がさまざまな食材を対面販売しているので、お会いして話す事ができます。いろんな農家に話しかけたところ、食材にかける愛情や情熱、商品に対する知識を聞かせてもらうのがとても面白かったのです。こちらで出会った農家で『もっと話を聞かせてほしい!』と思った方の畑を見せていただきました」(遠藤)

おいしさの本質ってなんだろう? 農家から学んだ味の多様性

──畑を視察して、強く印象に残った農家について教えてください。

「静岡県磐田市(遠州)でオリーブを栽培している『Enshu Olives (遠州オリーブ)』さんです。主な産地である地中海沿岸とは湿度や気候が異なる日本でオリーブを育てるチャレンジ精神や、農園の土地や下草の様子を見ることで、ベストな育成方法を考える姿がかっこよかったです」(宮園)

遠州オリーブ視察中(写真提供:石井亮太郎)

「東京都青梅市で西洋野菜や、日本の伝統野菜を生産する『Ome Farm(おうめファーム)』さんです。さまざまな業種から農業に参入した人たちが農業を行う事で、多角的な視点が野菜の生産に生かされます。その結果、本当においしい野菜が生まれているのが『すごい!』と思いました」(鈴木)

Ome Farmのケール(写真提供:青木虎太郎)

──畑を視察した時の感想はどうでしたか?

「色んな農家の野菜を試食し、『おいしさの本質ってなんだろう?』と衝撃を受けました。というのも、どの農家の野菜もおいしい上に多様性があるのです。例えば同じトマトでも、甘い物、酸味が強い物、触感の違いなどがあり、これまでに僕たちが『これはトマトだ』と思っていた野菜の概念がくつがえされました。そういう食材に出会うと、料理のインスピレーションが湧きますね」(青木・鈴木)

茨城県取手市・シモタファームのナスタチウム(写真提供:若林佳太)

神奈川県南足柄市・グリーンバスケットのニンジン(写真提供:若林佳太)

──そこからどのように、レストラン開店まで結びつけたのでしょうか。

「各農家のこだわりが詰まったおいしい野菜や商品に刺激を受けた事から、料理人である僕たちが『農家の思いや情熱を伝えたい!』と考えるようになりました。そこで、レストランの開店資金をクラウドファンディングで募り、料理を提供するだけではなく僕たちが感銘を受けた農家のお米やハチミツといった商品を支援者に提供し、味わっていただきたいと考えました。その結果、69人の支援者から当初の目標金額を大きく上回る47万7500円もの資金提供を頂きました!」(青木)

──支援者は、どのような思いで皆を支援したのでしょう?

「支援者には農家の方もいたようです。『農家と消費者をつなぐ架け橋になりたいと、若い人に思ってもらえてうれしい。里山の魅力を伝えてくれてありがとう!』といったメッセージを受け取りました。頑張って農家の思いを伝えていこうと思います!」(青木)

「一夜限りのレストラン」、いよいよオープン

このような経緯がありオープンした「一夜限りのレストラン」。農家から入手した食材を使い、全10品の創作料理のコースを提供したそうです。

──10品の中で、どの料理に一番思い入れがありますか?

「ナスタチウム、ビーツの葉、ケールといった野菜にイタリアンパセリ、ディル、レモンタイムなどのハーブを合わせ、酢とサラダ油を混ぜたソースで和えた、野菜サラダです。このサラダは、農園から頂いた野菜を一つ一つ味見して合わせ、香り高いサラダに仕上げました」(青木・鈴木)

──料理をお客さんに出す際に、何か心がけている事はありますか?

「僕たちは調理を学んだ上で、料理を給仕するサービスマンを担当しました。『この料理はどう作ったか?』という調理法の説明ではなく、きちんと食材の事を知った上で、料理の価値を伝えていけるよう、心がけました」(三木・若林)

──実際に、レストラン運営に挑戦した感想を教えてください。

「工程を組み、全てを時間通りにこなすのが、今後の課題ですね。というのも、調理実習ではできていたコミュニケーションが実践では思い通りにいかず、時間が押してしまって。『やはり、プロの料理人はすごい!』と思いました」(青木・遠藤・三木)

料理人が伝えられるコトって?

──最後に、料理人が伝えられるコトって何だと思いますか? 将来の夢と絡めて教えてください。

「調理をする際に、野菜の根など廃棄部分として捨てられる物をうまく使えないか? どうしたら少なくできるだろうか?といった『もったいない』の意識を、周りの人につないでいきたいです」(石井・飛田・宮園) 

「日本各地で『食』を通して、フードロスなどの社会問題の認知度向上や、それらを改善する為の取り組みにチャレンジしていこうと考えています」(遠藤・若林)

「自分自身が影響力を持ち、サスティナビリティ(持続可能性)や農家の思いといった食の背景を、食のイベントを開催する事で訴えかけていきますので、ぜひ応援してください!」(青木)

──2018年10月に始まったこの企画。約半年間、お疲れ様でした!
 
* * *

一年間という短い学生生活ではありますが、若者たちは調理法だけではなく農家の思いや社会問題にまで、大いに視野を広げたようです。おいしいだけではなく、その裏にあるテーマが感じられる彼らの料理を、将来いただくのが楽しみです。

virgule19’s blog(鈴木さんのメモ):生産者の方の想いや情熱を伝えたい!
 

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