大根の生まれ故郷はどこ?
大根の生まれ故郷のはっきりとした場所についてはよく分かっていないようですが、地中海沿岸部から中東あたりではないかという説があり、他のアブラナ科野菜にもこのあたりの地域が起源と言われるものが多くあります。そこから日本へは中央アジア、ロシア、モンゴル、中国東北部、韓国という北からのルートと、中東からインド、東南アジア、中国の華中・華南・西南地方という南からのルートを通して伝わってきたようです。北ルートのものは華北系大根、南ルートからのものは華南系大根と呼ばれており、それぞれのルートを通る中で独自の発達をしています。
奈良時代にまとめられた古事記と日本書紀には「おほね(おおね=大根)」の記述があるため、その頃には日本に渡ってきていたようです。日本にはまず華南系品種を中心に広まり、それに近縁種である浜大根や華北系の品種などが混ざり合い、各地域の気候風土に合わせた多様な品種が生まれていきました。
浜大根とは?
浜大根は遺伝子的に大根ととても近く、日本各地の海岸などに自生しています。葉や花などの見た目は大根と似ていますが、根は栽培種に比べて太くなりません。以前は大根の栽培種のこぼれ種から野生化したものと言われていましたが、現在ではもともと野生種の大根が中国から伝わったものであるという可能性が指摘されています。ですが栽培種の大根とも頻繁に交雑しているようです。大根の品種改良を行う際にこの浜大根が使われることもあり、多様な大根品種を生み出すための大切な遺伝資源となっています。
青首大根のルーツは中国北部

中国北部の天山山脈。この麓に大根の原種が自生しているという
日本各地でさまざまな品種が生まれた大根ですが、現在では味に辛みや癖がなくて食べやすく、大きさが手頃で栽培・流通がしやすいなどの理由から、華北系大根をルーツとする青首大根が主流となっています。華北系のルート上にある中国北部・天山山脈の麓あたりには、大根の原種が今も自生していると言われていて、青首大根の栽培のコツはこの地にヒントがありそうです。このあたりは乾燥した石ころだらけのやせ地土壌で、冷涼な気候が特徴です。
①乾燥したやせ地
②冷涼な気候
生まれ故郷の環境から考える大根栽培のコツ
今回は数ある大根の種類の中でも、特に栽培されることの多い青首大根の生まれ故郷から、その栽培のコツをみていきましょう。基本的には他の種類の大根でも当てはまるコツを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
生まれ故郷の特徴①乾燥したやせ地
大根の原種は乾燥したやせ地を好むようです。日本の土壌は火山灰土が多く、水はけが良い土地が多いですが、粘土質で水はけの悪い畑では腐敗しやすくなるため工夫が必要です。畝を高くしたり、土にもみ殻くん炭・腐葉土・バーミキュライトなどを混ぜるなどして、水はけをよくしましょう。
またやせ地で生まれた大根は肥料分が多い畑や、未熟な有機物の多い畑を苦手としていて、病気や根別れの原因となります。匂いが臭くなく、水分量の多くない完熟の堆肥(たいひ)のみ使うようにしましょう。場合によっては堆肥なしでも十分育つ場合もありますし、伝統的な在来品種ほどその傾向は強いです。まずは少なめの堆肥で大根を育ててみて、様子を見て増やしていくようにしましょう。
生まれ故郷の特徴②冷涼な気候
大根の栽培適温は17〜20度あたりと言われ、低めであるとともに以外と適温範囲は狭いです。
各地域によってちょうど良い種まきの時期というのは微妙に異なりますので、種まき時期を逃さないように注意しましょう。基本的には9〜10月ごろに種をまき、11〜1月ごろに収穫する品種が多く、時期的にも作りやすいです。品種を選べば春や夏に作れるものもあります。
やせ地でも育つ生命力を生かそう
華北系のルートを経てきた大根の原種は、気温も低くやせた土地で育ったとても生命力のある野菜です。畑でもその生命力を生かすために、肥料を入れ過ぎないようにするのがポイントとなります。また、日本の過湿になりやすい環境には弱いので、その点は注意しましょう。
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