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お給料もらいながら研修も ナチュラルラボラトリー・高柳雄哉さんの場合【まるごと新規就農】

連載企画:まるごと新規就農

お給料もらいながら研修も ナチュラルラボラトリー・高柳雄哉さんの場合【まるごと新規就農】

就農までにかかる時間、作物選びに土地選び、初期投資にいくらかかるのかなど、何かと不安の多い新規就農。連載「まるごと新規就農」では、新規就農を経験した先輩方の就農体験を徹底分析、その全容を余す所なくお伝えします。今回は、長野県南相木村の有限会社南相木村故郷ふれあい公社で農業研修を始めた高柳雄哉さんです。就農はこれからですが、国の補助金ではなく、雇用就農でもなく、お給料をもらいながら農業を学ぶというユニークな農業の始め方です。

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農業を始めた経緯は

愛知県出身の高柳さんは、昨年10月まで5年半、東京で消防士をしていました。公務員という安定した仕事を持ちながら、心の中には「いつか自分のビジネスを」と起業への情熱を燃やし続けてきたといいます。
「ホリエモンなどIT起業家がもてはやされた2000年代前半に10代を過ごしたこともあり、独立し自分でビジネスをすることに強い憧れがありました」。

2018年春、仕事でいつも行動を共にすることが多かった消防署の同僚から実家が農家だという話を聞き、農業で成功した体験談に引き込まれました。その後、様々な就農の在り方について情報収集を重ね、ついに農業に挑戦することを決めた高柳さん。自身の独立志向と、借金・膨大な出費なしで農業を学ぶという堅実さを両立させる高柳さんの農業の始め方は、限られた資金で就農を目指すための参考になりそうです。

【まるごと新規就農】記事一覧

東京から、人口千人の村に

1.「農業いいかも」から8か月で研修開始

同僚から農業について話を聞いた高柳さんは、さっそく2018年2月に都内で開催された就農フェアに足を運びました。就農フェアでは新規就農を支援する自治体や団体、求人を出している農業法人など様々なブースが並び、様々な農業の始め方を提案していました。

「独立就農はあこがれますが、農業経験の全くない私がいきなり独立するのはリスクが高すぎる。2年程度の研修で独立して収益が出るのかもよくわかりませんし。生活費だけで農業が学べるという仕組みもありましたが、『とりあえず生活費の500万円用意して』と言われ、これは無理だと。農業法人に就職するというのも安定してはいますが、独立志向の高い私にとっては、求めているものと違うと感じました」。

いずれもピンとこないままにいろいろなブースで話を聞く中で、出会ったのが南相木村故郷ふれあい公社の農業事業部、ナチュラルラボラトリーです。南相木村故郷ふれあい公社は、南相木村の第三セクター。地域おこし協力隊の制度を利用し3年間、従業員として給与を得ながら農業を学ぶという提案でした。加えて、住居は村の村営住宅が無料で提供され、独立就農時には農地探しなども村のサポートが受けられるという充実ぶり。南相木村は人口千人ほどの村ですが、田舎暮らしに何の抵抗もなかった高柳さんは、「これだ」とすぐに移住に向けて動き出しました。

就農フェアの約2か月後、2018年の5月には連休をとって南相木村を数日間訪問。農場見学や農業体験で農場や周りの環境を確認し就職を決意すると、9月末には移住し、農業研修を始めました。

4.引っ越し代と車代のみの初期投資

月々の生活費も住居も保証されたナチュラルラボラトリーでの農業研修。高柳さんが移住にあたって支払ったのは、引っ越し代と車の購入費、家電などを買い足した計150万円のみ。
愛知県内に住む両親も、「やりたいことをやれるなら」と新しいチャレンジを後押ししてくれたそうです。

5.地域での人脈作り、地域おこし協力隊の立場生かす

ナチュラルラボラトリーでの研修は、栽培から販売まで多岐にわたるそうです。2018年10月の移住からまだ半年なことに加え冬季は農作業ができないなど本格的な研修はこれからですが、少量多品目を栽培し直販をメインにしていることから、朝の収穫から選別、パッキング、東京のマルシェでの販売まで一連の流れを経験でき、高柳さんはやりがいを感じているといいます。

また、地域につながりを作りやすいことも、農業法人での研修や独立就農ではなく、地域おこし協力隊として移住したメリットだと感じているとか。南相木村故郷ふれあい公社は第三セクターで役場の職員が出向してきているので、自然と役場とのつながりが強くなり、農業を担当している部署の方とも関わる機会が多いそうです。
地域のイベントに積極的に参加し、消防団にも参加。趣味の筋トレを通じて若い世代との交流も生まれました。副業も許されているために、他の農家のお手伝いに行き、ナチュラルラボラトリーでは栽培していない作物について学びながら人脈を広げています。

これから就農を考える方にアドバイス

まだまだ農業での挑戦を始めたばかりの高柳さんですが、南相木村で農家への第一歩を踏み出したことは良い選択だったと感じているようです。
「もし自分が地域おこし協力隊として役場などのサポートがなかったら、ここまで地域に馴染むのは難しかったと思います。地域で人脈をいかにつくるかということが、独立就農して土地を探したり、栽培・販売をしたりする上でもとても大切だと、移住をして様々な方の話を聞き改めて感じています」。

また、東京から人口千人の村に移住した高柳さんは、就農先を選ぶ際に、何度も足を運んで、自分に合う環境・地域かということを見極める大切さも強調します。
「興味のある土地があったら何度も足を運ぶこと。同じような人口の地域でも、特徴や雰囲気は様々。また、別の自治体では新規就農まで面倒をみてくれるところもありますが、一方でそれは身を預けてしまうということ。そのやり方が自分に合っているか、よくよく時間をとって見極めることが後悔のない移住・就農につながると思います」。

ナチュラルラボラトリー

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