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【新規就農者の横顔】3度目の春、“脱サラ”ブドウ農家の描く夢

【新規就農者の横顔】3度目の春、“脱サラ”ブドウ農家の描く夢

最終更新日:2018年06月14日

農家って、どうやったらなれるの―?新規就農を果たし、生き生きと農業に打ち込む人の「等身大のヒストリー」を通して、そのヒントを探ってみましょう。
脱サラ、修業期間を経て、地元の栃木県で新規就農したブドウ農家の日下篤(くさか・あつし)さんは、今年4月で就農3年目。昨年は、初めての収穫とワインの仕込みを行いました。現在の彼を支えるハードな修業の日々を振り返ってもらいつつ、今後の夢についても伺いました。

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種苗会社を脱サラ後、山梨で3年間の修業

いわゆる“脱サラ”後、2016年に実家のある栃木県市貝町で就農した日下さん。
計110アールの2つの圃場で、日本固有種のマスカット・ベーリーAや甲州、世界で愛される醸造用ブドウのシャルドネとプチ・ヴェルド、そして生食用のシャインマスカットを一人で栽培しています。

昨年秋に初めての収穫を行い、52kgのブドウからボトル44本分のワインを仕込みました。ワインは日本酒などと違い、水ではなく農作物のブドウの質に大きく左右されます。それゆえに、「ワインは農産物。農業としてのワイン造りを追求したい」というのが、日下さんの信条です。

父親が牧場を経営していたため、幼少期は酪農がさかんな北海道・別海町で過ごしました。前職は種苗会社の試験圃場担当として、野菜の育種や品種選抜、種子生産を行っていました。宇都宮市の試験圃場で、主にトウモロコシ試作選抜やアスパラガスの種子生産などの業務に携わり、日本の気候や土壌に適した高パフォーマンスを発揮する品種を見極めるなど、植物に対して観察力が求められる仕事に打ち込みました。

一方で、「自ら農業を営むこと」への興味が段々と膨らみ、20代最後の年に「今しかない」と就農を決意します。「しっかりと作れば高い単価で売れ、栽培から加工まで一年中関われる」と、育てるならブドウと心に決めました。青年就農給付金(現・農業次世代人材投資資金)の制度を利用し、2年間の補助を受けながら、ブドウの一大産地・山梨県で計3年間の研修を積みました。

厳しくも、筋の通った“親方”の栽培哲学

日下さんに栽培のノウハウを教えてくれたのは、醸造用ブドウの栽培技術確立を目指して、研究を重ねる農業生産法人「i-vines」代表の池川仁(いけがわ・ひとし)さん。池川さんを「親方」と呼んで慕う日下さんですが、ストイックな修業の日々を「2カ月目までは、毎日『逃げたい』と思っていた。地獄だった」と、笑いながら振り返ります。

日の出から日の入りまで、親方が付きっきりで農作業をします。疲れた顔をしていると、「俺の方が働いているぞ」とゲキが飛んできます。夕食後は、「畑仕事だけでなく本を読め」という池川さんの言葉に従い、書籍から体系的に農学や化学を学ぶ時間を取りました。この習慣は、経営など新しい知識の吸収が必要とされる独立後も、日下さんを支えています。

ハードな修業の日々でしたが、一本筋が通った親方の栽培哲学からは大いに学びました。ブドウの出来を左右する剪定作業では、「(枝の)どこを、なぜそこで切るのか」を、よく尋ねられました。親方は、「俺には切り取り線が見える。ここしか切る場所はない」「午前と午後で切る場所が変わるようでは、剪定を理解していない」と、強い言葉で日下さんに剪定の理論を伝えていきました。日下さんは、「根拠を持って作業をしないと、他の人が再現できない。そうしないと次の世代に継承できないからなんですよね」と、親方の思いに理解を示します。

前職と修業で培った栽培技術を武器に、親方から譲り受けた樹齢6〜7年のブドウを定植し、2年目で初めての収穫を迎えます。同年に県内のワイナリーの力を借りつつ、ワイン醸造を実現させました。

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