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一人仕事の極め方〜農家のための目標実現術〜【農家のお悩み解決!おすすめビジネス書#05】

一人仕事の極め方〜農家のための目標実現術〜【農家のお悩み解決!おすすめビジネス書#05】

「農業経営の裾野を広げる、業界外の知恵」という視点で、佐川友彦さんにお気に入りのビジネス書を紹介してもらう連載第5弾。今回のテーマは「一人仕事」です。一人仕事はマイペースで仕事を進められる反面、業務管理がおろそかになりがちです。個人プレーが多い農業だからこそ、適切な目標設定とセルフコントロールが肝です。自己管理に自信がない方のための2冊を紹介します。

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一人仕事を得意にして、生産性の高い農業と自己実現を両立しよう

一人仕事だからと誰にも相談せず、いつもどこかで妥協してしまう、自己管理の苦手な方はいらっしゃいませんか。少人数の家族経営体が多い農業では、企業のように組織や制度に管理されるケースはまれで、仕事の進め方は当人任せになりがちです。事務作業はもちろん、現場の農作業も単独作業が多く、誰かと協調して仕事をする機会も限られます。新規就農で一人事業主、完全にワンマンで全ての仕事をこなされている方もいらっしゃると思います。

そんな「一人の時間が長い」農業では、仕事の目標設定も進捗(しんちょく)管理も自分次第です。一人仕事が苦手なままでは、いつまでたっても生産性は上がりません。つまり、「一人仕事が得意になる」ことは、農業を続けるための必須条件の一つだと私は考えます。自ら目標を設定し、段取りを考え、滞りなく実行するセルフコントロールが、農業経営には必要なのです。

私は阿部梨園という個人経営の農家で、業務改善を旗振りしてきましたが、実は、阿部梨園に加わるまでは一人仕事が苦手でした。人の目が届かない状況だと、集中力が続かず、ついつい怠けてしまうのです。トラブルをギリギリまで一人で抱えて、大惨事になってしまったこともありました。

梨園に加わってからも、一人だけ独立した職務で100%の裁量を与えられていたので、自己管理には苦労しました。数年にわたる試行錯誤の末、自分なりの「一人仕事の型」を見つけられたように思います。今回は、そんな私が多大なる助けを得た2冊を紹介したいと思います。

「先延ばしは1冊のノートでなくなる」から学ぶ目標設定と日々のセルフチェック

先延ばしは1冊のノートでなくなる

一人仕事の落とし穴の一つは、日々の業務に追われて、目標設定を見失いがちになることです。目標は、望む結果を手繰り寄せるために有用なばかりでなく、モチベーションや能率を高く維持するためにも必要です。目標を共有し進捗を報告する上司や同僚がいない一人仕事では、頼れるのは自己管理力だけです。本書から、一人でも実践できる中長期の目標設定と、毎日のセルフチェックを学びましょう。

本書ではまず、自由な発想で「ぶっとんだ目標」を設定することを提案しています。本来やるべきだったこと、本当はやりたかったこと、悩みや課題を書き出して、中長期の軌道修正を図ります。このプロセスの重要な効用は、日々の緊張から解放され、柔軟な思考と創造力を取り戻せることです。また、この過程でモチベーションも自然と高められます。

論理的な思考が得意な方や、物事をコツコツ進める方こそ、パターンにハマりがちです。私自身も、梨の売れ行きや日常的なトラブル対応などに追われるうちに、視野の狭い“部分最適”に陥ってしまうことが多々あります。部分最適とは、「木を見て森を見ず」で言うところの、ある部分の木だけを最適化することです。一方、森全体の最適化を“全体最適”といいます。日常という木にとらわれてしまっているときは、この「ぶっ飛んだ目標」で自由に思考を飛躍させてみてください。顕在化されていない内なる願望や不安も含めて、全体最適を取り戻せるはずです。

中長期の目標設定と並行して大切なのは、日々の振り返りです。本書で紹介する「デイリーページ」では、以下のような項目について振り返ります。

  • 昨日1日で、うれしかったこと・感謝したいこと・よかったこと
  • (上記のことに対して)改めて、どう感じたか
  • 今日1日、本当はどうしたいか
  • (すぐ実践できる)10秒アクション

デイリーページで毎日、気持ちの棚卸しをしましょう。そのとき頭に浮かんだ不安や悩みを書き留めれば、心の整理にもなります。私は本書を手に取る以前から長く日記を続けていて、この効果を実感しています。話し相手がいない一人仕事こそ、自分自身との対話を大切にするべきです。毎日の出来事の意味を振り返ることで、前向きに将来のことを意識してみてください。

先延ばしは1冊のノートでなくなる
著者:大平信孝
出版:大和書房

「鬼速PDCA」から学ぶ行動設計と軌道修正

「鬼速PDCA」から学ぶ行動設計と軌道修正

PDCAという言葉を皆さんはご存じでしょうか。PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(検証)、ACTION(調整)の4サイクルで、業務を継続的に改善する有名な手法です。業務の実施前にきちんと計画を立て、実施後に検証と調整を行うことで、業務品質を向上させることができます。企業のプロジェクトなどでは、通常このPDCAが踏襲され、複数人のチームで情報共有されています。

一人仕事では誰の制約も受けないためにDO(実行)だけのやりっぱなしに陥りやすく、PLAN(計画)やCHECK(検証)、ACTION(調整)がないがしろにされがちです。これでは学習サイクルが回らず、進歩の機会を逃してしまいます。複数人のプロジェクトのものだと思われがちなPDCAですが、一人仕事にこそ必要です。PDCAという概念をご存じの皆さんも、ついつい脳内でやったつもりになって、不明瞭なまま片付けていたりはしないでしょうか。

「鬼速(おにそく)PDCA」は、PDCAのみに特化して実践的な手法を詳細に解説しています。例えば、PLAN(計画)では、①目標の定量化、②現状とのギャップ分析、③課題設定、④指標(KPI)設定、⑤解決策立案と、曖昧な目標設定ではなく、目標達成のための具体的なアクションを紹介しています。DO、CHECK、ADJUST(本書ではACTIONではなくADJUSTを採用しています)についても同様に、成果に直結する行動まで落とし込まれています。

PDCAを通した仮説検証は、業務遂行力アップに最適です。上司も先生もいない一人仕事こそ、業務を通して自ら成長を演出していかなければなりません。いつもどおりのルーチンワークをPDCAの題材にしてみましょう。成長できる気づきがかならずあるはずです。“鬼速PDCA”できるようになれば、一人仕事の死角はないも同然です。

鬼速PDCA
著者:冨田和成
出版:クロスメディア・パブリッシング

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