養鶏を始めたい人は田中さんに学べ! 低コスト養鶏ライフ
──茨城県の里山で養鶏を始めた理由を教えてください。
私は15歳の時に大量消費・大量生産の社会に疑問を持ち、環境に負荷をかけない生活をしようと考えました。20代の時に脱サラし、農家に住み込みで研修を受けた後にDIYで自宅と鶏舎を自作して、卵の販売を始めました。地域社会とのつながりを大事にしながら、自給自足であまり現金を使わない生活を送っています。
4人分の1カ月の生活費は、だいたいこんなものです。
固定資産税 食費 電気代 上下水道代 ガス代 携帯代 通信費 固定電話 |
2,000円 30,000円 0円 0円 0円 0円 3,000円 7,000円 |
土地と家を所有 太陽光発電 井戸水を利用・下水は浸透式 太陽光発電を売電し、賄う 所持せず インターネットプロバイダー代 FAXと兼用 |
合計 | 42,000円 |
自宅や養鶏場の建設にはある程度の初期投資が必要でしたが、知恵や技術を駆使し、なるべく支出を抑えて生活の基盤づくりをしてきました。
DIYで養鶏場を建設! 低コストで養鶏場を作るコツ
──そのノウハウ、ぜひとも聞かせてください!
ポイントは二つあります。まず、何でも業者にお任せするのではなく、自分で何割か資材を調達した事です。例えば建築資材は、工務店が家を建設する際多めに資材を調達し、未使用のまま倉庫に残っている事があります。その余剰分の材木やボードなどを倉庫に取りに行き、無料でいただきました。
また養鶏場の柱は、山からスギやヒノキを自分で間伐して作りました。波型トタンは工事現場に行き、B品を価格交渉して入手しました。家を建て替える予定の人に交渉し、工夫して使えそうな物をいただくのも一つの手です。
──例えば何を、どんな風に使うのでしょう?
鶏舎に出入りする為のドアですが、いただいたふすまの枠を使って作りました。また、瓦を鶏舎の土台部分に埋め込み、野生動物が地面に穴を掘って侵入しないよう工夫しています。
──まさに、資材調達からDIYだったのですね。
二つ目のポイントは、プロに仕事をお願いする場合は一緒に作業をしてコツを教わり、仕事を覚えるようにする事です。配管工事や大工仕事は見様見まねでできるようになりました。いろいろな技術を身に着け、自分で工事や修理をすれば、業者に依頼した際の1/2から1/4くらいの金額で済みますよ。
畑の草や鶏ふん、役目を終えた鶏まで利用する循環型農業
──他にはどんな物を自作しているのでしょうか。
畑で30~40種類の野菜や果樹、山菜を栽培しています。自分達の食料だけではなく、鶏の餌も自作です。牧草や畑に生えて来るイネ科の草で餌の半分を自給し、残りの半分は地元産のくず小麦、くず大麦、くず米、米ぬか、野菜くずを押し切り(わらなどを刻む道具)で細かくカットしたものを自家配合しています。
畑で牧草などを刈って餌にし、その餌を食べて育った鶏の卵は、商品として販売します。また鶏が排せつした鶏ふんを畑に肥料としてまく事で、自家消費用の野菜や牧草ができるという循環型農業を行っています。
──こちらの三角コーンは何に使うのですか?
これは年老いた鶏をと殺する際に、鶏を逆さに入れて放血するための道具です。市販の三角コーンを購入し、先をカットしました。一定の飼育年数を超えた鶏は廃棄するのではなく食肉にし、脂肪からは食用油を作って活用しています。
日常的に物や労働力の交換を実践
──DIYや循環型農業以外に、何か工夫されている事があれば教えてください。
鶏の餌となるくず米や米ぬかは、お米屋さんで卵と交換して入手しています。近所の有機農家さんには卵と鶏ふんを差し上げ、代わりに私たち家族が食べる野菜や苗、鶏の餌用に野菜くずをいただくなど、普段の生活で頻繁に物々交換をしています。
──それはお互いにメリットがありそうですね!
他にも卵を差し上げる代わりに、鶏舎の鶏ふん出しの作業をしてもらう物労交換や、私から鶏の解体の技術指導をする代わりに、マッサージをしてもらう労々交換もしています。言ってみれば、ご近所さんの間で物や技術を循環させているようなものですね。物々交換、物労交換は、地域の人と交換できる食品や技術を持っている自営業者に向いていると思います。
──これから新規就農者や、養鶏を始めたい人向けに何か伝えたい事は。
これまでお金を出して人にお願いしていたことを、「自分にできないだろうか?」と考えてみると良いですよ。また、何かあった時に助け合えるよう、地元の人と良い関係を保つのも大事です。そうすれば、どこそこに資材が余っているといった情報や、物や労働のやり取りができるネットワークを築けますから。
* * *
何かを始める際には、初期投資がつきもの。あまりコストはかけられないけれども時間はあるという新規就農者や、養鶏を始めたい人は、田中さんのDIYや循環型農業、物労交換などのノウハウからヒントを得て、実践してみてはいかがでしょうか。
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