センサーによる見守りで、酪農・畜産の現場を支援する『U-motion®』
NTTテクノクロスの農業向けソリューションの中で、すでに一般に提供されているサービスが、デザミス株式会社と共同開発した牛の行動モニタリングサービスの『U-motion®(ユーモーション)』です。
タグ型のセンサーを牛の首に装着することで、牛の行動(採食・飲水・反芻・動態・起立・横臥・静止)を24時間リアルタイムに観察し、“見える化”を実現。
センサーから取得したデータを分析することで、生産者にとって確認が必要な牛の状態である、疾病兆候(体調不良)や発情兆候、起立困難を通知するサービスを提供しています。
導入している生産者からは、「年間の死廃頭数が1/3になった」、「乾乳期の疾病の早期発見に役立っている」、「起立困難牛が8~9割の精度で発見できている」といった声が届くなど、効果の高さがうかがえます。
「乾乳期は出産前後で体調が変わる牛が多く、疾病も多い傾向にあります。その兆候を『U-motion®』で把握すれば、適切な処置を適切なタイミングで施すことができます。重症化させないことがポイントです。また、起立困難アラートも現場からのフィードバックで、リリース後も、よりユーザーのお役に立てるよう継続した取り組みを続けています」と、利用者の声を補足してくれるのは同社IoTイノベーション事業部(現 NTTソフトウェアイノベーションセンタ)の除補由紀子さん。
「現在は、全国200以上の牧場で導入され、数万頭の牛の観察を支援しています。また、直近では『台帳機能』を拡充させました。個々の牛の状態を“見える化”するだけでなく、生まれたときの状態やどんな餌を食べてきたのか、疾病や治療の記録までを含めた牛の一生を記録する個体管理ツールとしても使えるように、これからもバージョンアップを図っていきます。さらに、『分娩アラート』の実装に向けて、実証実験をスタートしました」と話すのはプロジェクトのキーパーソンで、同社IoTイノベーション事業部の赤野間信行さん。
2019年6月には株式会社ダイエーが、グループ会社の株式会社鹿児島サンライズファームに本格導入することを発表し、さらなる品質向上と安定供給を目指して、2021年度中には全4000頭に『U-motion®』を取り付ける予定です。
「今回の採用で、生産・飼養から流通・販売までの流れに『U-motion®』が組み込まれることになりました。トレーサビリティの向上などを含め、食の安全確保を支援するソリューションとしても展開していければと考えています」と、同社IoTイノベーション事業部の櫻井義人さんは『U-motion®』への期待を語ります。
現在は、国内へのさらなる展開を進めると同時に海外市場に向けた調査も開始しており、今後も『U-motion®』のバージョンアップや進展に注目です。
豚の体重推定を手軽に! 養豚農家が待望する『デジタル目勘®』
同社の農業向けソリューションの中で『U-motion®』と並んで注目を集めているのが、伊藤忠飼料株式会社と共同開発している豚の体重を推定する『デジタル目勘®(デジタルメカン)』です。
出荷時の体重は、買い取り価格を左右する重要な情報なのですが、専用の体重計で一頭ずつ測るのは重労働で効率的ではありません。
そのため、大がかりなオートソーティングシステムを導入している豚舎もありますが、多くの現場では、熟練者の目勘に頼っているのが実情です。
それが『デジタル目勘®』を使えば、出荷サイズの豚を撮影するだけで、AIによる独自の画像認識技術で、簡単に熟練者並みの体重推定が可能になります。
『デジタル目勘®』の導入には豚舎への工事は必要ありません。まずは出荷サイズを確認する用途に特化する予定ですが、テストユーザーの養豚農家からは、餌を変えるタイミングを見極める体重推定にも使いたいとのリクエストもいただいています」と話すのは、同社 IoTイノベーション事業部の田中久子さん。
開発当初は±5㎏を目標としていた推定精度も想定以上に向上。伊藤忠飼料の販売ルートで提供し、導入後も随時ソフトウェアアップデートでさらなる精度向上を図る予定とのことです。
2019年度下半期には、何らかの発表が行えるのでは…と話すなど、いよいよリリースが近づいてきたようです。海外の養豚業者からも問い合わせが来ているといい、『デジタル目勘®』の今後の展開にも注目です。
野菜づくりにもAI×IoT技術を展開
野菜分野では、老舗種苗メーカーであるタキイ種苗株式会社と連携し、プロジェクトを展開しています。
2019年の春からは、タキイ種苗が出資する農業法人 Tファームいしい株式会社(徳島県名西郡石井町)の栽培施設で、IoTを活用した新しい栽培支援システムの実用化(篤農家の栽培ノウハウの継承)を目指し、実証実験を行っています。
同社の得意分野であるセンシングやAI技術、ビッグデータ分析を生かし、複数台の小型センサーでハウス内の栽培環境を「三次元ヒートマップで“見える化”」することを手始めに、画像解析やAI技術による「株の生育判定」や「収量予測」など、収量アップや高品質化はもちろん、自動化や省力化に向けても取り組みを進めています。
「実証実験と情報収集を進め、将来的には農業のコンサルティング分野でソリューションを展開していきたい」と、櫻井さん。
同社では、データ収集やトライアルを進め、今後、国内への普及が期待されている環境制御ハウスの展開に合わせて、具体的なサービス化や製品化を計画中とのことで、運用の最適化を支援するサービスなどが一気に実用化されそうです。
食農分野へのさらなる活用が期待されるNTTテクノクロスの先進技術
このように、AIやIoTなど同社が持つ先進技術は農業分野で豊富な実績を持つパートナー企業と連携することで、効果的に活用できるようになります。
同社の技術は交通・観光系、安心・安全系、医療・ライフサポート系など、さまざまな分野で活用実績があり、農業分野における応用範囲も広いと考えられます。
酪農・畜産、養豚、野菜など、すでに取り組みが始まっている分野はもちろん、食農関連の企業や団体にとって、同社の今後の展開には目が離せません。
ソリューションの利用者や、新たなビジネスパートナーとして、NTTテクノクロスと接点を持つ企業は、今後ますます増えていくことでしょう。
【イベント情報】
第9回農業Week 第1回国際畜産資材EXPO
期間:2019年10月9日(水)~11日(金)
会場:幕張メッセ 5ホール 伊藤忠飼料・デザミス・NTTテクノクロス合同ブース
イベントのホームページはこちら
【お問い合わせ】
NTTテクノクロス株式会社
IoTイノベーション事業部 第一ビジネスユニット
〒220-0012
神奈川県横浜市西区みなとみらい4-4-5横浜アイマークプレイス
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