定着率100%! 豊後大野市の新規就農者研修の仕組みとは【畑は小さな大自然・番外編】
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定着率100%! 豊後大野市の新規就農者研修の仕組みとは【畑は小さな大自然・番外編】

連載企画:畑は小さな大自然

定着率100%! 豊後大野市の新規就農者研修の仕組みとは【畑は小さな大自然・番外編】
最終更新日:2019年07月30日

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。今、全国の農村地域の最大の悩みになっていることは後継者不足の問題ではないでしょうか。僕も農家の長男として、地域農業の後継者問題をなんとかしないといけないなと感じているところ。この地域農業の後継者を育てる取り組みとして、今のところ卒業生の定着率が100%という着実な成果を出しているところがあります。それが大分県の豊後大野市で行われている新規就農者技術習得研修とその施設、インキュベーションファーム。一体どんな仕組みで運営されているのか、その実態を取材してきました。

定着率100%の豊後大野市インキュベーションファーム


豊後大野市農業振興課 担い手支援係・佐藤さん

──本日はよろしくお願いいたします。豊後大野市は初めて来たのですが、とても自然豊かで良いところですね〜。

ありがとうございます。山も川もあって本当に良いところですよ。

豊後大野市の景色

──早速なのですが、今日は豊後大野市が取り組まれている新規就農者研修プログラム、インキュベーションファームの取り組みについてお伺いしたいと思っています。まず、インキュベーションファームとはどのようにして始まった取り組みなのでしょうか。

はい、豊後大野市では2010年度に「チャンス・チェンジ・チャレンジ」を合言葉に、「第2次豊後大野市農業振興計画」というのを策定したんですね。そこで豊後大野市が西日本一の生産量(2016年度産)を誇る「夏秋ピーマン」により力を入れようということで、夏秋ピーマンを中心とした農業経営を目指す新規就農者を育成する取り組みとして、インキュベーションファームは始まりました。ちなみにインキュベーションとは卵をかえす、ふ化させるという意味で、インキュベーションファームは農家の卵を育てる場所ということで名付けられました。今年で8年目で、16組32人が卒業しています。

──卒業されたみなさんは、もうこの豊後大野市で農業されているんですか?

はい、みんな豊後大野市で続けてやっていて、まだ一人も辞めた人はいないですね。

──ちゃんと定着されているというのはすごいですね。

研修中からしっかり農業での収入がある

──具体的な研修の内容や流れを教えてください。

研修生になるには、55歳未満、2人以上での参加という条件のもとに応募していただき、まずは短期研修を受けていただきます。その後、審査会にて受け入れの可否が決定されます。

──本格的な研修の前にまず体験してもらうんですね。

はい、申し込む権利は体験者でないとありません。審査会で合格すると、1年目は1組7.5アールのハウスで研修をします。ここに指導員さんが常駐していて、つきっきりでピーマン栽培についての実地研修があります。2年目になったらまた別の圃場(ほじょう)へ行って、模擬経営研修というものをするんです。一つの農家になったつもりで、機械は無料で使用できるんですが、肥料とか農薬、資材は自己負担。その代わり収入も研修生の収入になります。
去年だと多くとれた方は約23トンのピーマンを収穫しました。昨年は1キロ当たり370円平均だったので、売り上げとしては800万円くらいですかね。

研修中の様子

──それはすごいですね! 研修生時代からちゃんと収入があるって大きいですよね。

そう、それに研修生は農業次世代人材投資資金も受けられるので、研修期間中に年間1人150万円出ますからね。2人以上で1組なので、2人ですと300万円ですね。

──2人以上でというのが申し込みの条件に入っているんですね。

やっぱり農業は一人じゃきびしいですよね。病気になったりとか作業においても1人と2人では効率がぜんぜんちがいますよね。だからよく言われるのは、農業では1プラス1が4とかになるんですよね。そういう意味からしても、やっぱり長く続けるためには最低2人。門戸は狭くなるんですが、未だに卒業生が一組も辞めてないのは、この条件をつけたおかげなのではないかと思っています。

──基本的には夫婦で来られる方が多いんですか?

ほとんど夫婦なんですけれどもね、親子や姉妹で来られた方もいましたよ。

卒業生が着実に成果を出している理由とは

──つきっきりで指導員さんが指導してくれるということでしたが、農家さんが指導を行うのでしょうか。

いえ、基本的には豊後大野市農林業振興公社というところがありまして、そこに所属している指導員さんが基本的な指導やお世話をします。ただ里親農家という人もまた別にいて、たまにそこに行って勉強したり、逆に里親さんがこっちに来て教えたり、ということもします。

──学校の座学のような授業もあるんですか?

座学は冬場にするんです。簿記の講座とか農業機械の講座だとか。

──簿記もちゃんとやるんですね。そういうところは本当に大事だと思います。ちなみにピーマンというのは、新規就農の方でも取り組みやすいものなのでしょうか。

そうですね、経営の柱として安定しやすいです。豊後大野市は西日本一、全国では3位のピーマン生産量で、ブランドとしても認知されています。基本を忠実に守っていれば、生産量も上がりやすいんですよ。実際に去年は120軒くらいある部会のメンバーの中でも、ここの卒業生がすでに反収(約10アール当たりの収穫高)トップ10に数人入っていました。

──それはすごいですね。若い農家が増えるというのは、地元の農家さんにとっても刺激になりそうですね。

やっぱり部会の反収上位にインキュベーションファームの卒業生がいますので、刺激を与えてると思いますね。卒業生の中からピーマン部会の事務局長や普及指導委員になる人も出てきています。

──確実に産地の活性化につながっていますね。

あともう一つピーマンを推している理由があって、ピーマンは初期投資が少なくて済むんですね。補助事業含めれば自己負担400万円弱で、ピーマン栽培はできますよという、初期費用の安さというのを推しています。

ピーマンを育てるハウスは小さめで安価なもので済むため、初期費用がかからない

ライフスタイルや価値観に合わせた働きかたが選べる

──インキュベーションファームでは所得400万円の農家になるというのが目標ということですが、それは割と普通に達成できるようなものなのでしょうか?

所得400万円は達成できない数字ではないですよ。みなさんそれぞれ生活スタイルや価値観が違いますので、それ以上を目指すこともできますし、400万円もいらないかなという方もいらっしゃると思います。

──そうやって自分が目指したい生活スタイルに合わせて選べるというのは魅力ですね。

研修中は月1回、定例会というものを開いて、市や県、JA、指導員、里親農家の先生を交えて情報交換や経営相談なども行っています。そういったサポートが卒業後の結果につながっていると思いますね。

定例会の様子

──インキュベーションファームの取り組みの中で課題に感じているところはありますか。

今後この取り組みを続けていく上での課題としては、研修生の指導員となれるような人材探しですね。栽培技術を持っている人はたくさんいるのですが、それを人に教えるとか、面倒を見るとなるとそれは全く別なので。そこをどう発掘するかが課題です。だからまあ今度はインキュベーションファームの卒業生がそういった役割になってくれると循環していいんじゃないかなと考えているんですけどね。

──それいいですね! 卒業生であれば新規就農する人の気持ちもわかるし、移住することのいろんな大変さもわかっていますもんね。それは今後も楽しみです。

◆次回予告◆
次回はインキュベーションファームの卒業生を取材します。東京から移住、就農して1年目になる水本さん夫婦。農家生活は実際のところどういったものなのか、その様子をご紹介します。お楽しみに!

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