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直売所名人に聞いた! はじめての出荷で失敗しない4つのコツ

直売所名人に聞いた! はじめての出荷で失敗しない4つのコツ

直売所デビュー当時は勝手が分からず売れ残りだらけだった私でさえも、近頃は月3万円どころか、8万円まで売り上げが上がってきた。だけど、まだまだ。そこで今回は、私が出荷する大阪府・能勢町の直売所「能勢町観光物産センター」の先輩たちに、私のような初心者が直売所で失敗しないためのポイントを教わってきた。

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コツその1 珍しい品目や、ミニサイズで目立つ

直売所の若手ホープ内田健太(うちだ・けんた)さん。ビニールハウスやミニハウスなどで多品目野菜を栽培する

5年ほど前に独立し、現在は50アールの畑で野菜をつくる内田健太さんは、生産物の7割ほどを直売所で販売している人だ。料理屋や食材店にも卸しているだけあって、ちょっと珍しい野菜もつくっている。

なじみのない品目にはレシピが必須

「最初はね、他の人と差別化したいと考えるじゃないですか。僕の場合は、スーパーでチコリが400円で売ってるのをみて、これや!と思って、つくってみたんですよ」(内田さん)
これが全然売れず、失敗。だけど、なじみのない品目が絶対に売れないというわけではない。辛味大根を売る際には「おろしてチキンラーメンにかける」など自作のポップで食べ方を紹介したところ、それなりに売れた。あまりなじみのないホーリーバジルも説明さえすれば買ってくれる。
珍しい品目でスキマを狙う場合には、ちゃんと説明することが必須のようだ。

内田さんを見習い、私もコールラビの売り方を工夫してみた。ちゃんと売り切れた

ミニサイズもよく売れる

直売所ならではといえば、小さなサイズのものも売れる。
ズッキーニには、ときどき10センチほどで成長がストップする果実があるが、それらだけを詰めたミニズッキーニを好んで買っていくお客さんもいる。
また、早どりのミニジャガイモも人気の商品。「みんなからは『掘るの早すぎや』と言われるんですけどね」と笑う内田さん。3月にハウス内に種芋を植え、5月中旬にいち早くジャガイモを並べる。いわば、早出しだ。
「早出しや遅出しのやり方は、畑がご近所の岡田さんによく教えてもらっています」

コツその2 商品の美しさで目立つ

直売所の営農委員長・岡田正(おかだ・ただし)さん

内田さんの師匠こと、ご近所の岡田正さん。早期退職をした15年前に能勢町に移住して畑を始め、現在では直売所の営農委員長を務めるまでになった。
「直売所では、早出しや遅出しは絶対必要な技術やで! やけど、大事なことのナンバーワンは、生産物をいかに人よりキレイに見せるかやとワシは思う」

キレイに袋に詰めてワンランクアップ

その一つが梱包。例えば、一般的にはむき出しのまま出荷するキャベツも、岡田さんは防曇(ぼうどん)袋に入れて出荷している。「袋の光沢のおかげで、葉っぱが余計にツヤツヤに見えるんよ。それに、一日中棚に置いとっても鮮度が落ちん」(岡田さん)。カリフラワーやブロッコリーも同様、ピシッと袋に入れるとより美しく見える。そして、バーコードをまっすぐ貼るということも大事らしい。

「キラキラしとるやろ」と見せてくれた岡田さんのジャガイモ。なんのことはない、ちゃんと洗うだけなのだが、土付きよりもよっぽど売れるそうだ

品種の色を上手に出す

そして、もう一つのコツが野菜の色の美しさ。珍しい色のものを出すという話ではなく、野菜の色を引き出すコツがある。
たとえばカリフラワー。一般的な白いカリフラワーの花蕾(からい)はあまりに強い光にさらされると、茶色っぽくなってしまう。そこで、花蕾がある程度大きくなってきたら、外葉を折って花蕾に被せて日よけする。その一方で、黄色系やオレンジ系のカリフラワー品種は日が当たるほどに発色がよくなるので、日よけはしない。
他にも「ジャガイモでもな、赤いレッドムーンは葉っぱが枯れるまで待って収穫するのでは遅い! 色がくすんで茶色っぽくなる」(岡田さん)など、さまざまなワザがある。

コツその3 目立って、とにかく名前を売る

87歳、現役バリバリの向井陽子(むかい・ようこ)さん

次にお邪魔したのは、87歳の向井陽子さんのところ。物産センターができた当初からずっと出荷し続けている人だ。
「直売はおもろい。朝の10時に売り上げのメールが入ってきて、そこで売り切れとったらもっとおもろい」
「高齢でも元気」どころの話ではない。「1日1万円は売らんと!」というバリバリ現役の直売所母ちゃんだ。
「自分で売り場を見とかへんと、今、相場がどんなもんか、どんな野菜がないかも、わからんやろう。それで、『いま、サンドマメ(インゲンマメ)がないな』と思ったら、今度持っていくときにダーッと出すの。ちょっとじゃアカンで。ためといて、うんと出す」。じつは、未だに軽トラを運転して直売所に自ら通っている向井さん。運転免許も先日更新したところだ。
そんな向井さんが得意な野菜の一つがソラマメだ。
「あれは、タネが高いでしょ。だから、『採算が取れない』って、あんまり誰もやらん。採算なんか関係ありますかいな。ないものを売って目立って、名を売らな。結局は、そこよ」
名前が売れると、他の野菜も買ってくれるようになる。コンビニで「ファン」に声をかけられることもあったらしい。終始、笑いの止まらない向井さんである。

コツその4 直売所の店長さんに不足している品目を聞く

能勢町観光物産センターの支配人・西山晃一(にしやま・こういち)さん

「なかなか、個性的な人たちに会って来られましたね」と笑うのは能勢町観光物産センターの支配人・西山晃一さん。
ここまで農家の先輩に話を聞いてみたが、直売所全体を見ている店長さんに話を聞いてみるのもよさそうと思ったのだ。

定番野菜にだってスキマはある

「そうですね、まだ直売所に慣れておられない方は競合の多いナスやキュウリだとよっぽど上手にやらないと難しいので、誰も出していない所のスキマを突く、という方がいいかもしれませんね。
直売所としても、スーパーに並んでいないような品目をどんどん出してほしいんです。アイスプラントのような新しい品目だけじゃなくて、意外なところで言うと、農家の方が自家用でよくつくられるマクワウリなんかはよく売れますね。メロンよりは甘くないですけど、『それがいい』『懐かしい』と言って買ってくださるお客さんもいます」(西山さん)
他にも、干し柿の材料になる渋柿や、ラッキョウ、赤シソなど、干し柿や漬け物の材料になるものも時期が一致すればよく売れるそう。
ちなみに、「申(さる)年に漬けた梅干しは縁起がいい」という言い伝えがあり、その年には赤シソがものすごく売れるという。
さすが支配人さん、よく見ておられる。

たった4人のお話を伺っただけで、これだけの個性あふれる工夫が出てきた。それぞれが「たくさん売ろう」と競争することで直売所の品揃えは充実し、個性あふれる元気な直売所になっていく。私も負けないよう、知恵を絞って稼ぎたい。

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米農家の祖父母の跡を継ぎ就農を決意。長崎県立大学を卒業後、長崎県立農業大学校に通い、平成25年、25歳の時に就農。現在は米、麦、大豆、ブロッコリー、ニンニクを栽培中。絵描き農家を自称しブログなどで漫画を描いたりしている。

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