こんなにあった! 直売所に不毛な安売りがはびこる7つの理由【直売所プロフェッショナル#03】
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生産者の試み

こんなにあった! 直売所に不毛な安売りがはびこる7つの理由【直売所プロフェッショナル#03】

連載企画:直売所プロフェッショナル

こんなにあった! 直売所に不毛な安売りがはびこる7つの理由【直売所プロフェッショナル#03】
最終更新日:2019年07月08日

直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。直売所は安さが売りになっていますが、あまりにも安すぎて農家の収益性に貢献していないケースも出てきています。今回はそのような傾向になってしまう理由をつまびらかに解き明かします。

農産物直売所は安い。そんなイメージが、消費者には浸透していると思います。
そういう側面が、デフレの世の中において直売所業界の成長を支えてきたことも否定できません。

しかし、あまりに安すぎると、農業の収益性向上という本来の直売所の目的を離れてしまいます。また、店舗そのものの持続も難しくなってきてしまいます。
あと20円、30円でもいいから高く売れてくれないか、そう考えている農家さんや直売所の店長さんも多いのではないでしょうか。

今回は直売所のなかでも、一定数の出荷者を抱えた共同直売所の価格について解説します。
そして、ここが重要なところなのですが、直売所が安値傾向になるのは、直売所固有のシステムに多くの理由があります。
直売所が直売所であるがゆえに、安値になってしまうのです。

以下では、農産物の共同直売所が安値傾向になってしまう構造的な理由を7つほど指摘したいと思います。

1. 直売所は供給を調整しない

一般的な商店は、需要と供給のバランスを見て陳列する商品の数を決めています。そう書くと何を当たり前のことを、と思う読者もいると思います。
しかし、多数の出荷者がいる共同直売所はそうではありません。それぞれの野菜・果物の供給を積極的に調整せず、出荷者に任せているケースが多いです。
直売所は同じ地域、つまり同じ気候で作っているので、ある時期に同じ作物がたくさんとれます。たとえばある時期に突然ブロッコリーの出荷(=供給)がものすごく多くなる、といったことが起きます。
経済学の初歩理論ですが、市場にプレイヤーが多数いるときに、供給が多ければおのずと価格が下がります。
これが直売所が安値傾向になる、もっとも根本的な理由です。

2. 「ダメもと出荷場」になっている

好きなだけの量を出せる地元の共同直売所は、時として、「ダメもと出荷場」になってしまいます。
たとえば、ある農家さんが共同直売所以外にいくつか販路を持っていたとします。それらの販路で収穫物をさばき切れずに手元に在庫が残ったらどうするでしょうか?
共同直売所に持っていけば、もしかしたら売れるかもしれません。売り切れる可能性は低いかもしれませんが、リスクもない。手元で腐らせてしまうよりは断然ましです。
この農家さんからすれば「売れなくてもともと」なので、価格は安くてもいいから数をさばこう、となりがちです。直売所が「ダメもと出荷場」になる瞬間です。
そういう農家さんがいると必要以上に安値傾向が強まり、他の農家さんは十分な売り上げや利益を確保できずに困った状況になります。
これは多くの共同直売所が「委託式」であり、農家さんが出荷数量を自由に決められるということから起こる構造的な課題です。

3. 「おすそ分けの拠点」になっている

3つ目の観点は書くのがややはばかられるところもあります。
というのも、直売所が地元の高齢農家さんにやりがいを提供していることに関わるからです。それは、まちがいなく直売所というシステムの美点です。
高齢農家さんのなかには、「いくらでもいいよ」という方も多くいます。自分の育てた作物が誰かの手に渡り、その食卓が豊かになりさえすればいい。販売というよりはおすそ分けの感覚ですね。その思いは崇高で、素晴らしいことです。
しかし、そのように価格に無頓着な出荷者がいると、直売所を主要販路として稼ぎたい農家さんにとっては価格破壊に他なりません。
直売所の運営者からすれば、「おすそ分けの拠点」としての地域での役割も重要であり、もちろん収益性も大事。このバランスは直売所にとっていつも悩ましい課題です。

4. 残ったら取りに行くシステム

共同直売所は、出荷した品物が売れ残ったら回収に行くシステムのところが多いです。しかし、手塩にかけて育てた野菜を取りに行くというのはなにより精神的にこたえます。
さらに、取りに行く手間を人件費に換算すれば、直売所までの近さは農家さんによっていろいろですが、それなりです。そのコストを考えたら、少々安くてもいいから売り切れを狙う、これは農家さんからすると当然の戦術です。

5. 誰のトマトでも同じ扱い

共同直売所では、生産者の名前が小さく書いてあるだけで、生産者が違うのに同じ品物に見えるという光景は当たり前のものになっています。
しかし生産者が違うものを区別しない店は、小売業界では直売所くらいのものです。たとえば、各飲料メーカーが出しているペットボトル入り緑茶は実際のところ似たような味わいだと筆者は思いますが、それぞれ明確に違う商品として消費者に認知されています。このことは価格を安定させるための第一歩です。
直売所によっては、「佐藤さんの激甘トマト」、「高橋さんの無農薬リンゴ」など、生産者によって異なるPOPを作成しているところもあります。しかし、多くの直売所では、出荷者間の公平性を重んじる必要があるため、そうした取り組みを積極的に行っているケースは限られます。
直売所の店員にとって、特定の農家さんだけにフォーカスして売るというのは共同直売所の理念からしてハードルが高いと思います。
けれど、本来であれば、「佐藤さんのトマト」と「遠藤さんのトマト」は違う品物です。「トマト、いや、佐藤さんのトマトを食べたい」と消費者が思うなら、佐藤さんの競合の数は原理的にはゼロです。
価格は競合の数だけで決まるわけではないですが、他と違うものであることを主張することが価格を安定させるためには必要であり、直売所以外の小売店が当たり前にやっていることです。

6. 直売所同士の競争

農家さん同士が直売所内で競合している一方で、直売所同士も同じ商圏内で競合しています。
一昔前までは、有力な共同直売所は地域に1軒あるかないかというところでしたが、直売所業界の発展に伴い、車で10~20分の範囲に共同直売所がいくつもある、という地域も珍しくありません。
消費者がより安い直売所を選ぶのは当然のことです。逆に言えば、もっとも安い直売所の価格がその地域の基準となります。
この点についてはなかなか対策が難しいのですが、直売所の野菜・果物が安値傾向になる理由として無視できないものがあります。

7. 客層の「デフレスパイラル」

最後の理由は、客層がどんどん安値好きに偏っていく、ということです。
価格があまりにも安い直売所は農家さんにとって収益性が低いので、品質にこだわりのある農家さんが出荷しなくなるか量を減らしてしまいます。その結果、「安かろう悪かろう」とまではいかなくても、少なくとも地域の消費者のうち「こだわったものを買いたい」という層が来店しなくなります。
その客数減に対して、委託式の直売所は、意識的にも無意識的にもより安値にすることで対抗しようとします。そうすると短期的には客数が戻ります。戻りますが、同じお客様が戻ってきてくれたわけではありません。以前と比べれば安いものを求めるお客様の割合が増えています。
すると、栽培や包装を工夫することで価格を上げようという農家さんの努力がほとんど売り上げに響かなくなってきます。来店されるお客様の層が、安いものを求めている人たちだからです。
そして、この繰り返しによって、安いものは売れ、品質の高いものは売れない傾向がどんどん強まっていきます。これを「直売所デフレスパイラル」と私は呼んでいます。

直売所デフレスパイラル

さて、次回は、このような直売所が持っている構造的な安値傾向に対してどのような対策がありうるのかを解説したいと思います。

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