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これぞスキマ産業 小さな直売農家にオススメの「ラディッシュのスキマ栽培」

これぞスキマ産業 小さな直売農家にオススメの「ラディッシュのスキマ栽培」

プランター菜園でも手軽に育てられる野菜として人気のあるラディッシュ。数個添えるだけで日々の食卓や弁当箱の彩りが良くなるからか、直売所でも不動の人気を誇る。一方、私のような小さな農家にとっては、限られたスペースを有効利用する、なくてはならない存在。そんなラディッシュのスキマ栽培を紹介。

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雨の前日、畑のスキマにラディッシュをまく

スイスチャードのスキマにまいたラディッシュ

畑が小さいと、欲をかいて、あらゆるものをついつい密植してしまう。やがて苗が大きくなってくると混み合った葉が病害虫の温床となって大失敗。
そんなことの連続だったので、株間と畝間はできるだけ広くするようになった。しかし、それでもケチな私は、苗が小さいうちの、「畑の地肌」が気になって、気になって、仕方がない!
ある日、農業の先輩から「ラディッシュまいとけばいいよ」とアドバイスをもらった。1本のラディッシュに最低限必要な間隔は3〜4センチ。根っこも広がらないし、丈も大きくなることはないので、周囲の作物と競合することはない、とのこと。
それ以来、ラディッシュ単独のウネというものは用意せず、スキマが気になった時に、こまめにラディッシュをまくようになった。今では、軽トラには常にラディッシュの種子を積んで、雨が降る前日に1袋だけまくのが日課となっている。

ラディッシュのスキマ栽培のやり方

スキマ栽培のやり方はとても簡単。すでに植わっている作物の条間や株間に、深さ2センチほどのまき溝を切って、パラパラと筋まきしていくだけ。
ラディッシュの栽培で手間がかかるのが間引きと草引きなので、できるだけタネが重ならないように、1粒ずつ落とすように気をつけて、間引き作業をラクにする。ラディッシュの種子はコカブの種子と比べるとかなり大きく、発芽しやすいため、たくさんまかなくても発芽が揃う。
まく場所は、葉物のスキマや、葉が大きくなるまで地肌が目立ちがちなサトイモやジャガイモなどのウネなどどこでもいいが、コカブやダイコン、あるいはラディッシュなどのアブラナ科の根菜類のあいだはオススメしない。
根の表面に筋状の傷をつけるキスジノミハムシがアッという間に増えて、無農薬栽培のわが家では共倒れとなったからだ。

スキマ栽培のメリット

ホウレンソウのスキマで4000円

スキマを活用するので、当然のことながら、ウネ1本当たりの価格は上がる。
たとえば春ホウレンソウのウネ5メートルのスキマに播種(はしゅ)した場合だと、150グラム110円で40袋とれて合計4400円の売り上げ。
おおよそホウレンソウの売り上げと同じで、脇役であるラディッシュの方が金額の上では主役となった。

日陰のおかげで、まんまる、肌ツヤツヤ

ラディッシュ単独のウネで育てるといいものがとれない私だが、スキマ栽培だと、球形(根の形)もよく、肌もキレイなものをつくることができるようになった。
ラディッシュは土壌が水分不足になると、根を下へ向かって伸ばして細長いものになるが、スキマ栽培の場合は他の作物の葉がつくる日陰が、いいあんばいに保湿してくれる。急激な水分変化から起こる裂根も少ない。
また、葉っぱを食べるダイコンサルハムシや、根の表面を食べるキスジノミハムシの被害も明らかに少ないのは、害虫がラディッシュを発見しにくいからだろうか。
ちなみに、ニンジンやパクチーなど、セリ科の植物のスキマで育てたものはキレイなものがとれ、よく太る。理由はよくわからない。

スキマ栽培で育てたラディッシュ

草引きがはかどる、ラク

「お客さんが来ないと家が片付けられない」タイプの怠惰な私だが、スキマにラディッシュというお客さんがいることで草引きをしようという気分になり、畑をキレイに保てるようになった。
また、ラディッシュをまく葉陰には草もそれほど生えない。ラディッシュ栽培で大変な草引きの手間もだいぶ減った。

お気に入りのラディッシュ品種

ラディッシュの品種を大ざっぱに分けると、スタンダードな赤丸タイプ、白に紅が混じるツートーンタイプ、細長いダイコンタイプの3つだろうか。私の畑では、ツートーンタイプはコカブのように大柄になりやすく、ダイコンタイプは間引きダイコンと勘違いされるので、赤丸タイプを中心につくっている。
基本はホームセンターでも売っている「赤丸二十日」をまくが、この赤丸タイプにもいろんな品種があるので、お気に入りのものを紹介したい。

大きくなっても割れにくい ビットリア

畑の湿りやすいところでラディッシュをつくるとぶくぶく太って割れてしまうが、ビットリア(国華園で購入)はそれが少ない。水が溜まりがちなところではこれをまく。また、一粒一粒が大きくなるまで収穫を待てるので、洗ったり袋詰めしたりするのもラク。

湿りやすい水路の近くで育てたラディッシュ。左の2つがビットリア。同じ条件でも裂根しにくい

夏まきに向く スマッシュ

これから始まる夏まき向きの品種もいろいろ出ている。スマッシュ(宝種苗)は気温が高くても球形がいびつになりにくく、発色もよい。夏場は全部これ。

目を引くシックな紫色 スミレちゃん

スミレちゃん(大和農園)は今までになかった赤紫色のラディッシュ。大きくなっても割れにくい。タネが少々お高いので、たくさんはつくれないが、売り場に1つあると目を引く。

左下がスミレちゃん

ここまで栽培について書いてきたが、じつはラディッシュで一番大変なのが、黄色くなった双葉をとり、1粒ずつ洗って、袋づめする調整作業なのだ。それゆえ直売所では年々つくる人が減っているようだ。
でも、つくるとよく売れるし、お客さんも喜んでくれる。直売所もにぎわう。
これぞ、小さな農家のスキマ産業。

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