農家兼八百屋さんが教える“映える”仕上げ術【直売所で月3万円稼ぎたい!#4】

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農家兼八百屋さんが教える“映える”仕上げ術【直売所で月3万円稼ぎたい!#4】

連載企画:直売所で月3万円稼ぎたい!

農家兼八百屋さんが教える“映える”仕上げ術【直売所で月3万円稼ぎたい!#4】
最終更新日:2019年02月26日

冬場の何がツライかって、氷点下に冷え込む早朝に野菜を水洗いして袋に詰める調整作業だ。凍りかけの野菜をキンキンに冷えた水で洗う。一刻も早く終わらせたいけど、なかなかキレイにならず時間がかかる。そのうえ袋詰めもなにやら美しくない。……この作業、スゴく下手くそな気がしてきた。絶対にコツがあるはずだ。農家兼八百屋さんのこだわりのワザを聞いてきた。
(画像は望月さんが仕上げた野菜。どれもたいへん美しい。)

そもそも汚さないように収穫する

野菜の洗い方・袋詰めを教えてくれるのは、岡山市でやさい屋ポッケを営む望月孝太郎(もちづき・こうたろう)さん。望月さんはご自身でも畑を耕しながら、近隣の農家仲間の野菜も一緒に売る八百屋さんをしている。じつは前職の同僚で、私とは数年来の付き合い。「非常にこだわりが強い」という性格を知っていたので、お願いしてみたのだ。

望月孝太郎さん夫妻。ご自身やご近所さんの野菜を売る「やさい屋ポッケ」を営む

望月さんいわく、「伊藤さん、そもそもの話ですけどね。なんでそんなに洗いたいんすか?」 
いや、そう言われると、答えに困るなぁ……。
そこで、望月さんに案内されて、まずは畑へ。
「そもそも汚れないように、マルチをしたほうがいいですよ」
畑のウネには、キノコの菌床栽培で使った廃菌床が敷き詰められている。これが、雨粒が土に当たって泥がはねて野菜につく「泥はね」を防いでくれるそうだ。葉っぱへの泥はねはもちろんのこと、新葉が混み合って洗いにくい成長点部分(株の中心)に土が入り込むと面倒なことになる。下手に洗えば、繊細な葉物野菜はすぐ折れてしまう。
調整作業はすでに畑づくりから始まっているということか。

葉物野菜の下には廃菌床を敷くと、雨による泥はねを防ぐことができる。畑もふかふかになる

野菜を上手に洗う

収穫を終えたら洗う作業だ。
今回は冬野菜の代表であるダイコンと葉物。そういえば、直売所の先輩たちのダイコンやカブは肌もまるで磨かれたようにキレイだ。葉物は土の汚れも面倒だし、アブラムシなどの虫がついていると洗うのがなおさら大変になる。
どうやっているのだろう。

根菜類は軍手で磨く

「ダイコンは、これ使うといいですよ」
望月さんが持ってきたのは軍手。ダイコンは、表面の「毛穴(細かい根が生える部分)」に土が詰まっていると取れないが、両手に軍手をつけて、キュッ、キュッと雑巾絞りのように洗うと、3秒もかからず、磨かれた、美しいダイコンになった。ニンジンでも一緒だろうし、手間のかかるラディッシュもこれなら早そうだ。
ちなみに、軍手の下に薄いゴム手袋をつけると、手が濡れず、手荒れも防げるそうだ。

ダイコンなどの根菜類は軍手で洗う

葉物の50度洗いは2度おいしい

望月さんがもっとも強いこだわりを持って洗うのが葉物を一緒に詰めたサラダセット。
廃菌床マルチのおかげで泥こそついていないが、今回収穫した葉物の成長点にはアブラムシがギッシリいた。正直、私なら諦めるレベルだが、これを洗って、ちゃんと商品に仕上げるらしい。
そのポイントが「50度洗い」だ。

50度洗いのお湯。水に沸騰したお湯を混ぜ合わせてつくる

その名のとおり50度のお湯で洗うのだが、一体なにがいいのか。
葉物につくアブラムシやアオムシは水で洗ったくらいではピンピンしているが、50度のお湯の中にしばらくつけ込むことで死んでしまう。また、50度という温度では「ヒートショック現象」により野菜表面の気孔が開き、そこに水分が入ってシャキシャキ感が増す。さらに、デンプンを分解して糖にするアミラーゼ酵素が働くことで甘みやうまみがアップするともいう。
さらに望月さんは駄目押しで、お湯にヤシの実由来の植物性洗剤を1〜2滴垂らす。洗剤に含まれる界面活性剤の効果でアブラムシを窒息させるのがねらいだ。お湯に浸したあとは洗剤がキレイに落ちるように水洗いする。
「水洗いだけだと、生きているアブラムシが葉っぱにしがみついて袋の中で歩いてたんですよ。それが、全然なくなった」
そのあとは野菜水切り器で脱水。サラダセットはここが肝心で、水切りすると食感も日持ちもよくなる。
ちなみに、同じ葉物でも、バジルは熱に弱く、ワサビ菜は辛みが強くなりすぎるので、この2つは50度洗いをしないそうだ。

袋詰めの基本はジャストサイズ

洗いが済んだらいよいよ袋詰め。
お客さんが冷蔵庫に入れやすいように、大きなサイズにはせず、なおかつ野菜が入るギリギリの「ジャストサイズ」を選ぶ。ユルめで、袋にシワが入るようだと美しく見えないからだ。
しかし、この「ジャストサイズ」、キツキツで野菜を入れるのが難しい。
「え、新聞紙使わないんですか?」と、望月さん。もたつく私を見ていられず、やってみせてくれた。新聞で包んで袋に入るサイズにし、トントンと揺すると、簡単に入った。これは便利。

重さを測ったうえで、切り口を揃える

2つ折りの新聞紙に形が崩れないように置いて包む

包んだ新聞紙を袋に差し込んで揺すると、キレイに入る

麻ひもで10円違う

袋を留めるのはバッグシーラーテープ(野菜の袋を閉じる業務用テープ)ではなく麻ひも。味気のないテープよりも、確かに「感じ」がよく、丁寧に梱包していることが伝わりそうだ。結び方はお客さんが外しやすいように「ひき解け結び(片チョウチョ結び)」。長い方のヒモを引っ張れば、シュルッと抜けるのが気持ちいい。
望月さんはテープから麻ひもに変えることで「10円高く売れる」という。確かにそうかもしれない。洗う・袋詰めといった調整作業はただただ「面倒なもの」と思っていたが、一生懸命つくったものを、ちゃんと売るための大事な作業だったのだ。

そして、その後も「トマトはヘタの向きを揃える」「ニンジンは肌のキレイなほうを表に向ける」など、望月さんこだわりの仕上げ術についての講義は遅くまで続いた……。

トマトは、右のようにコンパクトに詰め、余った袋の端っこはギリギリまで切る。ヘタが裏側になるように揃えると、光沢が強調される

こだわりのサラダセット。ただごそっと詰めるのではなく、正面から見た時の色合いを考えながら、丁寧に詰める


 

やさい屋ポッケ

 
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