ハダニ類の被害
ハダニ類は5〜10月ごろ、特に梅雨明け以降の乾燥しやすい時期に多く発生し、主にナス科、ウリ科などの果菜類やイチゴなどの葉から養分を吸い取ります。吸われた部分は色が抜けて、白い斑点やかすり状の模様ができるのが特徴的です。養分を吸い取られすぎると野菜は生育不良を起こし、ひどいときはそのまま枯れてしまうこともあります。
ハダニ類ってどんな虫?
ハダニ類は体長0.3〜0.5ミリ前後の小さい虫で、黄色や緑色などの種類もいますが、赤い色をしたものが多いため、アカダニと呼ばれることもあります。基本的には集団で行動します。英語ではSpider mite(直訳するとクモダニ)と呼ばれるように、クモの仲間に分類され、糸を吐いて巣状の網を作ったり、糸を伸ばして風に乗って空中を飛翔することができます。
また卵から成虫になるまでの期間が10日程ととても短いため、繁殖力が高く、条件が整うとあっという間に数を増やします。またハダニ類を駆除するための薬剤なども、同じものを繰り返し使っていると、数世代で抵抗性を持ち始めることもハダニ類が厄介視されている理由の一つです。
ハダニ類はなんのために網を張る?
ハダニ類はクモのように、糸を出して網を張りますが、これはクモのように虫を捕まえる為ではなく、天敵や雨風から身を守るためと言われています。またこの網が張られていると薬剤が直接かかりにくくなるため、効きも悪くなります。
ハダニはどんな環境で発生しやすい?
ハダニは高温で乾燥した環境を好むため、梅雨明けの雨の少なく気温の高い時期によく発生します。この頃は天敵が少なくなる時期でもある為、より繁殖しやすいです。さらに黒マルチをしていると、地表面の温度が高くなり、発生しやすくなるので注意しましょう。また雨が当たらないベランダやハウス内なども発生しやすい場所となります。
ハダニの天敵とは?
ハダニの天敵はテントウムシ、ヒメハナカメムシ、カブリダニ、クサカゲロウ、ハダニアザミウマなどです。ハダニは薬剤による防除が難しいこともあって、カブリダニなどの天敵生物を使ってハダニの被害を防ぐ“生物農薬”が使われることがあります。
ハダニ類の予防
ハダニ類は一度大量発生してしまうと、対策がとても難しい害虫です。まずはハダニ類が発生しにくく、増えにくい環境づくりを心がけましょう。予防方法としては主に以下の3つです。
予防方法①枯れ草・落ち葉マルチ
ハダニ類は地表面が乾燥し、高温になると発生しやすいため、枯れ草や落ち葉などで土を覆うマルチングが効果的です。春に黒いビニールマルチなどを敷いていた場合は、梅雨明けの時にはがして、枯れ草・落ち葉マルチを行いましょう。
予防方法②雨に当てる
ハダニは水に弱いため、特に雨の当たらないベランダなどで育てている場合は、雨の当たる場所に移しましょう。
予防方法③植物の多様性を増やす
畑の中の植物の種類を多様にすることで、害虫の被害が減ることが知られています。その理由としては、天敵が増えるから、害虫が目的の野菜を発見しにくくなるから、害虫が雑草なども食べるようになるから、などが考えられます。
ハダニ類の対策
ハダニが発生した場合の対策方法です。早期の発見・対処が鍵となりますので、梅雨明けの時期は特に野菜の葉の裏などを観察しましょう。
対策方法①粘着テープ
ハダニ類の発生が少数の場合は、ガムテープなどにひっつけてとる方法がオススメです。
対策方法②天敵の利用
ハダニ類の天敵を増やしたいところですが、実際は特定の天敵を狙って呼び寄せたり、増やしたりすることはかなり難しいです。その代わりに、できるだけ畑の中の生態系を複雑にしていくことで、自然と天敵が増えることを狙います。畑の中の生態系を複雑にするための最も単純な方法は、畑に生えている植物の種類を多様にすることです。さまざまな種類の野菜やハーブを植えたり、雑草も邪魔にならないものであれば適度に残しておくことで、それぞれ住み着く虫や微生物が異なるため、自然と生態系も多様になり、特定の虫だけが大量発生する可能性が低くなります。
対策方法③液剤で窒息させる
粘着性のあるような液剤をハダニに散布して気門を塞ぎ、窒息死させるという方法です。液剤として家庭で手に入りやすいものとしては牛乳があります。牛乳を晴れた日の朝にハダニに散布します。それが乾くことでハダニの気門がふさがり、窒息しますが、そのままにしておくと野菜の表面に雑菌が増えやすくなるため、翌日などに水で奇麗に洗い流す必要があります。他にもでんぷんを利用したものなどがホームセンターなどで売られています。
ハダニ類以外でも同じような模様になることもある
ハダニ類の被害にあった葉は特徴的な模様になります。ただし栄養素の過不足によって起こる生理障害や病気による症状の場合でも同じような模様になることがあります。葉の裏にハダニ類がいるかどうかチェックし、原因を突き止めましょう。