広大な農地で育まれる、安全・安心な農作物

穂が実り始めた8月上旬の片平町
約1200年前、朝廷のうねめ(女官)となった春姫の悲恋物語が語り継がれている郡山市片平町。地元の持つ魅力を存分に生かしたいという思いから、『うねめ農場』は誕生しました。代表の伊東敏浩さんは9代続く農家の長男として家業を継ぎ、2006年に農業法人を設立。現在、東京ドーム約30倍に匹敵する140町歩もの耕作面積で農作物を作っています。
「米、そば、大豆、イチゴ、タマネギなど多品目を作付けしています。作物の種類は奇をてらったものではなく、家庭の食卓に馴染み深い作物であること。当たり前のおいしさを届けることを心がけています」。今でこそ広大な農地を有する同農場ですが、そこには農家が抱える問題が深く関係していると伊東さんは言葉を続けます。
「高齢化や後継者問題などを理由に農地を手放す人が後を絶たないなか、よかったらやってくれないか? と声をかけられることが増えていきました。自分は離農しても、代々受け継いできた農地を生かしてほしいという思いがあるのだと思います」。伊東さん自身も、せっかく立派な農地があるのにもったいないと、できる限り任せられたり借りたりすることで農地を生かしているそうです。こうした農地は『うねめ農場』によって息を吹き返し、おいしい作物を育んでいます。

有機質循環農法を取り入れたビニールハウス内の土壌
当初は水稲を専門に農場経営をスタートした伊東さんですが、単一の作付けは作業が特定の時期に集中し、それによって人手が不足する問題に直面します。そこで始めたのが多品目の作付けです。「収穫時期が異なる作付け品目を増やすことで作業が分散され、さらに年間を通した収益が見込まれるようになりました」。
さまざまな農産物を手掛ける同農場ですが、どの作物にも共通するのが土壌環境の整備です。農場では有機質循環農法を採用し、作物が本来もつ力強い生命力や根付きを最大限に引き出すことに努めています。
「土壌環境を整えることは化学肥料や農薬の軽減にもつながり、農地を永続的に使い続けるこができます。任された農地の健全な維持も、農場としての大切な使命です」。
これからの農業に必要なこと

イチゴの育苗に勤しむスタッフのみなさん
農業の担い手が少なくなっている今、人材育成こそが農業の未来を救うと伊東さんは分析します。
「多くの農家は家族経営に頼ってきたため、後継者が育たないことには農業を続けられないというのが現状です。農業をやれる人が限られてしまうようではこの問題は長く尾を引くでしょう。非農家でも「やってみたい」という人を雇用し、人材育成に力を注ぐことが今後の課題であり、目標です」。
現在25名のスタッフを雇用している『うねめ農場』は、農業を実際に体験することで経験値を高めてほしいという思いから、就農希望者の農業研修や学生のインターシップも受け入れています。さらに、ドローンやIOT技術を取り入れた「スマート農業」や、農作物の生育状況を可視化する「デジタルアグリ」を積極的に取り入れることで、効率化や労働力の軽減を目指しています。
郡山に農業体験施設を! 農業の楽しさ、自然の恵みを伝えたい

農場産の大豆とふくはる香を使った加工品
農業の可能性や魅力を広く知ってもらうためには、PRが大切と伊東さんは話します。その一環として取り組んでいるのが加工品の販売です。農場産のタマネギを使ったドレッシングや大豆で作った納豆、福島県産品種のイチゴ、ふくはる香のやさしい甘みをそのまま生かしたコンフィチュールなど、安全・安心な加工品の製造・販売は、地産地消商品としても高い評価を得ています。
そんな伊東さんには壮大な夢があります。それは、郡山に農業体験ができる観光施設を作ることです。
「イチゴ狩りや田植え体験ができるレジャー施設を作り、農業の楽しさをアピールできたらと考えています。郡山に多くの人が訪れ、土地の素晴らしさに気づいてもらえたら嬉しいですね」。
農業の面白さは「いろいろ試すことができること」と、笑顔で話す伊東さん。ひとつのものを作って、結果的に失敗したとしても次に活かすことができる農業は、たくさんの可能性を秘めていると語ってくれました。
来期からはニンジン、ジャガイモの作付けを開始する『うねめ農場』。「あたりまえの作物をふるさとで作ることができる幸せ」を噛みしめながら、農場はさらなる発展を目指しています。
【問い合わせ】
有限会社 うねめ農場
福島県郡山市片平町字木藤田49番地2
TEL:024-961-7580(事務所)
FAX:024-961-7580