湿害のメカニズムと酸素の必要性
湿害というと、土壌中の過剰な水分により引き起こされるイメージがありますが、実は酸素不足が原因となって発生することがほとんどです。
葉と同じように、根も呼吸することで養分を吸収したり伸長するためのエネルギーを得ています。しかし、常に空気と接している地上部とは異なり、作物の根は、土質や温度、湿度、微生物の活動など、さまざまな要因により土壌中の酸素が消費されることで、酸欠状態に陥りがちです。
土壌中の酸素濃度低下は、根の養分吸収に影響を及ぼします。土壌中の酸素濃度が大気中とほぼ同じ20%の時の窒素、リン酸、カリウムの吸収量を100とすると、酸素濃度が2%(低酸素状態)まで下がると、それらの吸収量は半分にまでなってしまいます(下記グラフ参照)。
健全な根の機能を維持するためにも、安定的に酸素を供給することは必要なのです。
酸素供給剤の作用と仕組み
酸素供給剤は、土壌中に酸素を供給し、酸欠状態にある根の呼吸を助けることで、根の機能を健全に保ちます。また、酸素を好む微生物を活性化させ、土壌環境の改良、団粒構造の構築も期待ができる製品です。
保土谷化学の酸素供給剤は、大きく分けて液剤タイプと粒剤タイプの2種類があり、メインとなるのは以下の3商品です。
液剤タイプの『M・O・X(エムオーエックス)』は、使用後すぐに土壌中で酸素を発生し効果を発揮します。過酸化水素を成分として、酸素が発生した後は水が残ります。通常は酸素不足で根の生育が悪くなった時の回復のために、流し込むように使うのが効果的です。
粒剤タイプの『ネオカルオキソ』は元肥として使用することで、約3カ月間土中に酸素を供給し続けます。同じく粒剤タイプの『ネハリエース』は、追肥型。水に触れると粒が砕け、酸素が発生する性質のため、効果が1カ月間持続します。粒剤タイプの成分は過酸化カルシウム。水と反応して酸素を発生させた後は消石灰が残ります。
保土谷化学のアグロ事業推進部の齋藤正頼(さいとう・まさより)さんは、これら酸素供給剤の効果を以下のように説明します。
「例えば、水耕栽培で根がずっと水に浸かった状態でも根腐れしないのは、養液に酸素を溶け込ませて供給しているからです。土耕栽培でも同じで、水害や湿害などで、農作物の根が水に浸っているような状態でも、酸素を供給することで根腐れや根傷みを軽減することができます」
それでは、実際にどのような状況で使われ、どのような効果が得られるのでしょうか。使用した生産者に伺いました。
導入生産者の使用事例
「水中で泳いでいたレタスでも出荷できた」の声
茨城県坂東市でレタスとネギを栽培する内田英雄(うちだ・ひでお)さんは、ネギの栽培時に『ネオカルオキソ』を使用しています。
「ネギは酸素を多く必要とする作物ですし、農業を始めた頃に人に教えてもらってからは欠かさず入れ続けています。うちでは、ネギを土寄せするタイミングで、1度だけ『ネオカルオキソ』を入れるという使い方をしています」
もともと会社員として勤めていた内田さん。会社員時代よりも農家になった現在のほうが、努力が結果に現れやすく、だからこその難しさと面白さを感じながら工夫を重ねているそうです。『ネオカルオキソ』を取り入れたのも、いかに根を生育させるかを考えた結果、酸素供給剤が選択肢として挙がったためだと話します。
実は、坂東市には内田さんのように『ネオカルオキソ』を愛用する生産者が多くいます。『ネオカルオキソ』が、同市で広まるきっかけとなったのが、「平成27年9月関東・東北豪雨」でした。
茨城県内の農作物等の推計被害額は約32億円と、県内農業に甚大な被害をもたらしました。坂東市内で肥料や農薬を販売する内田種苗店の内田英雄さんによると、長雨で畑に溜まった水で、出荷前のレタスが “泳いでいた” ほどだったそうです。
豪雨に見舞われた年、『ネオカルオキソ』が湿害に効くという評判を聞いたあるレタス農家が、段差がある畑の中で一段と低くなっていて水の溜まりやすい箇所に試してみました。
すると、『ネオカルオキソ』を撒かなかった箇所のレタスは、生育不良で出荷できなかったのに対し、『ネオカルオキソ』を撒いた箇所のレタスは、水に浸かった状態にもかかわらず生育は良好で、出荷することができたそうです。
この農家は予想だにしなかった状況に非常に驚き、また周りの農家の反響も大きく、坂東市では導入する農家が増えていったのです。
酸素供給剤として、唯一無二の存在
同じ茨城県の神栖市で、ピーマンの施設栽培を行う吉川輝夫(よしかわ・てるお)さんも酸素供給剤を愛用する生産者です。
神栖市は砂地で、土が固く締まって酸素を取り入れづらい土地です。砂地であるため、吉川さんは、土壌改良にも気を配ります。
「付き合いある販売店さんに肥料設計をお願いしています。その中に『ネオカルオキソ』が入っていて、以来、10年以上使い続けています。団粒化や、微生物の活性、また、作型により暑い時と寒い時と気温が両極端のときに定植をするため、活着と根張りを期待して使っています」
周りの農家も『ネオカルオキソ』を使っていると話す吉川さん。
「『ネオカルオキソ』は、酸素供給剤として唯一無二の存在で、代替製品は無いと思います。おかげでこの10年は収量も安定しています。ずっと使い続ける圃場の土壌環境を壊してしまったら元も子もないですから、土壌改良のことを考えても、今後も使っていくつもりです」と、『ネオカルオキソ』に全幅の信頼を寄せる様子が伺えました。
栽培作物を問わず、露地でも施設栽培でも使える
最後に、アグロ事業推進部の担当部長 藤田勝久(ふじた・かつひさ)さんに、おすすめの使用方法について伺いました。
「当社の酸素供給剤は、発売当初から現在まで、集中豪雨や長雨で湿害が心配される時に使用して助かったという声が多く聞かれます。露地栽培でも施設栽培でも、シチュエーションは選ばず、どのような作物でも使用できます。水はけの悪い土壌は酸素が不足しがちですので、水田から転作した圃場や、水田の裏作などでの使用は特にお勧めします」
初心者でも使いやすく、ベテラン農家も使っている酸素供給剤。予測できない異常気象が多く起こる昨今、農作物にも土壌にも十分な酸素供給を行って、安定した生産を目指してはいかがでしょうか。
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保土谷化学工業株式会社
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