除草が大変! ハマスゲとはどんな雑草?

刈り取りに非常に強いため、頻繁に刈り取りをするような場所ではこのように群生しやすい
ハマスゲとはカヤツリグサ科の多年生雑草で、別名コウブシやコブシとも呼ばれます。東北から沖縄にかけて生息しますが、特に西日本の暖かい地域の畑でよく発生します。刈り取りに強く、耕運や除草剤などでも枯れにくいため、とても除草が困難な雑草として有名です。
ハマスゲが厄介な理由
ハマスゲは種でも繁殖しますが、根にできる塊茎(かいけい)と呼ばれる球根のようなものを作り、それが地下部で広がっていくことで繁殖します。ジャガイモも芋が土に残っているとそこから芽が出て増えていきますが、それと同じようなものと思ってください。この塊茎が土の中に残っていると、またすぐに葉が生えてくるため、地上部を刈り取るだけでは数を減らすことはできません。また土を耕す時に、この塊茎が切断されるとそれぞれから発芽するため、余計に数を増やしてしまうこともあります。手で塊茎ごと抜こうと思っても、葉だけちぎれてしまうことがよくあります。
ハマスゲはどんな環境を好む?
ハマスゲは春になり、気温が10~15度になると塊茎から発芽しますが、発芽の適温は30~35度と、高温と強い日差しを好む植物です。刈り取りや耕運に強いことから、頻繁に刈り取りや耕運が行われて、地表面に日がよく当たりやすい場所は特に繁殖しやすくなります。逆に光の少ない環境には弱いため、周りに背の高い植物などがあり地表面にあまり日が当たらなくなると、数が減っていきます。
ハマスゲが生える地力のレベルは?
畑にどんな雑草が生えているかを知ることは、その畑の状態を推測する手助けとなります。雑草から推測することのできることの一つに、その畑の地力(ちりょく)があります。地力とはその土地が持つ植物を育む力のことで、地力が上がってくると、あまり手をかけなくても野菜は健康的に育ちやすくなります。
地力が高いということは土壌の生態系が豊かになっているということを表しますので、基本的にはその地上に生える雑草や虫などの生態系も豊かになり、多様性が高い状態を表しています。そのため基本的には地力が低い場所では一部の雑草だけが目立ち、地力が高い場所ではより多様な雑草が見られます。
下の表は畑の地力を診断するときに、僕が指標として使っているものになります。地力の段階をレベル1からレベル4に分け、それぞれの段階を見分ける指標となるような雑草を記載しています。
地力 | 特徴 | 生えやすい雑草 | 適した野菜 |
---|---|---|---|
レベル4 | ほとんどの野菜が少肥料でも育つ | ハコベ、ホトケノザ、オオイヌノフグリなど | ナス、ピーマン、キャベツ、ハクサイ、タマネギなど |
レベル3 | 肥料を入れることで、大体の野菜の栽培が可能 | スベリヒユ、カラスノエンドウ、ノボロギク、ツユクサなど | ミニトマト、キュウリ、ニンジン、ダイコンなど |
レベル2 | 栄養の絶対量が少ない | スギナ、ハハコグサ、シロツメクサなど | サツマイモ、ダイズ、エダマメ、ジャガイモなど |
レベル1 | 土が硬く痩せている | ハマスゲ、セイタカアワダチソウ、ヨモギ、チガヤなど | ヒエ、アワ、タカキビなど |
レベル1から4に上がっていくに従って、生える雑草が追加されていき、種類が増えていくという風に考えてください。地力レベル4の段階ではレベル1〜3の雑草が全く生えなくなるというわけではなく、その割合が減っていきます。全体の傾向としては、多年生雑草よりも一年生雑草が生えやすくなり、多くの野菜とも共生しやすい雑草が増えていきます。
この診断方法についてや地力レベルについての詳細は、「雑草で診断!その土で野菜は育つのか?【畑は小さな大自然vol.7】」の記事をご覧ください。ただしこの診断方法は学術的に確立されたものではなく、僕自身やさまざまな農家の経験則による分類ですので、あくまでも参考程度にしてください。
今回紹介しているハマスゲは、一応地力レベル1に分類していますが、地力がある程度ある場所でも、頻繁に刈り取りや耕運の行われる場所では他の雑草よりも優先的に生えてきます。
ハマスゲ対策のポイント
ハマスゲはとても厄介な雑草ですが、実はその性質をよく理解していると、あまり邪魔にはなりませんし、むしろ畑づくりに利用することもできます。その対策の仕方をご紹介していきます。
通路と畝をしっかり分けて、場所を固定する

通路部分にびっしりと生えているハマスゲは、畝の中にはほとんど入ってこない
広い畑では難しいかもしれませんが、小さい面積の家庭菜園などでは、通路の部分と畝の部分ははっきりと分けて場所を固定し、全体を耕運機などで一気に耕さないことをオススメしています。なぜかというと、通路部分と畝の部分では、生えてくる雑草が異なりやすいためです。通路部分は踏まれるので土が硬くなりやすいですし、草刈機で刈るので、ハマスゲのような地下茎雑草が生えやすくなります。畝の部分は土づくりをして軟らかくなっていくので、地力が上がっていくことで、地下茎以外の軟らかい雑草が生えやすくなります。耕運機などで通路部分と畝の部分を一緒に耕してしまうと、通路に生えていたハマスゲが畝の部分にも広がり、手に負えなくなります。耕す時は畝の中だけを耕すようにすることで、耕運の労力も減りますし、草刈りの手間も減ります。
畝の中に生えてくるハマスゲの塊茎は全て取り除く
野菜を植える畝の中では、極力ハマスゲの塊茎がない方が良いです。そのため、植える前に塊茎を全て掘り起こしましょう。掘り起こした後の塊茎は数が少なければ、畝の上に置いておくだけでも良いですが、数が多い場合は、乾燥させれば発芽しなくなるので、コンクリートの上などに広げて乾燥させます。
土づくりをして地力を上げる

雑草や落ち葉の堆肥(たいひ)は土づくりに最適
畝の中は土づくりを行い、地力を上げることで、ハマスゲ以外の野菜の生育に邪魔になりにくい雑草が生えやすくなります。地力を上げるためには有機物が豊富な堆肥の使用が欠かせないのですが、特に家庭菜園でオススメしているのが雑草堆肥です。雑草で作った堆肥はミネラルのバランスもよく、吸収されやすい形で土になるため、地力の底上げとして最適な堆肥となります。コストがかからず自分で簡単に作れるのも大きなポイントです。雑草堆肥をベースにした上で、他の土壌改良資材を組み合わせることをお勧めします。
光を遮る
ハマスゲは葉に当たる光が遮られると、その再生力が落ちると言われています。できるだけ畝の上の地表面は裸にせず、枯れ草やビニールマルチで土を覆ったり、雑草や野菜で土が覆われている状態を作ることで、ハマスゲの数は減っていきます。
ハマスゲの利用法

芝生のように見える部分には、全てハマスゲが生えている
うちの畑ではこのハマスゲの習性を利用し、通路部分は頻繁に草刈機で刈ることによって、あえて通路部分にハマスゲだけが生えるようにしています。こうすることで以下の4つの効果を狙っています。
- 芝生のように見た目が良くなる
- 通路部分の水はけが良くなる
- 土が乾燥することやドロドロになることを防ぐ
- ハマスゲの地上部を敷き草として利用できる
通路部分を草刈機で刈った後にたくさん出るハマスゲの葉は、野菜の周りの敷き草としてとても適しています。特に夏場は土が乾燥しやすいため、たくさん敷いておくことで畝の保湿ができます。

ハマスゲの葉を畝の上に敷いておくことで、保湿効果が期待できる
性質を理解して上手に付き合おう
ハマスゲは対応を誤ると、とても厄介な雑草で、逆に数を増やしてしまうことがあります。しかしその性質を理解していれば、対処は可能ですし、むしろ利用することも可能です。今回ご紹介したハマスゲの対策・利用法を参考に、上手に付き合っていきましょう。