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バナナを食べない収穫体験!? 予約待ち3000人「稲沢バナナ園」の集客力と経営方法

バナナを食べない収穫体験!? 予約待ち3000人「稲沢バナナ園」の集客力と経営方法

愛知県稲沢市祖父江町にある「稲沢バナナ園」は、国内ではめずらしいバナナの収穫体験ができる観光農園。ここでは収穫してもバナナはその場で食べず、バナナを通じて食の大切さを学んでもらうことを目的としています。楽しみながら学ぶ体感型のプログラムと効率的なウェブ集客で、開業1年半で予約待ちが3000人を超える人気スポットに。そんな新しいスタイルの観光農園にチャレンジしているオーナーの石田守(いしだ・まもる)さんに観光農園を始めた経緯やバナナ栽培などについて話を伺いました。

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バナナ園を始めたきっかけ

稲沢バナナ園

ジャングル探検しているみたいでワクワク!(写真提供:稲沢バナナ園)

バナナ園がある愛知県稲沢市は全国でも有名な植木の産地。農業用ハウスで栽培する農家さんも多く、石田さんも観葉植物の園芸業を営む家庭で育ちました。子供の頃は自然や生き物が大好きで、学生時代は植物の遺伝子組み換え研究をし、食育講師としても活動していました。

石田さんが初めてバナナを植えたのは8年前。当時は観光農園をするつもりは全くなく、きっかけは「子供に安心できるものを食べさせてあげたい」という親心でした。
バナナを選んだ理由は、「オーガニックの野菜は手に入るものが多いけど果物はあまりないことと、実家の園芸業が規模縮小して使っていない温室があったので、そこで果物を育てることにしました。その中でもバナナは迫力があって成長を見るのも面白そう!と思って、沖縄から苗を2本取り寄せて植えたのがきっかけです」とのこと。
しかし、1本の木に約100本の実をつけるバナナはさすがに家庭では消費できなくなり、知人や食育仲間に声をかけて一緒に収穫体験をしたところ大盛況! バナナの木が増えてより多くの方に来てもらえるようになったことから5年前に事業化し、観光農園としてスタートしました。

稲沢バナナ園で育てているバナナのこと

稲沢バナナ園

稲沢バナナ園オーナーの石田守さん

バナナ園で育てているバナナのほとんどは三尺バナナ。尺は長さの単位で、三尺は約1メートル。これは木の高さを表しています。環境によってとても大きくなるものもありますが、その位のサイズでも実をつける背丈が低めの品種です。他にもアップルバナナやパパイヤ、ジャボチカバやコーヒーの木などのめずらしい熱帯果樹も育てています。

バナナの生育に必要なのは、暖かい温度とたっぷりの水。それぞれの木の成長のタイミングで実をつけるので、育つ環境があれば通年収穫することができます。暑い夏場は生育が良く、水を与え過ぎるとぐんぐん成長するため、背丈が伸びすぎてしまわないように水やりの回数を減らすなどして調整しています。
また、農薬や肥料は一切使わず、切り倒したあとのバナナの木や周辺に生えている草を根元に置いて土の中の微生物の力で循環させ、益虫たちにも頼りながらできる限り自然の状態でバナナにとって良い環境をつくるようにしています。

バナナの収穫体験会とバナナの木のオーナー制度について

稲沢バナナ園

収穫体験の様子(写真提供:稲沢バナナ園)

コンセプトは「子どもたちに学びと体験を」

稲沢バナナ園の収穫体験はバナナを食べることが目的ではなく、普段食べているバナナがどうやって育っているのかを知ること。専用のノコギリを使ってみんなで大きなバナナの房と葉っぱを切ったりして、バナナの収穫をしながら子供たちが楽しく学べるプログラムを提供しています。料金は、大人1人1000円・小学生以下1人500円。バナナは青い状態で収穫するため、とったものを500グラムづつお土産で持ち帰り、自宅で追熟をしてから食べます。そのほか、収穫体験以外にもバナナを使った料理イベントや、カカオからチョコレートをつくるイベントなども企画することもあり、募集開始10分で満員になるほどの人気ぶりです。

今年から「バナナの木オーナー制度」も開始。来園できないオーナーさんのための配送サービス・バナナ園での個人イベントの貸し切り使用が年4回無料・オーナー限定イベントへの招待・収穫体験への年1回無料招待という4つの特典があります。また、幼稚園や保育園での収穫体験支援なども行っています。

バナナの栽培に必要なものや、開業時に取り組んだこと

稲沢バナナ園

バナナの赤ちゃん。一枚ごとの苞葉(ほうよう)の下に実が付きます。白いのは花

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できるだけコストをかけずに、経営を後押しするやり方で

「バナナは熱帯植物なので、栽培するには温室と暖房と水道が必要です。苗は買い足したものもありますが、少しづつ増やしていきました。実家に使っていない温室があったので初期費用はかかりませんでしたが、もし、いちから始めていたら料金を1000円から2000円に上げて、金額に見合うサービスを考えていたと思います。ハウスなどの設備費用はとても高いので、資金に余裕があれば安心ですが、どこか空いている温室を探して借りるのもひとつの方法だと思います」(石田さん)
また、栽培しているバナナは、ほぼ100%収穫体験会用で、青いバナナしか販売しません。バナナを保存するための場所も必要なく食べ放題でもないので、集客して体験会をやれば確実に利益ベースにのるようにしました。

稲沢バナナ園

樹上でじっくり育ったバナナは、ぷっくりしていて甘味が強くて皮が薄い(写真提供:稲沢バナナ園)

登録制のウェブ集客で、集客率アップと業務の効率化を図る

体験会はバナナの成長に合わせて開催するため、営業は不定期で完全予約制。受付や告知は全てウェブ上で行っています。希望者には事前に仮予約をしてメールアドレスを登録してもらい、体験会開催時にメールで案内を送ります。「販売力をつけるためには、販売先があること、リストがあることが大切。リストをもっている方が効率も良く、見てくれている方は情報を知りたい人がほとんどなので、お互いにメリットになる」と石田さんは考えています。

これからやってみたいことや、稲沢バナナ園が目指す今後のビジョン

「今後は大人も楽しめることもしたいと思っています。園内のハーブでドリンクをつくったり、バナナの葉を使って包み焼きを焼いたり、ワイルドなバーベキューとかもやりたいです。あと、この場所自体の価値をもっと高めたいなと。ふらっと来て、バナナの木の緑にホッと癒やされながらここでゆっくりしてもらえるような、そんな場所にもなったら良いなと思っています。また、これは子供向けですが、私も妻も科学が好きで、バナナ園で自然を体験しながら科学を学ぶスクールみたいなことをやりたいなとも考えています。ユーチューブで動画も作ろうと思っています(笑)」

学び・癒やし・科学が体験できるバナナ園! 食べることだけでなく、いろんなスタイルや可能性がある観光農園の新しいカタチにチャレンジしている稲沢バナナ園の今後が楽しみです。

稲沢バナナ園

稲沢バナナ園

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