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カブの栽培方法を農家が解説。失敗せずに育てるポイントは

久保田 夕夏

ライター:

連載企画:農家が教える栽培方法

カブの栽培方法を農家が解説。失敗せずに育てるポイントは

サラダにすればカリカリの歯ごたえが楽しめ、煮物にすればとろける舌触りと、いろんな表情を見せてくれるカブ。なかでも小カブはプランターでも育てやすく生育期間も40~50日と短いので、家庭菜園が初めての方にもおすすめしたい野菜の一つです。小カブの次に挑戦したい中カブ、大カブについては、肌がツルツルしたきれいなカブを目指したいところ。割れや空洞ができる「ス入り」など、栽培中に起こりやすい失敗の原因と対処法についても説明していきます。

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栽培時期

小カブはほぼ一年を通して作ることができますが、生育適温は20~25度と涼しい気候を好むので、秋まきが育てやすいでしょう。春まきに比べて病害虫の発生も少なくなります。春まきでは播種(はしゅ)が早すぎると低温にあい、花芽が形成されてカブが大きくならないことがあります。また、30度以上では発芽率が著しく低下するので夏場の播種は避けた方が無難です。

土づくり

播種2週間前に苦土石灰と完熟堆肥(たいひ)を施し、よく耕します。さらに1週間前に化成肥料を入れて再び耕し、畝を立てます。畝幅は広くても狭くてもかまいません。畝幅が広ければ種まきの列数を多くし、逆に狭ければ列数を少なくします。カブは土の表面に出て大きくなるので、畝表面の土はレーキなどを用いて細かく砕いておきます。土のかたまりや石などがあると肌のきれいなカブができないので注意しましょう。

播種

カブは移植できないので、種は必ず畝に直接まきます。カブの種は小さく、気をつけてまかないと同じ場所にたくさん落ちてしまいます。親指と人差し指で種を挟んで、丁寧に1粒ずつまくようにしましょう。小カブは15センチ、中カブは20〜25センチ間隔に種をまく溝を掘ります。まき溝は深さ1センチ程度とし、三角クワの先端で細くひっかくか、板や支柱を土に押し付けてくぼませると良いでしょう。種はまき溝に1センチ間隔にまいていきます。その後0.5〜1センチ程度覆土し、平クワか手でしっかり押さえてから水をやります。

大カブの場合は25〜30センチ間隔で、1カ所につき5〜6粒ずつ点まきします。ジュースの瓶などでまき穴をつけると深さが均一になり発芽が揃います。

種まきが面倒、という方にはシーダーテープもおすすめです。シーダーテープとは種を水溶性のテープに挟み込んだもので、あらかじめ等間隔に種が入れてあるので、誰でも簡単にきれいに種まきができます。発芽率もよく、その後の間引きの作業も軽減されます。

間引き

間引きは一度に行わず、3回に分けて行います。1回目は本葉1~2枚目のときに混み合ったところを間引き、3センチ間隔にします。2回目は本葉3~4枚目のときに、5~7センチ間隔になるように間引きます。3回目は本葉5~6枚目の頃に、小カブは10センチ、中カブは15センチ間隔を目安に仕上げます。大カブの場合はタイミングは小中カブと同じで、1回目に3本立ち、2回目に2本立ち、3回目に1本立ちとします。作業が遅れると葉が軟弱になり病気にもかかりやすくなるので早めに行いましょう。間引きを丁寧にすることで、大きさのそろった質の良いカブができます。

間引くときは、葉の色つやが良く、変形していないもの、また、サイズは中くらいのものを残すといいでしょう。残す株を手で押さえるか、引き抜かずにはさみで切るなどして、傷つけないように注意して間引きしてください。

農家の一口メモ

間引きした葉は捨てずに、ぜひ食べてみましょう。カブ菜はビタミンAや、カルシウムが豊富な緑黄色野菜です。漬け物にしたり、ちりめんじゃこと炒めてふりかけにしたりするとおいしいご飯のお供になります。間引き菜は特に軟らかくて食べやすいので、農家の食卓でも人気の一品。一般に流通しないものを味わえるのは栽培者の特権ですね。

どうして間引くの?

はじめから間隔を開けて種をまけばいいのに、と思った方もいらっしゃるのでは。カブや大根の種は畑に直接まくため、虫に食われたり、雨や風で傷ついたりしてうまく成長できないことがあります。また、植物には狭い範囲にたくさん集まって成長すると、互いに競い合って生育が良くなるという性質があります。光を求めて競合することで早く大きくなろうとするのです。常に葉がふれあうくらいのぎりぎりの間隔に間引いてあげることで、早く成長させ、同時に自然界のリスクにも対応できるというわけです。

追肥、中耕、土寄せ

2回目、3回目の間引きのあとは、追肥と中耕、土寄せを行います。まず追肥として化成肥料をカブの根に直接当たらないように少し離してまきます。小カブは追肥しなくでも大丈夫ですが、カブは多肥を好むので、中カブ、大カブは必ず与えるようにしましょう。次に、中耕することで除草し、根に酸素を供給して成長を促します。最後に株元に土寄せして作業は終了です。土寄せには、間引き後の株が倒れないように固定する役割と、カブの肌を日焼けなどから守りきれいにする意味があるのでしっかり行いましょう。

収穫

カブの大きさが直径5センチ以上になれば収穫できます。小カブは5センチ、中カブは8~10センチ、大カブは15~20センチくらいが収穫の目安です。おすすめは一度に全部収穫せずに、大きいものから取り、残りのカブがまた大きくなったら収穫する方法です。「小カブから中カブまで収穫ができる」、という表示のある品種を使うと良いでしょう。収穫が遅れると根が裂けたり、老化してスが入ったりするので、品種に応じて適当な大きさになったら早めに取るようにします。

よくある失敗の原因と対策

1. カブが割れる

カブは乾燥したあと、急激に水を吸収すると割れやすくなります。ひどく乾燥させないように、雨がしばらく降らないときは水をあげて、常に畑に水分を保つようにしましょう。また、一度に広く間引くと、栄養と水分の吸収量が一気に増えて割れやすくなります。間引きは必ず数回に分けて行うようにしてください。また、収穫時期の遅れも割れにつながります。小カブから中カブ、中大カブまでどの大きさのときにでも収穫できる品種を使うと取り遅れの心配がなくていいでしょう。

2. 細いカブしかできない

カブは、土壌水分が豊富なときにはまるまるとふくらんだ形になります。細くなる原因のほとんどが水分不足です。水やりをしっかりとしましょう。また、肥料不足でも細長くなることがあります。肥料が足りているかどうかは、葉っぱの色が薄くなっていないかを気をつけて観察してください。

3. スが入る

葉の老化と、根部の過剰肥大による発育の不均衡が原因と言われています。秋まきでは葉の成長に適した期間が長いので、春まきよりもス入りの発生は遅くなります。元肥を入れて葉をしっかり成長させること、収穫が遅れないようにすることが大切です。また、スが入りにくい品種を選ぶことも対策の一つです。

4. 表面が汚くツルツルにならない

表面の傷のほとんどはキスジノミハムシによる食害です。キスジノミハムシは黒に黄色のラインが2本入った甲虫で、体長は3ミリと非常に小さくノミのように高く飛び跳ねます。この幼虫がカブの表面を食べます。被害を受けるのは皮の部分だけなので家庭菜園では気にしなくても大丈夫ですが、販売用の場合は見た目が悪く売り物になりません。播種時に土に混ぜるタイプの殺虫剤が効果的です。防虫ネットで対処する場合は、できるだけ目の細かいものを選びましょう。また豆知識として、収穫したカブの表面の土汚れは、布製の軍手をはめて流水で擦るときれいに取ることができます。

主な病害虫

アオムシ、ヨトウムシ、コナガ、アブラムシ、キスジノミハムシなどがよく来る害虫です。できるだけ目の細かい防虫ネットや、殺虫剤を使って防除しましょう。また、根部はナメクジに食われることもあります。
病気では根こぶ病やべと病が発生します。根こぶ病は湿気の多い酸性土壌で発生しやすく、高温ではさらに被害が出やすくなります。菌が残ると次の作付けにも影響するので、病気になった株は畑から持ち出して処分しましょう。

小カブが上手につくれたら、中カブ、大カブや他の種類のカブに挑戦してみましょう。カブには非常にたくさんの在来品種があります。あなたの住む地域にもきっと、古くから栽培されている品種があるでしょう。そういった品種を調べて、その地域で育てるのもまた愛着がわいて楽しいものです。

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