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農家が教えるカブ(蕪)の栽培方法。失敗せずに育てる、間引きと土づくりのポイント

久保田 夕夏

ライター:

連載企画:農家が教える栽培方法

農家が教えるカブ(蕪)の栽培方法。失敗せずに育てる、間引きと土づくりのポイント

サラダにすればカリカリの歯ごたえが楽しめ、煮物にすればとろける舌触りと、いろんな表情を見せてくれるカブ。なかでも小カブはプランターでも育てやすく生育期間も40~50日と短いので、家庭菜園が初めての方にもおすすめしたい野菜の一つです。小カブの次に挑戦したい中カブ、大カブについては、肌がツルツルしたきれいなカブを目指したいところ。割れや空洞ができる「ス入り」など、栽培中に起こりやすい失敗の原因と対処法についても説明していきます。

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カブの基本概要

カブは、アブラナ科アブラナ属の野菜です。春の七草の「すずな」はカブのことです。日本古来の野菜のように思われるかもしれませんが、原産地は中東のアフガニスタンか、地中海沿岸の南ヨーロッパだと言われています。日本にやってきたのは弥生時代の頃。東洋種がシベリアから中国経由で西日本に入り、西洋種はヨーロッパから朝鮮半島を経由して東日本に入ってきたと考えられています。

カブは大きさによって「大カブ」「中カブ」「小カブ」に分類されます。スーパーや八百屋で購入しているのはほとんどが「小カブ」で、漬物などの加工品として口にしているものの多くが「大カブ」です。近年では、赤・黄色・紫などカラフルなカブが外食産業などで大人気です。

カブの栽培カレンダー

小カブはほぼ一年を通して作ることができますが、生育適温は20~25度と涼しい気候を好むので、春と秋に栽培するのが適している野菜です。筆者のおすすめは秋まきで育てること。春まきに比べて病害虫の発生も少なくなり、育てやすいといえます。春まきでは播種(はしゅ)が早すぎると低温にあい、花芽が形成されてカブが大きくならないことがあります。また、30度以上では発芽率が著しく低下するので夏場の播種は避けた方が無難です。栽培期間は比較的短く、小カブであれば40~50日程度、中カブでも50~60日程度で収穫が可能なため、初心者にも扱いやすい野菜といえます。

カブの栽培に適した土づくりのポイント

土づくりは欠かせない工程です。播種の2週間前には、苦土石灰と完熟堆肥を混ぜ込んで、pHを6~6.5の範囲に調整しましょう。酸性に傾いている土壌では、石灰を使って中和します。
さらに播種の1週間前には化成肥料を入れて再び耕し、畝を立てます。畝幅は広くても狭くてもかまいません。畝幅が広ければ種まきの列数を多くし、逆に狭ければ列数を少なくします。カブは土の表面に出て大きくなるので、畝表面の土はレーキなどを用いて細かく砕いておきます。土のかたまりや石などがあると肌のきれいなカブができないので注意しましょう。

プランターで育てる場合に準備するもの

カブは地植えのほかにプランターでも育てることができます。プランター栽培は場所を選ばずベランダでも行えるため、小スペースで始めたい方に適しています。プランターの場合、深さ15cm以上のものを選ぶのがポイントです。種を選ぶ際は、育て方が比較的簡単でプランター栽培に適している小カブがおすすめ。例えば「金町小蕪」などの品種が初心者向きです。

カブの播種方法

カブの播種(種まき)は、春まきでは3月下旬から6月上旬、秋まきでは9月から12月中旬が適期とされています。発芽適温は20~25℃で、高温期(30℃以上)や低温期すぎる場合は発芽が悪くなるため、適性気温を考慮して計画を立てましょう。カブは移植できないので、種は必ず畝に直接まきます。カブの種は小さく、気をつけてまかないと同じ場所にたくさん落ちてしまいます。親指と人差し指で種を挟んで、丁寧に1粒ずつまくようにしましょう。小カブは15センチ、中カブは20〜25センチ間隔に種をまく溝を掘ります。まき溝は深さ1センチ程度とし、三角クワの先端で細くひっかくか、板や支柱を土に押し付けてくぼませると良いでしょう。種はまき溝に1センチ間隔にまいていきます。その後0.5〜1センチ程度覆土し、平クワか手でしっかり押さえてから水をやります。

大カブの場合は25〜30センチ間隔で、1カ所につき5〜6粒ずつ点まきします。ジュースの瓶などでまき穴をつけると深さが均一になり発芽が揃います。

種まきが面倒、という方にはシーダーテープもおすすめです。シーダーテープとは種を水溶性のテープに挟み込んだもので、あらかじめ等間隔に種が入れてあるので、誰でも簡単にきれいに種まきができます。発芽率もよく、その後の間引きの作業も軽減されます。

発芽適温

ブの発芽適温は20~25℃で、この範囲内であれば比較的早く発芽します。一方で、最低発芽温度は4~8℃とされていますが、温度が低すぎると発芽が遅れるだけでなく、発芽率が悪くなるので注意が必要です。また、高温(30℃以上)の場合は発芽障害が起きることがあるため、真夏の種まきは避けた方が良いでしょう。

元気なカブを育てるために欠かせない「間引き」

元気で大きなカブを育てるために欠かせない作業が「間引き」です。カブは発芽すると密集した状態になり、そのままにしておくと通気性が悪くなって病害虫の発生リスクが高まるほか、十分な成長のための間隔が確保できていないために、大きく育つことが難しくなります。

カブを間引きする目安は発芽から2~3週間ごろ。一度に行わず、3回に分けて行います。1回目は本葉1~2枚目のときに混み合ったところを間引き、3センチ間隔にします。2回目は本葉3~4枚目のときに、5~7センチ間隔になるように間引きます。3回目は本葉5~6枚目の頃に、小カブは10センチ、中カブは15センチ間隔を目安に仕上げます。大カブの場合はタイミングは小中カブと同じで、1回目に3本立ち、2回目に2本立ち、3回目に1本立ちとします。作業が遅れると葉が軟弱になり病気にもかかりやすくなるので早めに行いましょう。間引きを丁寧にすることで、大きさのそろった質の良いカブができます。

間引くときは、葉の色つやが良く、変形していないもの、また、サイズは中くらいのものを残すといいでしょう。残す株を手で押さえるか、引き抜かずにはさみで切るなどして、傷つけないように注意して間引きしてください。

農家の一口メモ

間引きした葉は捨てずに、ぜひ食べてみましょう。カブ菜はビタミンAや、カルシウムが豊富な緑黄色野菜です。漬け物にしたり、ちりめんじゃこと炒めてふりかけにしたりするとおいしいご飯のお供になります。間引き菜は特に軟らかくて食べやすいので、農家の食卓でも人気の一品。一般に流通しないものを味わえるのは栽培者の特権ですね。

どうして間引くの?

「わざわざ間引きをするくらいなら、はじめから間隔を開けて種をまけばいいのに」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。カブや大根の種は畑に直接まくため、虫に食われたり、雨や風で傷ついたりしてうまく成長できないことがあります。また、植物には狭い範囲にたくさん集まって成長すると、互いに競い合って生育が良くなるという性質があります。光を求めて競合することで早く大きくなろうとするのです。常に葉がふれあうくらいのぎりぎりの間隔に間引いてあげることで、早く成長させ、同時に自然界のリスクにも対応できるというわけです。

追肥、中耕、土寄せ

2回目、3回目の間引きのあとは、追肥と中耕、土寄せを行います。まず追肥として化成肥料をカブの根に直接当たらないように少し離してまきます。小カブは追肥しなくでも大丈夫ですが、カブは多肥を好むので、中カブ、大カブは必ず与えるようにしましょう。次に、中耕することで除草し、根に酸素を供給して成長を促します。最後に株元に土寄せして作業は終了です。土寄せには、間引き後の株が倒れないように固定する役割と、カブの肌を日焼けなどから守りきれいにする意味があるのでしっかり行いましょう。

水やり・追肥の頻度

カブを健康に育てるには、水やりと追肥のタイミングと量を適切に管理する必要があります。カブは適度な水分を好む作物です。水やりは、土の表面が乾いたタイミングで行うよう心がけると良いでしょう。発芽直後や乾燥しやすい時期は特に気を配るようにしましょう。ただし、水のやり過ぎは根腐れを招く原因となるため注意してください。

追肥は生育中期から後期にかけて行います。最初の追肥は間引きが終わったタイミングで、その後は2~3週間おきに化成肥料や堆肥を少量ずつ与えましょう。

収穫方法とタイミング

カブの大きさが直径5センチ以上になれば収穫できます。小カブは5センチ、中カブは8~10センチ、大カブは15~20センチくらいが収穫の目安です。おすすめは一度に全部収穫せずに、大きいものから取り、残りのカブがまた大きくなったら収穫する方法です。「小カブから中カブまで収穫ができる」という表示のある品種を使うと良いでしょう。収穫が遅れると根が裂けたり、老化してスが入ったりするので、品種に応じて適当な大きさになったら早めに取るようにします。
大きさでの判断が難しい場合は、品種にもよりますが、小カブの場合は種まきから約40~50日、中カブは50~60日、大カブは60~90日を目安にするとよいでしょう。

収穫後の保存方法

収穫したカブは鮮度を保つため、早めに土を落としておきましょう。葉と根を分けて保存するのがポイントです。葉は湿らせた新聞紙に包み、冷蔵庫の野菜室で保存すると鮮度が長持ちします。根はポリ袋に入れて冷暗所や冷蔵庫で保存するのがおすすめです。

カブの栽培で見られる病害虫

ヨトウムシ、アブラムシ、コナガ、アオムシ、キスジノミハムシなどがカブを育てる畑によく来る害虫です。ヨトウムシは夜間に活発に活動し、若葉を食害します。日中に葉の裏側や地面付近を確認して駆除することが効果的です。

一方、アブラムシは葉の表面に群がり、栄養を吸収して葉を弱らせます。できるだけ目の細かい防虫ネットや、殺虫剤を使って防除しましょう。また、根部はナメクジに食われることもあります。また、コナガによる被害は、葉に穴を開ける形状が特徴で、幼虫の発見時には早めの駆除が肝心です。天然成分の防虫スプレーや寒冷紗を使用するのも良い方法です。

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病気では根こぶ病やべと病が発生します。根こぶ病は湿気の多い酸性土壌で発生しやすく、高温ではさらに被害が出やすくなります。菌が残ると次の作付けにも影響するので、病気になった株は畑から持ち出して処分しましょう。特にアブラナ科を連作した場合に発生リスクが高まります。根子こぶ病を防ぐには、連作を避け、定期的に土壌を消毒することが重要です。

べと病はカビ(糸状菌)が原因で植物の葉などに発生する病気で、梅雨時期などの湿度の高い時期に発生しやすいです。畑の風通しを良くし、排水性を高めて過湿にならないようにするほか、敷きわらやマルチングで土壌からの感染を防ぐとよいでしょう。

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【Q&A】よくある失敗の原因と対策

比較的育てやすく、初心者にもおすすめなカブですが、温度管理や水やりなどを間違えると、思ったように育たない場合があります。
ここでは読者からよく寄せられる質問をベースに、よくある失敗とその対策について解説していきます。

Q.カブが割れてしまいます

カブは乾燥したあと、急激に水を吸収すると割れやすくなります。ひどく乾燥させないように、雨がしばらく降らないときは水をあげて、常に畑に水分を保つようにしましょう。また、一度に広く間引くと、栄養と水分の吸収量が一気に増えて割れやすくなります。間引きは必ず数回に分けて行うようにしてください。また、収穫時期の遅れも割れにつながります。小カブから中カブ、中大カブまでどの大きさのときにでも収穫できる品種を使うと取り遅れの心配がなくていいでしょう。

Q.細いカブしかできません

カブは、土壌水分が豊富なときにはまるまるとふくらんだ形になります。細くなる原因のほとんどが水分不足です。水やりをしっかりとしましょう。また、肥料不足でも細長くなることがあります。肥料が足りているかどうかは、葉っぱの色が薄くなっていないかを気をつけて観察してください。

Q.空洞があってスカスカになってしまいます

こうした状態のことを「スが入っている(ス入り)」と言い、葉の老化と根部の過剰肥大による発育の不均衡が原因と言われています。秋まきでは葉の成長に適した期間が長いので、春まきよりもス入りの発生は遅くなります。元肥を入れて葉をしっかり成長させること、収穫が遅れないようにすることが大切です。また、スが入りにくい品種を選ぶことも対策の一つです。

Q.表面が汚くツルツルにならない

表面の傷のほとんどはキスジノミハムシによる食害です。キスジノミハムシは黒に黄色のラインが2本入った甲虫で、体長は3ミリと非常に小さくノミのように高く飛び跳ねます。この幼虫がカブの表面を食べます。被害を受けるのは皮の部分だけなので家庭菜園では気にしなくても大丈夫ですが、販売用の場合は見た目が悪く売り物になりません。播種時に土に混ぜるタイプの殺虫剤が効果的です。防虫ネットで対処する場合は、できるだけ目の細かいものを選びましょう。また豆知識として、収穫したカブの表面の土汚れは、布製の軍手をはめて流水で擦るときれいに取ることができます。

まとめ

小カブが上手につくれたら、中カブ、大カブや他の種類のカブに挑戦してみましょう。カブには非常にたくさんの在来品種があります。あなたの住む地域にもきっと、古くから栽培されている品種があるでしょう。そういった品種を調べて、その地域で育てるのもまた愛着がわいて楽しいものです。

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