研究概要
今回お邪魔したのは、緑茶を乳牛に飲ませて乳量が増加する!という研究を行った静岡県畜産技術研究所です。
研究の一部を担当された瀬戸隆弘(せと・たかひろ)さんにお話を聞きました。
ちだ
瀬戸さん
研究は2年にわたって行われ、1年目は瀬戸さんの後輩が実施し、瀬戸さんは2年目を担当したとのこと。
1年目は牛がそもそもお茶を飲むのか、お茶を飲むことで健康状態に影響がないかを確認したそうです。
1年目の実験で牛への緑茶給与に問題がないことがわかったので、2年目は3カ月間の長期試験を行い、乳量等にどのような影響があるかを実験したそうです。
なぜ、緑茶を牛に飲ませてみようと思ったのか
ちだ
酪農家の方にとって乳量の上昇は収入の上昇につながります。お茶を与えることでプラスの影響を与えることができないかというのが発端ですね。
瀬戸さん
ちだ
もしかしたら、そのストレスに対してお茶の成分が効くのでは、という期待がありました。
瀬戸さん
ストレス緩和に緑茶!
ところが、実験後に緑茶の思わぬ結果が明らかになります。
研究のプロセス
ちだ
ただ、1年目の試験では搾乳後に2時間ほどかけて牛に水分をとらせたんですが、水よりも緑茶の方が4リットルほど多く飲んでいました。
瀬戸さん
ちだ
熱くて飲めなくないですか? 冷ましたんですか??
水1リットルに2.5グラムのお茶の葉を入れて、1時間抽出しました。
瀬戸さん
ちだ
すると、牛は全く飲みませんでした。
瀬戸さん
ちだ
ぬるま湯だとよりお茶の成分が出て、ガブガブいきそうなものですが。
瀬戸さん
ちだ
ちなみに、緑茶を飲むことで牛が体調を壊したり下痢したりとかはなかったんですか?
瀬戸さん
ちだ
- 水出しのお茶は、水よりも多く飲む
- お茶を飲むことで牛への明らかな悪影響はない
ということになりますね。
ちだ
結論から言うと、2年目の長期給与試験で、水出しのお茶を飲んだ牛の方が1日あたり2~3キログラム乳量が多くなりました。
飲水量と乳量には密接な関係があるとされています。水分をたくさん摂取した結果、乳量も増加したと考えられます。
瀬戸さん
ちだ
当初想定してたストレスの緩和効果というのはいかがでしたか?
瀬戸さん
ちだ
水をお茶に変えるコストなどはいかがでしょうか。
こちらも結論から言うと、かかる費用も考慮した「所得」は1日1頭あたり141円のプラスになります。
搾乳頭数40頭規模だと、1日あたり5,640円のプラスです。
瀬戸さん
※ 研究時のエサ代をもとにした場合。
ちだ
すごい!!
お茶やお水関係なく牛がたくさん水分を摂取するため、水と緑茶との差が出ないことがわかっています。
ですので、必ずしも毎日プラスの影響が出るわけではないというところは注意が必要です。むしろ、あまりに暑い時期はお茶代分マイナスになる可能性もあります。
瀬戸さん
ちだ
- 水出しにする
- あんまり暑すぎると水と差がなくなる
ということですね。
水からお茶に変えると40頭で年間200万円プラス……パワーワードですね。
牛はおいしいから、お茶を飲む!?
ちだ
だけど、水よりもお茶をたくさん飲む。
たくさん飲むから、お乳も出る。
じゃあ、なんで水出しお茶を牛は水よりもたくさん飲むんですか?
ただ、仮説としては「牛は水出し緑茶の味が好き」ということです。
もっというと、水で抽出されるアミノ酸の味が好きということです。
なので、出がらしや、渋みが多く出る条件では効果がないと思います。
瀬戸さん
ちだ
なので、「飲料に適さない水をどうやって飲ませるか」ということを考えます。
瀬戸さん
ちだ
日本とは状況が違いますね。
しかし、今回の研究で「いかにおいしく水分をとらせるか」ということの重要性を実感しています。
瀬戸さん
ちだ
おいしく飲んで、たくさん牛乳を出してもらう
という点にもまだ余地があったんですね。
今後の展開
ちだ
瀬戸さん
ちだ
これを研究当時の金額で販売できればお茶屋さんには利益が出ます。
瀬戸さん
ちだ
誰も損をしない! win-winですね!!
まとめ
牛がお茶を飲むなんて、信じられませんでした。
ところが実際は水出し緑茶を水よりも好んで飲み、さらに乳量も増加するという結果でした。
おまけに、お茶屋さんにとってもプラスになるというから驚きです。
お茶を摂取することによる牛へのマイナス影響は確認されなかったということなので、酪農家さんにとってもお茶屋さんにとっても良い研究結果ではないでしょうか。
また、今までの酪農業界にはなかった
「牛においしく水分をとらせる」
という新しい視点が、今後どのように浸透していくのかとても楽しみです!
興味がある方は、静岡県畜産技術研究所へ!
担当:瀬戸さん
連絡先:
メール takahiro1_seto@pref.shizuoka.lg.jp
電話 0544-52-0146