播種・育苗
播種(はしゅ)・育苗で大切なのは「温度管理」「徒長を防ぐ」の2点です。特に春の育苗については温度管理が重要になります。発芽の最適な温度は28℃、発芽後は最低地温20℃、最低気温16℃、日中の最高気温25℃を目標に温度管理を行います。本葉が2.5枚になったころを目安に12センチポットに移植しますが、移植後は定植後の管理温度(最低地温15℃、最低気温10℃)に向けて1週間に1℃ずつ温度を下げ、徐々に低温に慣らしていきます(図1)。
一方、高温期の育苗では徒長しやすいので、その日必要な分だけ水やりし、夜間に水を残さないようにします。また、株が混みあってきたら早めに株間を広げ、風通しのよい環境で育苗しましょう。
畑の準備
特にハウス半促成栽培や露地夏秋栽培では地温を確保するため、マルチングなど畑の準備を早めに行います。高温期の抑制栽培では乾燥に注意し、適湿な土壌水分で気相ができるようにしておくことがポイントです。肥料は10平方メートル当たり窒素50~150グラム、リン酸150~200グラム、カリ100~150グラムとなるよう施します。有機質肥料を入れておくと、長い肥効があるうえ土質の改善にも効果がありおすすめです。また、石灰でpHを調整し、土壌が酸性に傾きすぎないようにしておきましょう。
定植
定植後スムーズに活着させ、いかに根をしっかり張らせるかが上作のための最大のポイントです。定植時には根鉢が崩れないようていねいに扱い、やや浅植えにすることで、できるだけ根が深く張るようにします。定植前後に発根促進剤を施用してもよいでしょう。また、先述した定植後の温度管理はもちろん、土壌の乾湿の差が少なくなるよう水分管理を行います。
定植後の管理
定植後の管理で最も優先順位の高い作業は「芽かき・誘引」と「病害防除」です。適切な栄養成長をしていれば、わき芽は小さいうちに除去するのが基本です。また、トマトの成長点が下を向いたり、主茎が折れ曲がったりすると草勢が落ちるので、早めの誘引を心掛けましょう。
病害については、予防が重要です。古くなった下葉は摘葉することで風通しをよくし、花がらや葉先が枯れた部分は灰色かび病が発生しやすくなるので、除去することが病害予防に効果的です。害虫であるコナジラミやタバコガなどの幼虫は、発生初期の対応が大切です。できるだけ過繁茂にせず、ハウス内外の雑草なども極力抜き取りましょう。
追肥
果実が肥大してくると、草勢が弱くなってきます。栄養成長と生殖成長のバランスを保つため、大玉トマトでは3段開花、ミニトマトでは4段開花のころより、段が増えるごとに液肥の場合窒素成分量で10平方メートル当たり10グラムを施します。
ブリーダーのおすすめ! 直売所これが定番品種
トマトの直売所出荷の強みは何といっても完熟出荷で「真っ赤でおいしい」商品を提供できることではないでしょうか。大玉トマトのおすすめ「桃太郎8」は糖度が高いだけでなく、うまみ成分であるグルタミン酸含量が多いことも特長です。草勢が強く安定し、暑い夏を乗り越えられるスタミナがあります。また、よく茂る葉が果実を強い直射日光から守るための天然の日傘となり、盛夏期でも高品質のトマトを収穫できます。
「桃太郎ネクスト」をおいしく作りこなす
安定したスタミナで促成栽培に向く「桃太郎」として2018年に発表されたのが、「桃太郎ネクスト」です。果実は硬玉(かただま)で、色付いた状態で収穫しても店もちがよく、おいしいトマトです。
「桃太郎ネクスト」の大きな長所でもある強い草勢ですが、生育初期は注意が必要です。元肥は控え、若苗定植を避けて1段目の果実が肥大するまでに株が暴れないようにしましょう。下の圃場写真のように草勢が強くなりすぎてしまったなと思ったら、花房のすぐ上の、花房と反対側へ伸びている葉を摘葉する、灌水(かんすい)量を減らすなどの対応で草勢を抑えましょう。
執筆:栽培基礎講座・タキイ研究農場 中山健治(なかやま・けんじ)
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