作れば売れる国産アボカド 柑橘栽培からの移行で過疎地の生産者を救う

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作れば売れる国産アボカド 柑橘栽培からの移行で過疎地の生産者を救う

作れば売れる国産アボカド 柑橘栽培からの移行で過疎地の生産者を救う
最終更新日:2019年11月12日

愛媛県松山市ではアボカドの産地づくりを進めており、海岸部の高浜地区や伊予灘沖に浮かぶ忽那(くつな)諸島で、現在約150軒の農家がアボカドを作っています。市が苗の分譲を始めた2008年より、アボカド栽培に取り組み始めた柑橘(かんきつ)農家の中村一良(なかむら・かずなが)さんを忽那諸島の怒和島(ぬわじま)に訪ね、11年目に突入したアボカド栽培について伺いました。

温暖な気候の怒和島でのアボカド栽培

怒和島の山頂より山口方面を望む。下に見えるのは元怒和の集落

松山市の高浜港から高速船で約1時間。忽那諸島の怒和島には、約160世帯、270人ほどの人々が住んでいます(2019年11月時点)。松山市に属していますが、山口県の屋代島や広島県の倉橋島がすぐ近くに見え、3つの県境に近い穏やかな瀬戸内の海に浮かんでいます。

冬でもめったに氷点下になることはない島の温暖な気候を生かして、忽那諸島の島々では10年ほど前からアボカドの生産が行われています。ここ怒和島でも30軒あまりの柑橘農家のうち、1割ほどの農家がアボカド栽培に取り組んでいます。

松山市アボカド苗分譲1期生の中村さん

柑橘栽培歴50年以上のベテラン柑橘農家の中村さん、御年71歳。松山市がアボカドの産地化をめざし苗の分譲を始めた初年度に、台風被害で枯れてしまった柑橘の木の植え替えを検討していました。それまでアボカドについては、食べたこともなく全く知らなかった中村さんですが、タイミング的にぴったりだったことから興味を持つように。そして2008年の春、10本の苗を市から譲り受けてアボカド栽培をスタートさせました。

11年目に入った2019年の現在は、柑橘畑を区切った約30アールのアボカド用園地に、ベーコン、ピンカートン、フエルテ、福徳利(ふくとくり)の4種類、合わせて約100本のアボカドの木を生育しています。

気温が2℃以下になると枯れてしまう、寒さに弱いアボカド。太陽の光がいっぱいにふりそそぐ南向きの山の斜面に植えられています。標高60メートル以上の場所ではアボカドの苗は育たなかったとのことで、それより低い場所に栽培しています。

5年の試行錯誤ののち、うまく冬越しできるように

11年前の初定植以来、毎年10本程度のアボカドの苗木を植え続けている中村さん。最初の数年はコツがわからず、せっかく10本植えても翌年の春までには7、8本が枯れてしまう状態を繰り返していました。また、枯れずに冬を越した木も成長がとても遅く、やきもきする日々が続いたのだそうです。

毎年試行錯誤の連続で、ようやく5年目になった頃に怒和島の気候や土壌に合った栽培方法がつかめるように。それからは苗を枯らすことなく、5年木(植えてから5年目の木)から収穫できる栽培方法で順調に木を育てています。

年ごとにどんどん大きくなるというアボカドの木は、放っておけば15メートルを超す巨木に成長してしまいます。大木になるほどに実をつけるとのことですが、収穫方法も難しくなるので、大きくなっても脚立で収穫できるくらいの高さになるように、中村さんは剪定(せんてい)を入れています。

ベーコン種の実

アボカドというと、スーパーでよく目にする黒っぽい色の果実をイメージしますが、あれはメキシコ産のハスという品種。ベーコン、ピンカートン、フエルテなどの品種を主力とする国産アボカドは緑色をしています。

10月下旬の取材時には、11~12月頃に収穫を迎えるというアボカドの緑の実が各木に実っていました。

面白いことに、アボカドの実は木になったままの状態では熟度が進まず、木からとることで熟成に向けてのスイッチが入るのだそう。

「去年は12月に全部とっちゃったんだけど、3月くらいまでは収穫できるらしいんだよね。だから今年は12月には全部収穫しないで、いくつかは木なりの状態で残しておいて、いつまでもつのか実験してみようと思っているんだ」と中村さん。

木からとった後は追熟が進み、1週間くらいで食べ頃を迎えます。が、完熟しても同じ緑のままで色の変化はありません。

そのため中村さんのところでは、熟度を計るためにこのように、枝を少し付けた状態で出荷しています。実を触ってみて軟らかくなって、枝がポロッと取れたら、食べ頃のサイン。

食べ頃を迎えた中村さんのベーコン。スーパーで売っているメキシコ産のハスよりクリーミーで濃厚な味わい

寒さに弱いアボカドの中でも、一番弱いとされるピンカートン

一昨年の冬は温暖な松山市では珍しく、雪が降るほどの寒い冬で、残念ながら四国本土に植えられていたピンカートンの木の多くが枯れてしまったのだそう。ですが、怒和島ではそれほどの寒さにはならず、中村さんのピンカートンの木は1本も枯れることなく、無事に冬を越しました。

このことから、今後は中村さんはピンカートンをメインに育てていこうと思っています。

中村さんのアボカド畑から望む瀬戸内の穏やかな海

アボカド栽培のメリット

アボカド品種の中では比較的寒さに強いとされるベーコン

寒さに弱いだけで、他の面に関しては柑橘より手間のかからないアボカド。水やりや肥料を与えるのも柑橘よりも少ない頻度で済み、さらによいことに、柑橘よりもよい値段で売れるのだそうです。

高級柑橘「紅まどんな」の畑だった場所。マキの防風垣に囲まれている

中村さんは高級柑橘の「紅まどんな」や「甘平(かんぺい)」も栽培していますが、水やりの調整が難しい上に害獣被害も多く、手間がかかる割には思うような収入にはならないのだとか。

「紅まどんなは、手間がかかりすぎるからやめたんだ。代わりにアボカドを植えようと思ってる。国産アボカドは作ってるところが少ないから、作れば作っただけよい値段で引き取ってもらえる。柑橘はよいものを作っても、供給が多すぎるのか、なかなかこちらの思うような値段で売れないことも多いよ。だけど、アボカドだったらそんな心配もしなくて済むからね」(中村さん)

柑橘栽培からアボカド栽培へ

アボカド栽培を始めてから最初の5年間は苦労した中村さんですが、11年目に入った現在は、松山市内ではベテランの域に入るアボカド栽培者。アボカド各種の性質を把握し、種から苗を育て、順調にアボカドの園地を拡大しています。

風よけに覆われたアボカドの2年木

寒さに弱く、小さなうちは風が当たらないようにしたり、それなりの世話は必要ですが、根付いてしまえば水やりや肥料の手間が柑橘よりかからず、世話が楽なアボカド。

怒和島は人口減少が進む過疎の島で、島内には小さなよろず屋と郵便局があるだけで、スーパーやコンビニはもちろん、保育園や小学校もありません。中村さんの3人の息子さんのうちの2人は結婚し、島外で世帯を持っています。

「今は次男が島に残ってくれているけど、結婚したらやはり島外に住まざるを得ないんだよね。島には学校どころか、病院もないし。だけど、アボカドなら週に1回水をあげるだけですむから、将来的に次男が松山に出たとしても続けられると思ってるんだ」と中村さん。現在はアボカド3割、柑橘7割の園地ですが、将来を見据えて徐々にアボカドにシフトしています。

アボカド栽培は過疎に悩む怒和島の柑橘農家にとって、経済的だけでなく将来への希望を見出す救世主にもなっています。

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