播種(はしゅ)
露地栽培での定植時期は、遅霜の心配がなく地温を15℃以上に確保できる5月上中旬ごろです。播種は、その約65日の育苗期間をさかのぼった3月上旬に行ってください。定植株数は10平方メートル当たり約10本ですので、発芽や苗のそろいを考慮して1.5倍程度のタネをまくとよいでしょう。昼夜とも25~30℃に保つと、6〜7日で発芽がそろいます。
育苗
発芽後の温度は、日中27〜28℃を目標に管理します。夜温は定植後の低温に慣らしていくため、発芽から移植までは18→16℃、移植後は16→14℃、定植の1週間前には14→12℃と徐々に温度を下げてください。播種後25~30日、3枚目の本葉が展開し始めたら移植時期です。タキイの「育苗培土」などを使用し、12~15センチポットに移植します。かん水はできるだけ午前中に行い、夕方には土の表面が乾く程度の量を与えてください。
初心者は、ポット苗を購入するのもよいでしょう。ホームセンターなどで購入される場合は、「葉が黄色くなっていない」「枝が太く、茎が直立している」苗を選びましょう。
畑の準備と定植
元肥として、10平方メートル当たり成分量で窒素:リン酸:カリ=200:300:200グラムを目安に施します。ピーマン類は根が浅く、過湿や乾燥を嫌うので繊維質を多く含んだ完熟堆肥(たいひ)などを利用し、保水性と通気性のバランスのよい畑づくりを心掛けてください。また若苗を定植すると過繁茂になりやすく、老化苗では活着不良になりやすいので、1番花開花直前の苗を植えましょう(図1)。
整枝
露地栽培では、1番花より下のわき芽をすべて取り除き、それより上は、枝が混みあってきた時にふところの細い枝を中心に間引きし、採光、風通しをよくします。誘引はフラワーネットを横に張り、各穴に枝を通す方法が簡易的です(図2)。
追肥
1番果の収穫はじめのころから、追肥を行います。2週間に1回、10平方メートル当たり窒素量で30グラムを目安に粒状肥料を株元から20~30センチ離した地中15センチぐらいに施します。窒素15%を含む肥料の場合、軽くひと握りを2株に分けて施すとよいでしょう。液肥の場合には、10平方メートル当たり窒素量で10グラムを週に1回与えます。
収穫
1果当たりの果重30グラムを目安に、2~3日間隔で収穫してください。収穫が遅れると草勢が弱くなり、収量減少の原因となるので注意します。また、草勢が低下してきたら収穫果実のサイズを小さめにしたり、摘果により着果数を制限したりすることで草勢の回復を図ります。
栽培Q&A
Q. パプリカの果実はいつ色が変わりますか?
A. パプリカは開花後60日前後で着色します。
普通ピーマンの収穫期が開花から20~30日ほどなので比べると長く感じますが、気長に待ちましょう。また、着色時期は積算温度により決まるので、ハウス栽培の場合は夕方の換気温度を26~27℃と高めに設定すると収穫が早くなります。
ブリーダーのおすすめ! 直売所これが定番品種
直売所で手に取ってもらい、購入に結びつけるためにはスーパーに並ぶものと差別化を図ることが重要です。特に、「見た目」と「味」が大きな要素となります。そこでおすすめするのが通常の中型ピーマンよりボリューム感のある中獅子型ピーマン「エース」です。「エース」は果皮につやがあるのが特長で、果肉が厚く食べ応えがあり、苦みが少なく甘みが感じられます。さらに生食でもおいしくいただけるため、サラダなどにピッタリです。
また、この品種は節間が短く、草丈が低いのが特長で密植栽培することが可能です。同じ面積でもう1品種欲しいといった時にもおすすめです。そして、トンネル早熟栽培を行うことで単価の高い時期(露地夏秋の収穫ピークが来る前)に出荷が可能となります。
直売出荷でカラーピーマンを作りこなす~赤黄ミックスを出荷~
直売所出荷向けとしておすすめなのが早生性のあるカラーピーマン品種「フルーピーレッドEX」と「フルーピーイエロー」です。これらの品種は短節間でコンパクトな草姿ですので、栽植密度を高めることで収量アップが可能です。早生性を生かして、高単価の時期の出荷を狙うこともできます。色鮮やかなカラーピーマンは直売所で目を引くこと間違いなしです。
栽培管理のコツは草勢の管理をしっかりと行うことです。カラーピーマンは収穫までの日数が長いため、栽培初期に着果負荷に耐える株を作ることがポイントです。草勢を判断しながら、低段の花を摘花し着果負担を軽減させましょう。
執筆:(栽培講座・タキイ研究農場 夫津木大輔(ふつき・だいすけ)
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