畑の雑草図鑑〜ホトケノザ編〜【畑は小さな大自然vol.61】

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畑の雑草図鑑〜ホトケノザ編〜【畑は小さな大自然vol.61】

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畑の雑草図鑑〜ホトケノザ編〜【畑は小さな大自然vol.61】
最終更新日:2019年12月03日

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。春や秋になると畑ではさまざまな雑草の花が咲きますが、その一つにホトケノザという紫色の花を咲かせる雑草があります。雑草というと野菜の生育の邪魔になるため、全て根ごと抜き取るのが常識とされていますが、ホトケノザの場合、野菜とうまく共生させていくことをオススメしています。ホトケノザを生かすことで、土の状態が良くなり、他の雑草を防いでくれるなどさまざまなメリットがあります。今回はそんなホトケノザの生態や付き合い方についてご紹介しますので、ぜひ畑のホトケノザをうまく活用してみてください。

ホトケノザとはどんな雑草?

ホトケノザはシソ科の一年草で、可愛い薄紫色の花を咲かせます。基本的には秋に芽を出し、越冬して春に花を咲かせますが、秋の終わり頃に咲くこともあります。ガクの部分の形が仏様が座っている蓮(はす)の花のように見えることから「仏の座」と呼ばれているようです。

ホトケノザと聞くと、春の七草を連想される人もいると思いますが、七草に出てくるホトケノザは正式には「コオニタビラコ」という別の雑草になります。この記事で紹介するホトケノザは食べてもおいしくないようですので、ご注意ください。

春の七草で出てくるホトケノザはコオニタビラコ。黄色い花で見た目が全く異なる

ホトケノザには咲かない花もある

ホトケノザはいくつかの花が同じ場所から咲きますが、よく観察すると咲かずに終わる花もあります。咲く花は開放花と呼ばれるのに対し、咲かない花は閉鎖花と呼ばれます。一見、閉鎖花は欠陥のある花なのかなと思ってしまいますが、実はちゃんと受粉してタネを作ります。開放花はミツバチなどの働きによって他の株と受粉しますが、閉鎖花はほとんどそのまま親の遺伝子を受け継ぐことになります。さまざまな遺伝子を持っていた方が環境に適応できる確率が上がりますが、環境の変化がない場合は、順調に生き残った親の遺伝子をそのまま受け継ぐ方が、エネルギー消費も少なく、ほぼ確実に子孫を残すことができるわけです。

ホトケノザはアリにタネまきしてもらっている?

エライオソームの付着した種子(ホトケノザではない)を運んでいるアリ

ホトケノザのタネにはエライオソームという物質が付着しているものがあります。このエライオソームの主成分は脂肪酸や糖、アミノ酸などであり、これによってアリを呼び寄せ、巣まで持ち帰ってもらうことでタネをより広範囲にばらまいていると言われています。このようなアリを利用してタネによる繁殖を行うものをアリ散布植物と言い、ホトケノザ以外にもオオイヌノフグリやスミレなどがこれに含まれています。

またホトケノザには開放花と閉鎖花があるというお話をしましたが、実はエライオソームの量や質を調節することで、開放花にできたタネの方をより積極的に持ち運ばせているようです。開放花にできるタネは閉鎖花にできるタネよりも遺伝的な多様性を持っていますので、別の場所に移動した時にも生き残る可能性が高くなります。賢いですよね。植物は動物のように動いて環境を自ら選ぶということができないので、少しでも生き残る確率を上げるためにさまざまな工夫をしていることがわかります。

ホトケノザが生える地力のレベルは?

畑にどんな雑草が生えているかを知ることは、その畑の状態を推測する手助けとなります。雑草から推測することのできることの一つに、その畑の地力(ちりょく)があります。地力とはその土地が持つ植物を育む力のことで、地力が上がってくると、あまり手をかけなくても野菜は健康的に育ちやすくなります。
 
地力が高いということは土壌の生態系が豊かになっているということを表しますので、基本的にはその地上に生える雑草や虫などの生態系も豊かになり、多様性が高い状態を表しています。そのため基本的には地力が低い場所では一部の雑草だけが目立ち、地力が高い場所ではより多様な雑草が見られます。
 
下の表は畑の地力を診断するときに、僕が指標として使っているものになります。地力の段階をレベル1からレベル4に分け、それぞれの段階を見分ける指標となるような雑草を記載しています。

地力 特徴 生えやすい雑草 適した野菜
レベル4 ほとんどの野菜が少肥料でも育つ ハコベ、ホトケノザ、オオイヌノフグリなど ナス、ピーマン、キャベツ、ハクサイ、タマネギなど
レベル3 肥料を入れることで、大体の野菜の栽培が可能 スベリヒユ、カラスノエンドウ、ノボロギク、ツユクサなど ミニトマト、キュウリ、ニンジン、ダイコンなど
レベル2 栄養の絶対量が少ない スギナ、ハハコグサ、シロツメクサなど サツマイモ、ダイズ、エダマメ、ジャガイモなど
レベル1 土が硬く痩せている セイタカアワダチソウ、ヨモギ、チガヤなど ヒエ、アワ、タカキビなど

レベル1から4に上がっていくに従って、生える雑草が追加されていき、種類が増えていくという風に考えてください。地力レベル4の段階ではレベル1〜3の雑草が全く生えなくなるというわけではなく、その割合が減っていきます。全体の傾向としては、多年生雑草よりも一年生雑草が生えやすくなり、多くの野菜とも共生しやすい雑草が増えていきます。

この診断方法についてや地力レベルについての詳細は、「雑草で診断!その土で野菜は育つのか?【畑は小さな大自然vol.7】」の記事をご覧ください。ただしこの診断方法は学術的に確立されたものではなく、僕自身やさまざまな農家の経験則による分類ですので、あくまでも参考程度にしてください。
 
さて、肝心のホトケノザについてですが、こちらは地力レベル4の時に生えやすい雑草として分類しています。他にも地力レベル4に分類しているハコベやオオイヌノフグリなどとともに、ホトケノザの割合が増えてきた畑では地力がだいぶ上がっており、さまざまな種類の野菜が無理なく育ちやすい段階にあると見当をつけることができます。

ホトケノザとの付き合い方

ホトケノザと共生する白菜

畑の雑草対策というと、全て根こそぎ取ってしまうというイメージが一般的かと思いますが、雑草の種類によって応じ方を変えることをおすすめしています。特に今回ご紹介しているホトケノザなどの地力レベル4で生えやすい雑草は野菜とも共生しやすく、むしろ抜いたり刈らない方がメリットが大きいと考えています。具体的なホトケノザとの付き合い方について、ポイントを2つご紹介します。

邪魔にならないホトケノザは極力残す

ホトケノザに囲まれているサニーレタス。レタスが十分に育っていれば、ホトケノザに負けることはない。

ホトケノザは野菜の邪魔にならない範囲で、できるだけ取らずに残しておくことをオススメしています。その理由は以下の2つです。

①野菜と共生しやすい
②他の雑草が生えるのを抑えてくれる

まず、ホトケノザは背があまり高くならず、根の張りも弱いので、畑の野菜の生育の邪魔になりません。邪魔にならないだけでなく、地下の微生物ネットワークを通じて、栄養や情報の交換を行うなど野菜と協力関係を築くこともあると考えています。

またホトケノザは秋または春に花を咲かせ、そのあとはタネをつけて枯れていきます。逆に多くの野菜は春か秋に種まきや苗の植え付けが行われるため、ちょうど成長のタイミングが入れ違いとなります。つまり成長のための養分やスペースの奪い合いが起こりにくいのです。野菜が日陰にならない程度であれば、刈らずに手で押さえつけて倒しておくだけでも十分です。この時にホトケノザを抜いてしまっていると、そこから他の雑草が芽を出して、野菜との競い合いになってしまいます。野菜の生育に邪魔にならない限りは、できるだけホトケノザは残しておき、タネをそこに落とさせることで、また翌年もホトケノザが生えやすい環境になります。特に冬はホトケノザを生きたまま残しておくことで、土の乾燥や凍ることを防いでくれます。

根は抜かずに根元を刈り取る

野菜がまだ小さくホトケノザの日陰になりそうだったり勢いに負けそうな時、密集しすぎて風通しが悪くなりそうな時などは、やはり刈り取った方が良いです。ホトケノザに限ったことではないですが、除草する時は基本的に根を残して地上部のみを刈り取ることをオススメしています。根を残すことで、根は微生物に分解されて良い土の素となり、根が通っていた穴はトンネルのように空洞として残ることで、土の中の通気性・排水性を良くします。つまり雑草の根が土を耕してくれているわけです。これを根ごと抜いてしまうと、根があった穴は潰れ、時間が経つと土が締まって硬くなっていきます。詳しくは「雑草は根から抜いちゃダメ!? 草刈りの新常識【畑は小さな大自然vol.4】」の記事をご覧ください。

ホトケノザは野菜とうまく共生させよう

ホトケノザは野菜の生育の邪魔になりにくいため、基本は野菜とうまく共生させていく方向で考えましょう。そして野菜の生育の邪魔になりそうな部分のみ、最低限の範囲で刈り取るようにします。最初はこの加減が分かりにくいかもしれませんが、経験を積むごとに感覚がつかめてきます。小さなかわいらしい花で見た目にも楽しませてくれますので、ぜひホトケノザを畑づくりにうまく生かしてみてください。

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