アシナガバチは益虫?
アシナガバチは怖い見た目をしており、毒針を持っているため、恐れ嫌われることも多い虫です。しかし、実は畑の害虫として厄介なチョウやガの幼虫であるイモムシを食べてくれる益虫でもあります。昆虫界のピラミッドでは頂点に近い存在ですので、アシナガバチが畑にいることでその生態系は安定しやすくなります。畑の害虫対策として強い味方になってくれるかもしれません。むやみに怖がるだけでなく、その性格や生態についてぜひ知っておいてほしい昆虫です。
アシナガバチは料理上手?

アオムシで肉団子を作ろうとしているアシナガバチ
アシナガバチはイモムシを捕食しますが、すぐにそこで食べるのではなく、幼虫の餌として持ち帰ります。この際には幼虫が食べやすいようにわざわざ硬い部分や内臓を取り除き、かみ砕いてから肉団子を作ります。子供のために離乳食を作る母親のようで、この様子を見ると愛着が湧いてきます。イモムシだけでなく花の蜜を吸っていることもあるので、完全な肉食というわけではないようです。
アシナガバチの活動時期

サナギが羽化し終えると捕食活動も少なくなるため巣に残ることが多く、一気に数が増えたように見える
アシナガバチは4〜5月頃になると女王蜂が一人で巣を作り始めます。そこから働き蜂が生まれ、5〜6月頃の繁殖期には巣の幼虫にエサを持ち帰るために、この働き蜂が捕食活動を始めます。営巣活動は9月頃まで行われますが、全ての幼虫が羽化すると終了するため、捕食活動も一旦落ち着きます。捕食活動しなくなると巣にいるアシナガバチの成虫の数も多くなるため、見た目には一気にアシナガバチが増えたように見えて、ギョッとします。本格的な寒さがやってくる時期になると働き蜂たちは寒さに耐えきれず死んでしまいますが、女王蜂は暖かい場所を求めて場所を移動し、単独で越冬します。
アシナガバチの天敵はスズメバチ

スズメバチはアシナガバチよりも太くて大きい。その中でもヒメスズメバチは尾の先端が黒いのが特徴
アシナガバチの天敵はヒメスズメバチです。と言ってもアシナガバチの成虫を食べる訳ではなく、巣を襲ってサナギや卵を食べます。ミツバチは巣を襲うスズメバチに対して集団で群がって対抗しますが、アシナガバチは基本的には対抗しないようです。戦わないこともまた生存戦略の一つなのかもしれません。
アシナガバチの危険性
アシナガバチはスズメバチなど違って、基本的には温厚な性格です。そのためこちらからアシナガバチや巣を攻撃したりしなければ、向こうから攻撃してくることはありません。畑にいるアシナガバチも基本的にはこちらを警戒する様子も特になく、自由に飛び回っています。とは言ってもやはり毒針がついているため、もし刺されてしまうと強い痛みとともにアレルギー反応を起こして腫れていきます。アナフィラキシーショックを起こす場合もありますので、一度刺されたことがある人は特に注意が必要です。
アシナガバチを発見した時はどうすればいい?
アシナガバチはこちらが下手に刺激しなければ近寄っても向こうから攻撃してくることはありません。そのため畑でアシナガバチを発見しても、手で振り払ったりしないようにしましょう。また5〜9月頃の巣の中に幼虫がいる時期は特に、巣を攻撃されると反撃してきますので注意します。
実は僕の妻が昔、アシナガバチに刺されたことがあります。とても痛いらしく、涙がボロボロと流れていました。この時は畑の草刈りをしており、アシナガバチの巣の存在に気づかずに刺激してしまったようです。それ以前に僕が畑に来た際に、この巣の存在には気づいていたため、目立つように印をつけておくべきだったなと反省しました。巣を発見したら、他の人や自分がうっかり触ってしまわないように、近くに目印をつけておくとよいでしょう。また万が一に備えてポイズンリムーバーなどの、刺し傷から毒を吸い出す道具を用意しておくと安心です。
また益虫とはいえ、小さなお子さんがいる家庭などでは不安もあり、巣を除去したいというケースもあるでしょう。冬の間に女王蜂もいなくなり、空になった巣を除去するのであれば簡単ですが、それ以外の時期に自分で除去を行うのは大変危険ですので、業者に依頼することをオススメします。