課題にマッチするシステム その導入フローとは
アグリファンド石川の舘喜洋副会長が冒頭挨拶(あいさつ)し、「『自社の課題に必要なシステムは何か』を考えて選ぶと結果に結びつきやすい。実際に体験しながら自社に合うものを見つけて。メーカーと良い関係性を築きながら声を届け、石川県内だけでなく、日本全国の農家にとってより良い経営環境を作っていければ」と、参加者に呼び掛けました。
金沢市で米、レンコンを主に生産する農事組合法人One(ワン)の宮野義隆副代表が、「生産管理システム導入の目的や課題、導入後の変化」をテーマに講演し、自社への導入事例を共有しました。
宮野さんは、作業効率の向上や有望な人材の確保を当時の課題として挙げ、「従業員満足度を上げる」ことを目的に据えて、システム導入を通して解決した経験を語りました。
宮野さんはまず従業員から課題を収集。「肥料設計の良し悪しが客観的に判断できない」という意見をきっかけに、最適な施肥量をIT制御で自動調整する「可変式施肥田植え機」を使い、14%の減肥に繋げました。
具体的な導入費用にも触れ、「数値での効果検証ができ、更なる改善に繋げられるので、コストに見合う価値がある」と感想を述べました。
また、他社の営農システムを使って作業フローを改善し、労働時間を13%(2016年に導入、2014年比)削減した実績を紹介。「重要なのは、あるべき姿と目的を共有することと、トップがコミットすること。『休みを増やす』『給料を上げる』というような、従業員にとってメリットのある目標の下、主体的に経営改善に臨んでもらえば、面倒なシステム入力作業も継続してやってもらえる。日曜も働きがちだった社長にも『休む意識』を持ってもらった結果、週休2日・年休115日程度は確保できるようになった」と話し、参加者は真剣に聞き入っていました。
マクロな視点で、より良い営農環境を
講演後はメーカーが商品についてプレゼンテーションを行い、説明を聞いて興味を持った企業のブースへ参加者が移動。実際に操作したり担当者と意見交換を行ったりして、複数のサービスを比較検討しました。
熱心に質問をしていたブドウ農家の竹中浩記さんは、「いま使っている生産管理アプリは、天気を手動で記録する仕様。予報サイトなどと連動して自動入力したり、圃場の写真を登録することで必要なときにすぐ前年を振り返る機能を付けられないかと相談しました。現状は複数のシステムを併用する必要があるので、(情報を)一元管理できるものが欲しいです」と話しました。
アグリファンド石川会長の竹本彰吾さんは、「サービス紹介のみでなく、企業と農家間の意見交換、農家同士での情報交換の場を作りたくて開催しました。単に批判をするのではなく、『A社とB社のサービスが連携されると、より使い勝手がいい』『スタンダートが一本化されない世界は、スマート(農業)とは呼べないよね』というマクロな視点を持った農家が集まって発信すれば、(業界に)大きなインパクトを与えられるのでは」と期待しました。
アグリファンド石川の会員は、能登・金沢・加賀の各地区でプロジェクトチームを発足し、事業承継や生産管理システムなどのテーマを掲げて、定期的に勉強会を行っています。