梅の品種
主要な梅の品種を紹介します。それぞれ役割が異なります。
実梅
果実を収穫することを目的にした品種です。
鶯宿(おうしゅく)
美しい桃色の花を咲かせ、青梅として大粒の実を多収できる。ヤニ果の発生が多い(対処法は後述)。
南高
白い花が咲く。皮が薄く軟らかい、いわゆる“ほたほた”の梅干しができるため、今も変わらず一番人気品種。
白加賀
白い花。南高と並び称される品種。大粒多収で、南高よりすこし皮が厚く梅干し以外の用途にも向く。花粉を持たないため授粉はできない。
豊後
アンズとの交配種。桃色の花が美しく、超大粒の梅がなる。一粒で丼2杯のごはんを食べられるくらいの梅干しになるため、どちらかというと梅酒などの加工向き。
甲州最小
小梅。梅の実をならせるためには他の木からの受粉が必要だが、小梅は花粉を大量に持っているので、梅園には授粉樹として小梅が必ず植えられる。
花梅
花の鑑賞を目的にした品種で、種が大きく果実の可食部がほとんどありません。
鹿児島紅
数ある花梅の中でも、実梅にはない真っ赤な色を生み出す緋梅(ひばい)性の品種。立ち止まらずにはいられない目を引く美しさ。
しだれ梅
しだれ梅は枝垂(しだ)れる品種の総称で品種名ではないが、近年庭梅として親しまれることが多くなった。しだれる姿に風情を感じる日本人ならではの楽しみ方ができる。枝の性質が違うので剪定(せんてい)方法が少し異なる。
梅の植え付け
植え付け時期は11~12月、凍害の恐れがある寒い地域では3月頃の春植えを推奨します。
大きめの鉢やプランターでも、小ぶりではありますが、盆栽感覚で充分に楽しめます。
50センチほどの穴を掘り、堆肥(たいひ)20キロと石灰500グラム、肥料1キロ程度(窒素-リン酸-カリが8-8-8の場合)をよく混和して埋め戻します。深植えにならないように気を付けて、根をできるだけ四方に伸ばした方が良いです。
鉢植えの場合は、市販されている花木用の土(なければ野菜用の培養土でもかまいません)7割に鹿沼土を3割と肥料を一握り混和して植え付けましょう。
添え木にゆるく結び、接ぎ木部分から10芽くらいまで切り詰めます。
梅の剪定
梅の栽培管理と言えば剪定がそのほとんどを占めます。梅の生理を理解して剪定に挑みましょう。一つ一つの木がそれぞれに個性を持っており、これが正解、というものがないのが難しいところでもあり、また楽しいところでもあります。
梅の木の生理としては、落葉した12月に切るのが最も適切です。ただし、花梅の場合は、鑑賞して楽しむための花を開花直前に切り落とすようでは、なんのために植えているのか分からないため、2~3月の開花終了直後、もう花は楽しんだな、というタイミングで切るのが一般的です。
幼木期の剪定
植え付け2~4年目の剪定、仕立てが、将来の木の骨格を決定付けます。植え付け後にしっかり切り詰めておけば、四方に強い枝が広がっていると思いますので、立地スペースに応じた木の伸びる方向を考えてひもや添え木によって方向を矯正します。
枝がたくさん出ていると切るのが惜しいですが、将来の骨格を優先して残し、真上に立ち上がった枝(立ち枝)は除去します。メインになる主枝は2~4本が適切です。
そして伸ばしたい枝の先端を切り詰めるのですが、詳しくは後述する切り方にならってください。
成木の剪定
梅の木の剪定でまずやるべきことは、立ち枝の除去です。真っすぐ上に立ち上がっている立ち枝を根元からバッサバッサと切り落とします。
植物は高い位置に優先して養分を送る性質があるため、これを残していると、立ち枝ばかりが成長し、肝心の伸ばしたい枝が弱り、将来的には枯れてしまうこともあります。立ち枝には、葉はよく茂りますが、花も実もあまり期待できないので問答無用で切り落としましょう。
余力があれば、6月下旬にこの立ち枝だけを切り落としておけば、花の数も実の数も増えますし、冬の剪定がかなり楽になります。
立ち枝を落として幾分すっきりしたところで、細かな剪定に入ります。
基本的には日当たりが良くなるように、太陽の角度を考えながら、日陰になる恐れがある枝を抜いて、まんべんなく日照を得られるようにします。
正直、立ち枝さえ抜いておけば、あとは木の先端部分以外はさほど重要ではありません。日が当たるようであればどんな形でも良いので臨機応変に、どうすればより日当たりが良くなるか考えながら切ってみましょう。失敗しても大勢に影響はありません。
大事なのは、主枝の先端部分。伸ばしたい枝の先端を切り詰めるのですが、木の先端というものは、今は数ある枝の一本ではありますが、将来の骨格を担う部分です。
外芽を先端に残して切除することによって、木は横へ横へと広がっていきます。必ず内芽ではなく、外芽の上で切りましょう。
また、切り詰める長さによって、次の年に出る枝の強さが変わってきます。切り詰めれば切り詰めるほど翌年は枝が強く伸び、長く残すほど翌年の枝の伸張が短くなり、花や実がつきやすくなります。しかしまったく切らないと、枝の根元の方が萌芽しにくくなります。樹勢にもよりますが、木の先端の枝は今年伸びた分の1/4~1/5程度は切ってしまい、強い枝の発生を促しましょう。
今年伸びた1年目の枝と、立ち枝の色を変えてみたら、どこを切れば良いのか分かりやすいですね。
でも皆さんが切らなければいけない木には色が付いていないので、自分で判断して切ってください。
梅の肥料
梅の肥料は、元肥として10月上旬に有機肥料2キロ(8-8-8の場合)、7月に“お礼肥(おれいごえ、おれいひ)”としてお疲れ様の意を込めた追肥を2キロ散布します。
ただし、花や実がならなかった年は、葉が元気なようであればお礼肥は必要ありません。働いていない人にお礼する必要はありません。
栽培カレンダーにあるように、6月に収穫を終えて疲れきった木は、目には見えずとも、7月の盛夏期に来年の花をせっせとこしらえています。7月のお礼肥は、来年の花芽づくりを促す意味があります。
木が古くて元気がない場合は、4月にも500グラムほど肥料をやっておくと良いでしょう。
鉢植えの場合でもタイミングは同じ10月、4月(鉢植えの場合は必ずやりましょう)、7月ですが、鉢の大きさにあわせて減量してください。
梅の病害虫防除
梅の栽培において相談の多い病害虫について、対策とあわせて紹介します。
アブラムシ:5月頃より発生し、すぐに増殖する。モスピラン水和剤などの薬剤が有効。
カイガラムシ:越冬して増殖し、木を枯らすこともある。4月頃ふ化し第一世代が6月に成虫になる。その後も増殖するため、6月にスプラサイド水和剤などで防除、また、越冬中の落葉期にマシン油乳剤を使用。ワイヤーブラシなどでゴシゴシ落としても良い。
ケムシ類:最も多いモンクロシャチホコは、越冬して7月頃産卵する。盛夏期から秋にかけて大量発生しやすい。上述した農薬でも効果があるが、発生初期に枝ごと切り取って撤去するのが最も良い。全体に広がった場合は農薬散布しか手はない。
かいよう病:5月頃に強風が多いと発生しやすい。果実に斑点ができるが、発生してからの防除には抗生物質が必要。開花前の1月に石灰硫黄合剤を散布することで予防できる。
黒星病:かいよう病と似た斑点が出るが、こちらは傷が浅い。スコア水和剤、ストロビードライフロアブルなどが効果的だが、家庭果樹ならもっと安価で手に入りやすいトップジンM水和剤などで対応する方が現実的。
ヤニ果:若木のうちは発生が多い。木や果実からゼリー状の物体が出てくる症状。根本的な対策はないが、ホウ素欠乏になると多発することが分かっている。5月にホウ砂を一樹あたり30グラムほど施用することで改善される。
細かく説明していますが、気安く育てられる樹木なので、気負わず花を楽しもうと思って植えてみてはいかがでしょうか?