土の微生物量を見える化! SOFIX技術とは【畑は小さな大自然・番外編】

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土の微生物量を見える化! SOFIX技術とは【畑は小さな大自然・番外編】

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土の微生物量を見える化! SOFIX技術とは【畑は小さな大自然・番外編】
最終更新日:2020年01月16日

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。作物が育ちやすい豊かな土づくりを行うためには微生物の力が大切になってきます。しかしそれが分かっていても微生物は目に見えないため、実際にはどの程度微生物がいるのか、もっと増やすべきなのか、どんな堆肥(たいひ)を入れるべきなのかが分かりにくく、そこは農家の経験に委ねられていました。これでは安定的・持続的に土づくりを行うことができません。そんな今まで分かりにくかった微生物の実態を、見える化してくれるSOFIX(ソフィックス)技術というものがあるということで、開発した久保教授のもとに取材に行きました。ぜひご覧ください。

■お話を伺った方

久保幹(くぼ・もとき)さん

【プロフィール】
立命館大学生命科学部教授。
研究内容は土壌肥沃(ひよく)度指標(SOFIX)の研究開発、物質循環型有機農業生産技術の確立、植物成長バイオマス・ペプチドの研究開発、土壌環境のバイオレメディエーション、水圏環境のバイオレメディエーション、バイオエネルギーなど。 独自技術SOFIXによって土の健康状態を見える化することにより、安定的な有機農業技術の確立に取り組む。

SOFIX技術の特徴と仕組み

SOFIX技術によって土壌改良を行ったキャベツ畑

──まず、SOFIX技術の特徴について教えてください。

SOFIXというのはSoil Fertile Index、つまり土壌肥沃土指標の略です。土壌が肥沃であるかどうかは、土壌の化学的性質、物理的性質、生物的性質の3つの要素が大切となるのですが、今までの土壌分析では土の化学的性質を調べるものが中心でした。我々は生物工学で微生物が専門なものですから、土の肥沃度は微生物無くして測れないだろうと。そこで化学性だけでなく、土の中の微生物の量を合わせて測ることで、土壌の肥沃度を表現しましょうというのがSOFIX技術を開発した原点になります。

──生物的性質を測れるのが大きな特徴なんですね。これは単純に微生物が多ければ多いほど、良い土壌と考えてよいのでしょうか。

基本的には微生物量が多いほど良い土壌である傾向にはあるのですが、それだけではなくて窒素の循環活性とリンの循環活性も同時に調べているんですね。これは堆肥などの有機物を土に入れた際に、実際に野菜が吸収できる形に窒素やリンを変換してくれる菌がどれくらいいるかを見ています。

──なるほど。微生物の量と質を同時に検査するんですね。

はい、その他の元素解析はコストがかかるのでサービスの中には入っていないのですが、微生物量と窒素の循環活性、リンの循環活性を見るだけでも土の肥沃度はだいぶ分かります。今まで有機物資材を使った土づくりは農家の経験に頼らざるを得なかったのですが、それを数値的に見える化できたことによって、有機堆肥を用いた土づくりの科学的な処方箋を出すことが可能になりました。

SOFIX分析で何がわかる?

SOFIX技術を用いて土壌改良を行った滋賀県草津市の圃場(ほじょう)

──実際に分析した結果はどのような形で利用者の手元に届くのでしょうか。

分析の結果では土壌の化学性・生物性合わせて全部で19項目を検査します。そしてその中で特に重要な6項目についてパターン判定を行い、最終的に特A、A、B、C、Dの5段階で評価します。

このパターン判定にもっとも影響するのが総細菌数という項目で、土1グラムあたり何億個の細菌がいるかを調べます。1グラムあたり2億個を下回るとC以下、検出限界を下回ると他の項目の数値に関わらずD評価になります。この細菌数は土壌中から微生物のDNAを抽出し、DNA量を指標として微生物量を測定しています。

 

測定項目 分類
1 硝酸態窒素 化学性
2 アンモニア態窒素
3 交換性カリウム
4 可給態リン酸
5 EC値
6 pH
7 全炭素量(TC) 土壌バイオマス評価
8 全窒素量(TN)
9 全リン量(TP)
10 全カリウム量(TK)
11 C/N比
12 C/P比
13 バクテリア数 環境バクテリア量
14 アンモニア酸化活性 窒素循環評価
15 亜硝酸酸化活性
16 窒素循環活性
17 フィチン酸分解活性 リン循環評価
18 含水率 物理性
19 最大保水容量

SOFIX土壌診断で分析される19項目

──特A評価を取るのは難しいものなのですか。

有機的な土づくりをしていて、初めからBとかA評価の方は、処方箋どおりに土壌改良すればすぐに評価も上がっていきます。ただ何十年も土壌消毒など行っていて、微生物量が検出限界を下回るようなところは改善するのが難しい傾向にありますね。微生物がほとんどいないということは不自然なので、土を5キロほど送ってもらって、こちらで精密検査や改良実験をします。その時にミミズを入れてすぐに死ぬようだと回復がかなり難しくなります。それで死ななければまだ回復の見込みはあると。特に施設園芸をされているようなところは、雨が降らないので農薬がたまりやすく、細菌数も少ない傾向にあります。現在は土壌消毒を行っていない農家の方でも、お父さんの代で長年使っていたことで、いくら堆肥を入れても回復しないというところも実際にあります。

土壌改良にはどうつなげる?

──SOFIX土壌診断で土壌の状態が分かった後に、「では具体的にどう改良すればよいのか」が利用者側としてはもっとも気になるポイントだと思うのですが、どのように提案しているのですか。

土壌診断を行ったあと「どんな肥料をどのくらい入れるか」についての計画を立てることを施肥設計というのですが、有機物資材を使った施肥設計では、農家さんがお使いになっている堆肥自体の健康状態も合わせて測るようにしています。

──確かに有機堆肥ですと、同じ量を入れたとしても発酵のし具合やどんな材料を使っているかで大きく結果が変わってきますもんね。

はい、そこで我々はこの堆肥についても見える化しようということで、MQI分析とOQI分析という2つの分析を行っています。

MQIはManure Quality Indexの略称で堆肥品質指標、OQIはOrganic material Quality Indexの略称で有機資材品質指標を意味しています。簡単にいうとMQIは発酵した有機資材、いわゆる牛ふん堆肥や鶏ふん堆肥などの品質を測るもので、OQIは大豆かすや米ぬかなどのまだ発酵していない生の資材の品質を測るものになります。

──発酵資材と発酵していない資材ではどういった違いが出るのでしょうか。

基本的には発酵した堆肥を入れる方が多いのですが、発酵していない資材を入れると、微生物がわーっと増えていきますので、微生物が少ない圃場では発酵していない資材を入れます。発酵していない資材は、多く入れすぎると分解されるときに炭酸ガスが発生して野菜に悪影響が出ますので、土壌の状態をみて何をどれくらい入れるかというのを診断させていただいております。

──土壌の状態と堆肥の状態を合わせて測ってもらった上で、処方箋を出してもらえるのはとても安心感がありますね。特に経験のまだ少ない新規農家にとっては信頼できる指標になりそうです。

SOFIX技術の課題と展望

──このSOFIX技術を広めていくに当たっての課題や展望などはありますか。

課題は、まず分析費用が高いというのはよく言われますね。フル項目で分析すると初回はお試しで約1万円、2回目以降は3万円ほどするのですが、通常の農協での土壌分析などですと3000〜4000円くらいでできますので、それと比べちゃうとどうしても高いと。一個人の農家で3万円はやはり高いですから。実際には、利用されている方は土壌の診断費用は上がりますが、収益もほとんどの農家さんで上がっているので、まずは使っていただいて効果を実感していただくのが一番だと思っています。

SOFIX分析を行い認証を受けたことを示すSOFIX土壌認証マーク

また合わせて消費者への認知度も高めていこうということで、認証制度も行っており、B評価以上ですとその圃場で取れた農作物にSOFIXの認証マークを表示することができます。実店舗での調査でも値段が多少高くても、この認証マークが付いている方からどんどん売れていくんですよね。小売店でもSOFIX認証のある野菜を取り扱いたいという話がきているので、SOFIX技術を使うことで、農作物に付加価値が付いたり、販売しやすくなると、農家さんにとって利用してもらいやすくなるだろうと考えております。

──なるほど。土壌診断の技術的なところだけでなく、農家や小売店の現場で起きている現実的な課題に対しても、積極的に取り組んでいるのですね。

はい、私は研究者としてただ自分の興味あることを研究するだけではなく、実際の社会で起きている問題を解決することが大事だと思っているんですね。SOFIX技術によって安定的な有機栽培技術が確立できれば、より農業への参入も増えると思うんです。日本や世界の農業に貢献できるような技術として、今後もSOFIXを広めていきたいと思っております。

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