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黒松・南天・葉ボタン 正月3点セットで、年末商戦に「花」を添えよう

黒松・南天・葉ボタン 正月3点セットで、年末商戦に「花」を添えよう

正月は、盆時期に匹敵する直売所繁忙期。連日、開店前からお客さんが並び、普段使いの野菜はもちろん、黒大豆や金時人参、赤カブなど正月料理向けの食材も飛ぶように売れる。そんななか、私は正月に特化した切り枝や花を出す。「正月3点セット」と私が勝手に呼んでいる、黒松、南天、葉ボタンの栽培の仕方や売り方をご紹介。

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庭木の剪定(せんてい)ついでに切り枝を売る

直売所がにぎわう年末は、筆者が兼業している植木屋も、新年を美しい庭で迎えたいお客さん宅の庭木剪定にてんやわんやの日々。日が昇り落ちるまで植木屋仕事をしているわけだから、暗闇の野菜畑で収穫、洗浄、調整をしなくてはならない。このままでは、せっかくの正月商戦を消化不良のまま逃してしまう……。
そんな個人的事情があって、正月商戦には、剪定の際に出る正月らしい「枝物」の販売を始めるようになった。植木屋からすると「タダのゴミ」でも、使いやすく調整すればお客さんが喜んでくれるのだ。

【黒松】徒長枝と小枝の売り方

しめ縄や門松、正月の生け花など、幅広い需要があるのが松の枝。植木屋業で松を剪定していても、「ひとつもらってもええかな?」と通りすがりの人に声をかけられることがしばしば。年末だと1日に5回くらい。
昔ながらの庭にはたいてい1本や2本は黒松が植わっているものだが、最近は、他の木よりも剪定にお金がかかるということで植えない庭が多くなった。町場のお客さんにとっては貴重なものなのだ。

黒松の徒長枝で「枝若松」

年末の花き市場ではさまざまな松の枝が売り買いされる「松市」という競りが開かれるくらい引き合いの多い松の枝だが、その中でも幅広い層に売れるのが「枝若松」。ホームセンターなどでも売っている、長さ40〜50センチのスッとした黒松の枝のことだ。
本来は、黒松の苗木を畑に密植してつくるものだが、庭木の松にとっては樹形を乱す「徒長枝」も似たような形になる。こうした徒長枝の茶色くなった古葉を掃除して(もみ取って)、3本を輪ゴムなどで止めれば、立派な売り物になって250円前後で販売できる。

左の3本が枝若松風に仕立てた徒長枝。右は、荒神(こうじん)松をバラしたところ

小枝は榊(さかき)と組み合わせて「荒神松」に

徒長枝のように長い枝でなくても、短い15センチほどの枝だって工夫次第で売り物になる。私がやっているのは、短い枝3本と、山からとってきた榊の葉を3本組み合わせた「荒神松」。神棚に供えるもので、花屋さんなどでは1つ500円することもある。
神棚に供えるからには美しいものでないといけないので、できるだけきれいなものを使い、枝元が行儀よく、まっすぐになるように、丁寧に縛る。

荒神松。枝元を輪ゴムで縛った上で、それを隠すように細いビニールヒモで縛る。ホームセンターのものを参考にした

【南天】紅白セットで売る

わが家の脇に植わっている南天。黄色く見えるのが白実のもの

田舎ではどこの庭や畑にも植わっており、そこら中に生えてほぼ雑草化している南天。邪魔になって切りたくもなるが、田舎で育つ南天は授粉する昆虫が多いおかげなのか、実つきがよい。そのため、年末の掃除ついでに切ればお金になる。
みんな考えることは一緒で年末の直売所には大量の南天が並ぶが、一般的な赤実の南天に白実のものをセットにすれば売れ行きは急上昇。

3月の挿し木で白実南天を増やす

勝手に雑草化する赤実の南天に比べると、白実はやや貴重で切れる本数が少ない。赤実と比べると、育つ速度も遅く、実がつくまで時間がかかるし、ヒコバエ(株元から出る新しい枝)がたくさん出るわけでもない。
そこで、3年前から始めたのが白実南天の挿し木。やり方は簡単で、まだ寒い3月頃、その年に伸びた枝を切り、真砂土(まさつち)など肥料分のない土に挿して日陰に置いておくだけ。6月頃には根っこが生えてきて、苗になる。

【葉ボタン】師匠から教わった栽培の極意

正月向けの切り花といえば葉ボタン。キャベツのような見た目で、中心の部分が赤や白に色づく観賞用の植物で、花壇に植え込まれたり、背が高くなる高性種のものだと生け花に使われたりする。私が栽培しているのは生け花用の後者。この辺りではつくる人が少ないからだ。
ところが、生産者が少ないということは、栽培方法を聞ける身近な人もいないということだった。2年間は失敗続きで、ほとんどモノにならず、悔しい思いをした。そんなとき、ふと目にした新聞記事で、隣町に葉ボタンを1万2000株つくる人がいると知り、栽培方法を教わりに行った。

師匠がつくる見事な高性種葉ボタン

地床(じどこ)育苗のやり方

私の失敗の原因は、そのほとんどが発芽不良や育苗時の高温障害だった。
下図の栽培暦のように、葉ボタンは一年で一番暑い真夏にタネまきをする必要があるため、暑さによる発芽不良や、定植後のしおれを解消するのがとても難しい。

師匠に教わったやり方は、セルトレイにタネをまくのではなく、畑の苗床に直接タネまきをし、苗をつくる「地床育苗」。苗床から引き抜くときに根っこが切れるので、そのぶん発根力が増し、猛暑や乾燥にもへこたれない頑丈な苗ができるという。

播種(はしゅ)の手順は、

  • 育苗用のウネをつくり、地下まで染み渡るくらいにジャブジャブと水をまく
  • 泥のようになった表面にタネを筋まきして、3ミリ目合いのフルイでふるった畑の土で覆土
  • 保湿の意味で、もみ殼を1センチほどの厚みでかぶせる
  • 銀色の遮光シートを被せて、発芽するまで水もやらず、放置する

ずいぶん簡単なやり方だが、水分が蒸発するたびに、気化熱が奪われて表面が冷やされ、いい感じの温度が保たれる。実際にこのやり方だと、ほとんどのタネが発芽する。
その後は、本葉が3枚になったところで、間引きも兼ねて、苗同士が密集しすぎないようにやや離して仮植えする。本葉8枚で栽培用のウネに定植し、日中のしおれが治るまでは銀色の遮光シートをかけていく。地床育苗で育てた頑丈な苗なら、定植後にたっぷり水をやっておけば、この一度限りで水やりはおしまい。

「葉かき」のやり方

高性種に必須の作業が「葉かき」という作業。葉の枚数が増えて、背が高くなりだす頃から上から3分の1の葉を残し、下葉をもぎとる。9月頃と10月頃の2回ほど行うことで、葉ボタンは葉っぱの枚数を増やそうと上へ上へと伸び、切り花に適した草丈にすることができる。
また、収穫する直前には、紅白に色づいた葉と緑の葉のバランスを見ながら、見た目を整える意味で葉かきをして仕上げる。

小さなハネ品もブーケのようにまとめると、洋花が好きなお客さんも買ってくれる

これら正月3点セットは、ただ単に売り上げを伸ばすだけではなく、直売所を正月ムードにする意味合いもある。自分のつくったものが、各家庭で正月を迎えるために使われていることを想像するとうれしくなり、「来年もまた直売所、頑張ろう」という気分になる。

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