食品ロスを再利用 コスト約3割減の液体飼料を生産する日本フードエコロジーセンターの挑戦

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食品ロスを再利用 コスト約3割減の液体飼料を生産する日本フードエコロジーセンターの挑戦

食品ロスを再利用 コスト約3割減の液体飼料を生産する日本フードエコロジーセンターの挑戦
最終更新日:2020年02月07日

日々、大量に排出される食品ロス。堆肥(たいひ)や飼料に再利用されることなく、焼却、埋め立て処理されるものも少なくないといいます。そこで、それらを利用して製造する飼料「エコフィード」として、株式会社日本フードエコロジーセンターは発酵技術を取り入れ、養豚用の液体発酵飼料を生産しています。エコフィードは日本の養豚業や、食品リサイクルにどのような変革をもたらそうとしているのでしょうか。同社代表取締役の高橋巧一(たかはし・こういち)さんに聞きました。

発酵で保存性アップ、水分を含んでいても腐らない

まだ食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品、いわゆる「食品ロス」は、農林水産省の推計によると年間643万トン(2016年度)にも達するといいます。もったいない精神が息づくはずの日本で、これだけの食品が無駄になっているのは驚くべき事実ですが、欠品を出すことなく、スーパーやコンビニに常に新鮮な食品を並べるには、ロスを見越した量を生産しなければならず、今ある食品流通を維持する限り、どうしてもこれだけの食品ロスが出てしまいます。

それでも堆肥などに再利用されていればいいのですが、焼却・埋め立て処理されている量は決して少なくありません。
そこで近年、「エコフィード」活用への取り組みが注目されています。エコフィードとは、食品ロスなどの食物残渣(ざんさ)などをもとに製造された家畜用の飼料のことです。

ただ、堆肥や飼料にするにしても、食品に含まれる水分のままでは腐敗するため、大量のエネルギーを投じて乾燥させているのが実情です。そこで神奈川県相模原市を拠点に食品ロスのリサイクルに取り組む株式会社日本フードエコロジーセンターでは乾燥処理を行わずに、食品ロスから養豚用の液体飼料を生産しています。同社代表取締役の高橋巧一さんがこう説明してくれました。

「日本では昔から発酵という手法で食品を酸性にして保存性を高めてきました。これに倣い、私たちは食品工場やスーパーマーケットから持ち込まれた食品ロスに乳酸菌を添加して発酵させ液体発酵飼料を生産しています。当社のエコフィードには多量の水分が含まれていますが、pH4.2以下に酸性度を高めているので、雑菌は繁殖せず、腐ることはありません」

日本フードエコロジーセンター代表取締役の高橋巧一さん

搬入された食品ロスは、計量、選別、破砕、殺菌を経て、発酵処理されて液体発酵飼料となります(図中の画像提供:日本フードエコロジーセンター)

食品ロスを原料にしつつも成分を均質化

こうして生産されたエコフィードは、食品ロスが搬入された翌日にはタンクローリーで契約する養豚場へ運ばれていきます。乾燥させた一般的な配合飼料であれば、紙袋に入れた状態で積み上げて保存することができますが、同社のエコフィードは液体であるため、これを使う養豚場では保存タンクを設置しなければなりません。

しかし、この初期投資を加味しても、配合飼料と比較してエコフィードのコストは7割程度に抑えられるといいます。この安さが好評で、エコフィードは多くの養豚農家に利用されているのですが、食品ロスを原料にする以上、持ち込まれた食品次第で成分にばらつきが生じるのではないでしょうか。この問いかけに対して高橋さんが答えてくれました。

「食品ロスを何でも受け入れていたら、エコフィードの成分を一定に保つことはできなくなりますから、食品事業者と契約した際、どんな食品をどれだけ持ち込んでいいのかを指導しています。突発的にご飯が多く余った、野菜が多く余ったとしても、エコフィードの成分を均一化するために受け入れていません」

受け入れる食品ロスを制限しているので、エコフィードの成分を均一化できるのです。また、2カ月に一度、外部の分析機関に委託してエコフィードの成分を確認するほか、出荷するエコフィードの一部を工場内の一角に10日間保存して、万が一、エコフィードを食べたブタに異常が発生した場合に、その原因を探れるようにしており、トレーサビリティーにも配慮されています。
さらに日本フードエコロジーセンターでは、成分の異なる5種類のエコフィードを生産しているといいます。その意図について、高橋さんがこう語ります。
「養豚技術が進歩したことで、エサを工夫して、肉質を軟らかくしたり、霜降りを増やしたりすることができるようになっています。エコフィードの成分に関する養豚業者からの要望に応えるため、私たちの工場では2系統の発酵タンクを設置して、それぞれに投入する食品ロスを変えています。それらの配合比率を変えて5種類のエコフィードを生産しています」
例えば、エコフィードの原料となる食品ロスの中心はご飯やパンなどの炭水化物ですが、コメ、コムギに含まれる脂肪酸はオレイン酸が多くなる一方、トウモロコシだとリノール酸が多くなります。こうした違いをエコフィードの成分設計に取り入れており、養豚農家がどんな豚肉を生産したいかによって5種類のエコフィードの中から選べるようになっています。

万が一、エコフィードを食べたブタに異常が発生した場合に、原因を調べられるよう、エコフィードは10日間保存されます

エコフィードの良さを伝える農園を計画中

2年後に開業予定の「サステイナブル・ファーム」の概念図。食品ロスを原料にメタンガスを生産し、農園で消費する電気も生産する計画です(画像提供:日本フードエコロジーセンター)

今後、畜産物の輸入自由化が進めば、海外から安い豚肉が大量に入ってくることは避けられません。これに対抗してコストをとことん削減して安価な豚肉の生産を目指す戦略もありますが、一方で高価でも品質の良さで消費者に選ばれる豚肉を生産できるようになれば、日本の養豚農家は生き残っていけるでしょう。エコフィードが質の高い豚肉を生産する一助になると高橋さんは期待しているのです。

「エコフィードを与えて生産した豚肉の質の高さを知ってもらうには、さらなる情報発信が欠かせません。ですから、養豚場に観光農園、直売所、農家レストランなどを併設した『サステイナブル・ファーム』の開業を計画しています」

サステイナブル・ファームではエコフィードの生産に加えて、食品ロスをメタン発酵に供することでバイオガスを生産し、農場で消費する電力も自分たちで賄おうとしています。こうした取り組みは環境問題に関心の高い消費者に強い訴求力を持っているでしょうから、エコフィードで生産された豚肉を好意的に受け止める一助になるはずです。その結果、儲かる養豚業、儲かる農業が示せれば、食品ロスの再利用は広がっていくと期待されます。

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