見る農業「原田農園」農業の新しい価値
「農チューバー」という呼び方は、北海道のメロン農家・寺坂農園の寺坂祐一(てらさか・ゆういち)さんが商標登録をしています。音の響きもカッコいいですし、このまま定着しそうですね。2019年は農Tuber元年と言えるくらいたくさんの農Tuberが誕生した年でもあります。2020年以降もどんどん大きな盛り上がりを見せることは間違いないでしょう。
そんな農業系YouTube界の開拓者として、原田農園の「Harada Farm」は非常に有名なチャンネルの一つです。
原田さんは兼業農家として、整備士をしながら多品目の野菜栽培をしています。本業の合間の兼業とはいえ、野菜栽培だけで1000万円を超える売り上げをあげている立派な農家です。そんな原田さんの三足目のわらじが、今をときめくYouTuberなのです。
これまでも、スマートフォンで作業風景を撮影した動画をYouTubeに簡単な編集でアップロードしている農家はたくさんいたのですが、原田さんはプロ顔負けの撮影機材や編集ソフトを投入して、美しい映像、視聴者目線の構成、丁寧な説明を加えることで、完全に農Tuberとしての新しい需要を開拓しました。
YouTuberは、今や子供のなりたい職業トップに毎年ランクインするほどに世間一般に知れ渡っています。自分の仕事を発信することは、単なる表現方法を超えた、新しい生き方の一つと言えるでしょう。もはや「なりたい“職業”は何?」という質問自体が前時代的なのかもしれません。
YouTuberというと、子供向けのバラエティーものを思い浮かべてしまう人がまだまだ多いようですが、今や高齢者も皆スマートフォンを駆使している時代。10~20代の視聴割合は90%以上、50代でも約70%の人がYouTubeを視聴しているそうです。
きちんとエンターテインメントとして表現された栽培動画があれば、見られる土壌は整っていた訳です。
映像としてのクオリティーを高め、視聴者のニーズに合わせた動画作りは、数年前から徐々に人気になり、YouTuberとしての大台とも言われる登録者1万人に、日本語での農業チャンネルとしては一番乗りで到達しました。その後も着々とファンが増え続け、2020年1月現在で3万6000人ほどの登録者数を誇ります。
まさに「見る農業」というエンターテインメントとしての新しい農業の価値を生み出したと言えるのではないでしょうか。
原田農園のオフ会に行ってみた! 参加者インタビュー
2019年12月に開催された、原田農園のオフ会イベントに筆者も参加してきました!
オフ会とは、インターネット上(オンライン)でのやりとりではなく実際に会って(オフライン)交流を深める集まりのことです。
この日はたくさんのファンが集まり、普段動画で見ている圃場(ほじょう)を一緒に回って、ホンモノの原田農園を体感し、一日を楽しく過ごしました。
参加者は、農家、非農家だけど家庭菜園を楽しんでいる人たち、そして意外と多かったのが、農業を仕事にしたいと考えている新規就農希望者でした。
皆さんに共通しているのは、栽培における問題点──ある人はナスの剪定(せんてい)だったり、ある人はネギの定植だったり──の解決方法を目で見て学びたくて、原田農園に出会ったようでした。
また、機械や道具の使い方を目で見て学びたくて原田農園を参考にしたという人もいました。
原田さんはこう言います。
「YouTube動画で大切なのは“問題解決”ですね。いろんな人の疑問に答えていったらどんどん登録者が増えていきました」
マスメディアとは違う、利用する側がサイトや番組を選択するインターネットという媒体において、発信を成功させている人と失敗して諦めてしまう人の一番大きな違いは、やはり視聴者の問題解決ができるかどうかということなのかもしれません。
原田さんと若手農家仲間で立ち上げた「楽しい白ネギ部会」の部会長、地元農家の田坂信太郎(たさか・しんたろう)さん(上写真)はこう言います。
「彼はすごく段取りが良いんだよ。兼業農家でしょう? 朝から夕方まで仕事があって、出勤前と昼休みと、10分単位の時間を活用して撮影までやっている。そういう時間の使い方って専業農家じゃ難しいよね。むしろ限られた時間の中でやるからこそ、あれだけ段取りよくできちゃうのかもしれないね」
なるほど、一見矛盾しているようですが、一理ある捉え方です。時間マネジメントについて考えさせられます。
農Tuberの今後 原田さんへインタビュー
つるちゃん
原田さん
誰もが見ていて、誰もが気軽に発信できるWeb媒体の真髄を、原田農園さんから学びました。
原田さん、ありがとうございました!