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カタログには書かれていない「管理機の選び方」

カタログには書かれていない「管理機の選び方」

前回の記事では、メーカーのカタログなどに書いてある「管理機を選ぶ方法」の基本をお伝えしました。
管理機を選ぶコツは、基本的に種類と規模、用途、動力。「ロータリーの位置はどこにある種類なのか?」「使う畑の広さはどのくらいか?」「どんな作業をするのに使うのか?」「駆動する動力はなにか?」の4項目でした。
今回は、教科書にもカタログにも書かれていない「管理機の選び方」をお伝えします。

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前回の記事
絶対おさえておきたい基本の管理機の選び方
絶対おさえておきたい基本の管理機の選び方
メーカーのカタログなどに書いてある「管理機を選ぶ方法」の入口は、基本的に種類と規模、用途、動力の4つ。つまり、「ロータリーの位置はどこにある種類なのか?」「使う畑の広さはどのくらいか?」「どんな作業をするのに使うのか?」…

こんな選び方はカタログには書かれてない

前回の記事でご紹介したのが教科書的な管理機の選び方。「ごもっとも」の一言です。でも、なにかが足りない気がしませんか? そう、それは気分というか感覚なのか、精神的なことかもしれません。特に家庭菜園レベルの人たちの感情のなかに入り込めているかは疑問です。
家庭菜園をやっている人たちのほとんどは農業で生計を立てているわけではありません。多くは、自分で作物を生産して自分で消費している“自産自消”です。

実はこの文章を書いているわたしもそうですが、家庭菜園レベルにある大部分の人々が趣味に近いカタチで農業をやっている。「野菜をつくるのが好き」「自分で育てた野菜が食べたい」「有機・無農薬の安全な作物をつくる」などなど、どちらかというと生産性といったことより感情的な側面を優先しているのかもしれません。
なので、ここでは家庭菜園レベルの人たちの目線に立った選び方を、農機具屋さんで実際に取材した情報もふまえて考えてみました。

お金と気持ちの折り合いをつける

管理機に限らず農機具は、いかに人間がラクできるか?をサポートする道具です。性能が良かったり、機能が優れていたりすればするほど、ラクできる度合いが上がっていきます。ただ当然ですが、性能や機能が良いものは価格も高くなる。「ラクできる度」は性能や機能に、性能や機能は価格に比例するのです。
さて、ここが「管理機」というハードと、人間の「感情」というソフトとの折り合いの付けどころ。
たとえば、自分の畑が30坪(100平方メートル)ほどあったとしましょう。カタログには「3~4馬力の管理機が必要」とある。「3馬力と4馬力、どちらにしようかな? 値段は4馬力が4万円ほど高いんだけど」。価格の差は馬力だけでなく、機能にも違いがあるからなのでしょう。いずれにしても、4馬力の方が「ラクできる度」が高いはずです。
30坪の畑で使うための3馬力と4馬力の管理機、選択肢は2つ。どちらを選ぶのが正しいでしょうか?

答えはどちらも正解です。

3馬力を選ぶ場合は、
「少し非力で効率は悪そうだけど、そのぶん時間をかけたりして、自分がちょっとだけ苦労すればいい。なにしろ4万円も安いんだからね」

4馬力を選ぶ場合は、
「チカラはあるしマルチが張りやすい。作業はスムーズでストレスを感じないだろうな。4万円高いけど、そのぶん時短になると思う」

こんなふうに、ハードとソフトの折り合いをつけてみてはどうでしょうか。
要は「気持ち」の問題です。管理機を購入する前に「お金」と「気持ち」の折り合いをつけて、心づもりして覚悟の上で選べば、買ってから後悔することはないはずです。気の持ちようで、どんな管理機でも納得価格で買うことができます。

「とりあえず」をとりあえずやってみる

家庭菜園レベルの人たちは、農業で収入を得ているわけではないので、「元を取る」という意識は希薄でしょう。思っているのは、「金銭的には元は取れないが、精神的には取れる」。管理機を買って使えば、これだけのお金を払ったけれど、「すごく楽になった」「時間の余裕ができた」「とっても楽しくなった」「他の野菜もつくりたくなった」と、気持ちで元は取れるのです。
ただ、気持ちで元は取れるにしても、お金が出ていくのはまぎれもない現実です。だったら、こうしたらどうでしょう。金銭的に元が取れないのなら、できるだけ「元」を少なくする。家庭菜園レベルの人が管理機を選ぶ時に、できるだけ「予算を抑える」という考え方をしたらいかがでしょうか。
具体的にいうと、導入機として安い管理機を「とりあえず」買って、「とりあえず」使ってみるということです。

いま、30坪の畑で野菜づくりを始めた人が、導入機である2馬力の管理機を使っている。2年後、調子が出てきて100坪(330平方メートル)に広げたとしても同じ管理機で事足ります。グレードアップしてもしなくても、広くなったぶん時間はかかりますが、坪当たりの作業時間は極端には変わらないはずです。
なにかの事情があって、どうしても上級機種にしたくなったら、いまの管理機を売ればいい。年々、中古市場は活発化しているので買い替えの軍資金になるでしょう。
農業のプロにまでなったとしても、広くなった畑を耕運機なりトラクターなりで耕して、管理機は「管理」に特化して使うことも可能です(これが本来の耕運機と管理機の役割)。
早々に管理機の「便利」という恩恵にあずかるために、安いものを「とりあえず」買って、「とりあえず」使ってみる。いまの管理機は、低価格でも多機能で、いっぱしの働きをするチカラはもっていますから、いまもこれからも、それなりにいい仕事をしてくれると思います。

机上の空論より畑上の事実

最後に、いちばん手っ取り早く確実な管理機の選び方をご紹介します。それは、地元の農機具屋さんと面と向かって相談すること。キーワードは「地元」と「面と向かって」です。

カタログなどに書いてある選び方は、不特定多数の人たちに向けて書かれています。長野県の人にも、岡山県でも、岩手県でも、どこに住んでいる人にでも共通してできる方法です。
しかし、たとえば長野県の上田市真田町赤井地区の人が「地元」の農機具屋さんと話をしたとします。管理機の選び方で特に重要なのが「土質」です。地元の農機具屋さんは、長野県の上田市真田町赤井地区の土質を熟知している。ですから、「真田のあそこは粘土質だから、フツーの土質だったら2馬力でも大丈夫なんですが、6馬力はないと刃がたたないでしょうね」とアドバイスすると思います。
これは、高い方を買わせようという魂胆からきている発言ではないはずです。そんなことをしたら、地元同士のことですからお客さんは二度と口をきいてくれなくなります。田舎は狭いので、悪いウワサは一瞬にして田畑を駆け巡ることになる。農機具屋さんが、こんなリスクを抱えることは絶対にありえません。

もうひとつ、「面と向かって」もポイントです。お客さんにはさまざまな条件があります。もちろん肝心な予算も。農機具屋さんはすべてのことに耳を傾けてくれるはずです。お客さんの条件と予算に折り合いをつけるための引き出しをいっぱい持っていますから、ベストな提案をしてくれるでしょう。
やはり、「机上の空論」より「畑上の事実」。いちばんおススメできる管理機の選び方は、「地元の農機具屋さんと面と向かって相談すること」です。
地元の農機具屋さんは、インターネットの検索サイトに、「地名」と「農機具」と入力すればすぐ出てきます。電話なら、全国に約250の農機具販売店ネットワークをもつ「ノウキナビ」というサイトのコールセンター(0120-555-071)で紹介してもらうのも一手です。

ノウキナビ

まとめ

管理機の選び方には、いくつかの方法があります。正攻法は教科書通りのやり方。「ロータリーの位置はどこにある種類なのか?」「使う畑の広さはどのくらいか?」「どんな作業をするのに使うのか?」「駆動する動力はなにか?」。この4項目を決めれば、管理機は選べます。これはどちらかというと、理論的に詰めていくタイプ。消去法なりで絞っていけば決まると思います。

しかし、「モノを選ぶ」のはしゃくし定規もいいけれど、感情的な要素が入っても良しなのでは?と考えたのが、「お金と気持ちの折り合いをつける方法」です。価格の差は、高くても安くても気の持ちようで適正価格になります。
「安い管理機をとりあえず買って、とりあえず使ってみる」方法は、一見安直なやり方だと思われるでしょうが、近い将来も計算済み。いま満足して使うことができ、これからどう転んでも後悔することはないはずです。

いちばん手っ取り早く確実なのが「地元の農機具屋さんと面と向かって相談すること」。これまで農機具屋さんと接点がなかった方には、ちょっとした垣根があるかもしれません。ただ、農機具屋さんは、その地域の頼れる農業の「よろずや」です。仲良くなれば、農機具だけでなく、「農」に関わるさまざまな情報を提供してくれることでしょう。
いずれにしても、管理機はいかに人間がラクできるか?をサポートする道具です。いったん自分を信じて決めたのだから、管理機も信じてあげましょう。信じていっしょに仕事をしていると、きっと、「いかに人間が楽(ラク)できるか」から「いかに人間が楽しくなるか」に変化させてくれるはずです。

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