生ゴミコンポストとは?
生ゴミコンポストとは容器の中に生ゴミを入れていくことで、微生物やミミズなどにそれらを分解してもらい、栄養豊富な堆肥を作るための道具のことです。本来はコンポストとは英語で堆肥そのものを意味する言葉なのですが、日本では「コンポストを使って堆肥を作る」というような使われ方もします。農家などで作られる堆肥は牛ふんや鶏ふんなどの家畜のふんなどを中心にして作られることが多いですが、生ゴミコンポストの場合は家庭で出る野菜クズや残渣(ざんさ)などの生ゴミを利用して作ります。
生ゴミコンポストの作り方とポイント
僕も実は最近、この生ゴミコンポストを始めてみました。今まで牛ふんや雑草での堆肥づくりをしたことはありますが、生ゴミコンポストは初体験。実際にやってみるといろいろな疑問が湧いてきたので、このコンポストを販売、普及する活動をしているNPO法人循環生活研究所のたいらさんにお話を伺ってきました。まずは生ゴミコンポストの作り方とそのポイントについて聞いていきます。
たいら由以子(ゆいこ) プロフィール
父のがん闘病や子育てをきっかけに食の生活環境の改善に興味を持ち、母が実践していた生ゴミコンポスト堆肥づくりに注目。現在、NPO法人循環生活研究所で生ゴミコンポストの普及活動や指導者の養成、コンポストを中心とした地域循環の仕組みを作る活動「ローカルフードサイクリング(LFC)」などを行う。
容器の選定
──循環生活さんのバッグ型コンポストを使わせてもらってるんですが、こんなものもコンポスト容器として使えるんですね。この容器はどんなものが良いとかあるんでしょうか?
生ゴミって90%が水分なんですね。だから容器はできるだけ通気性・排水性が良いものがいいです。このバッグはフェルトの生地を使っています。ダンボールも通気性・排水性が良くて、無駄な水分をダンボール自体が吸ってくれるので、失敗が少ないんですよね。発泡スチロールやプラスチックなんかだと水分が抜けないので、失敗しやすいです。
──ダンボールを使うのにはやっぱりちゃんと理由があったんですね。容器の大きさってどのくらいのものが良いとかありますか。
いろいろ実験してきたんですけど、ダンボールだと40センチ四方が一番ちょうど良い大きさなんですね。それより大きくしたからといって、生ゴミをもっといっぱい入れられるようになるかというと、そうではないんですよ。大きすぎるとまた堆肥化の効率が落ちてしまいます。
基材を入れる
──このバッグ型コンポストでは基材としてもみ殻くん炭とヤシ殼のチップを入れて、あとはその中に生ゴミを入れていくだけなんですね。
基材はすごく大事で、基材によってベタベタになりやすいとか、虫が出やすいとか、臭くなるとか全然違うんですよ。基材はできるだけ分解が遅いものを使って、分解の早い生ゴミの栄養を吸着させるというのがコンポストの基本ですね。もみ殻くん炭とかヤシ殻のチップなどがオススメです。あと微生物はどこにでもいるものなので、わざわざ入れたりはしなくてよいです。
生ゴミを投入していく
──次はいよいよ生ゴミの投入ですね。これはどれくらいの量を入れると良いのでしょうか。
4人家族の家庭で1日に出る生ゴミの量がだいたい500グラムと言われていて、40センチ四方のダンボールコンポストの場合、それくらいの量を目安に入れてください。毎日500グラムずつを2〜3カ月は入れることができます。バッグコンポストの方は小さいので1日300グラムで3週間を目安にしてもらっています。
──中に入れると良くないものとかありますか?
容器が大きい場合は良いのですが、バッグコンポストのような小さな容器の場合は貝殻や栗の皮、落ち葉などの分解が遅いものだと詰まってしまって、通気性・排水性が悪くなるので、入れない方が良いです。油はこのバッグ型コンポストだと1日100グラムまでなら大丈夫ですね。腐ってるものとかは入れてもらっても大丈夫です。冷蔵庫の掃除にもなりますよ。
熟成させる
──コンポストに生ゴミを入れていく期間が、40センチ四方のダンボールコンポストだと2〜3カ月、この小さなバッグ型だと3週間ということでしたが、そのあとはすぐ堆肥として使えるんでしょうか。
堆肥として使うには最後に熟成させて、しっかり分解させていきます。40センチ四方のダンボールだと約1カ月、このバッグ型だと2週間ほどが目安になります。時々かき混ぜながら置いておくだけでよいです。
堆肥として利用
──熟成期間が終わったら、いよいよ堆肥として使えるんですね。
はい、ただ落ち葉堆肥や牛ふん堆肥なんかと比べると、栄養の濃度が高いので肥料に近いですね。このバッグ型コンポストはコンポストとして使用した後にそのままプランターとしてお使いいただけるようになっています。このままだと濃いので、付属されている赤玉土を混ぜてください。
──なるほど、これで完成なんですね。思っていたより気軽にできそうです。
やっぱり気になる臭いと虫対策について
──臭いが心配なのですが、何か対策はありますか?
臭いがするときは、酸素をしっかり中に入れるためによく混ぜるとだいぶ臭わなくなりますよ。水分・酸素・栄養のバランスが良いとスムーズに温度が上がって、分解も早くなり、臭いも減ります。それでも臭いは多少発生するときもあるので、ベランダなど風通しがいい屋外に置いてください。ネットで流しの下に置くといいよなんて話が広まってしまった時があるのですが、衛生的なリスクがあるので基本は外に置いてくださいと伝えています。あと入れる生ゴミはできるだけ小さく刻んでから入れた方がいいですね。その方が微生物にとっても助かるし、分解が早まります。
──コンポストって虫がわくイメージがあるんですが、これも何か対策がありますか?
虫対策としては容器にフタをして、中に卵を産み付けられないようにするのが基本ですね。もし中に入ってしまった場合は、日干しすれば殺すことができます。でも中に入る虫って主にアメリカミズアブっていう虫なんですけど、自然界の役割的には分解者だから、これがいると生ゴミの分解が100倍早くなるんですよ。
──100倍も変わるんですね! そうか〜この虫は分解を手伝ってくれてたんですね。なんかそう思うと意識が変わりますね。
そうなんですよ〜。今はどうしても暮らしと自然が分断されているから、そもそも虫とか目に触れないような仕組みになっていますよね。食べ物もスーパーで買ってきて、食べて、あとは捨てられていくだけじゃないですか。これだと自然とはつながらないんだけど、コンポストをやることでそれまで知らなかった自然のこととかを考えたり、知るきっかけになるんですよね。
──なるほど! 僕も暮らしと自然をつなぐものとして、家庭菜園を勧めていますが、コンポストもまた食べ物の出口として、暮らしと自然をつなぐものなんですね。
生ゴミコンポストは楽しい!
──生ゴミコンポストを広める活動では、どれくらいの人に教えているんですか。
もともとは私と母が中心になって、年間400講座くらいしていました。でもさすがに自分たちだけで教えるのには限界だったので、途中からは人材育成に力を入れるようになり、今では海外も含めて200人のアドバイザーが各地域にいて、年間8万5千人に伝える体制ができました。
──年間8万5千人はすごいですね!
はい。毎年それだけの方々が実践しているので、コンポストのノウハウの蓄積もかなりのものになっています。そのノウハウから今度はこのコンポストを利用して、実際にローカル、つまり地域で食べ物を作っていこうということで、農家さんが堆肥の作り方や無農薬の野菜づくりを学べるような場を作りました。
最近では、さらにコンポストを通して地域内で資源が循環していくような仕組み「ローカルフードサイクリング」というモデル事業を行っています。例えば福岡の天神にあるビルの屋上で、堆肥づくりと菜園活動を企業や保育園と連携して行っています。また、福岡・照葉(てりは)地区では団地の中に住んでいる人がコンポストに取り組み、それを私たちが定期的に回収して回るんですね。その堆肥を使って、農家さんに野菜を育ててもらっています。そしてコンポスト回収の回数に応じてその野菜と交換することもできます。この仕組みがとても好評で、94%の人が継続して参加してくださっています。
──それってすごく良い仕組みですね! 自分たちの家庭で出た生ゴミが野菜になってまた帰ってくる! コンポストをやるモチベーションにもつながりそうです。
──これから生ゴミコンポストやってみたいなと思っている人に伝えたいことはありますか?
とにかく楽しいんですよね〜。だからぜひ取り組んでほしいな〜。それでもしトラブルや困ったことがあったら、NPO循環生活研究所にメールや電話などで問い合わせしていただければお答えしますし、バッグ型コンポストの方を購入してくださった方にはLINEでの相談にも対応しています。それにしっかりと学びたい方には全国各地にアドバイザーもいて、コンポストの講座をしているのでぜひ参加してみてほしいですね。
あとは今回そーやんが使ってくれているバッグ型コンポスト。これは「3weeks compost challenge」として、初心者向けに3週間コンポストとして使用した後に野菜を育てるプランターとして利用できるキットになっています。コンポストに取り組むハードルをぐっと下げるためにいろいろ工夫して作ってあるので、初心者の方はまずぜひこの3週間チャレンジの方を試してみてもらいたいですね。