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野菜がしおれる5つの原因と見分け方【畑は小さな大自然vol.72】

野菜がしおれる5つの原因と見分け方【畑は小さな大自然vol.72】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。野菜づくりでよく相談されるトラブルの一つが、野菜が急にしおれてしまったというもの。今回も畑の生徒さんより、「ジャガイモが急にしおれてしまった! 助けて!」という相談が寄せられました。野菜が急にしおれてしまう原因は主に5つあります。今回の原因はこの5つのうち一体どれなのか、それぞれの原因について説明していきますので、一緒に考えてみましょう。

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事件発生! 野菜がしおれて元気がない!

そーやん、助けてくださ〜い! ちょっとこの写真を見てほしいんですけど、うちの畑で育てているジャガイモがしおれて元気がない子がいるんです。

生徒

そーやん

あら、ほんとですね。
これって、病気ですか?

生徒

そーやん

そうですね。野菜がしおれる理由はいくつか原因が考えられるんですが、そもそも野菜がしおれているってどういう状態だと思いますか?
うーん、水分が足りてない?

生徒

そーやん

簡単に言うとそうですね。もっと詳しく言うと、植物は根から水分を吸い上げ、それが茎を通り、葉から水蒸気として抜けていきます。この水の通り道のどこかでトラブルが起きているということになります。これをまずはイメージとして持っておいてください。
なるほど。いろいろ原因はあるけど、水の通り道のどこかでトラブルが起きているという点では同じなんですね。

生徒

そーやん

はい、そして野菜が青いまましおれている時に考えられる原因は、大きく分けると①土の乾燥、②病気、③虫や動物、④肥料の質や量の問題、⑤急激な気温の上昇の5つになります。せっかくなので一つ一つ確認しながら、ジャガイモがしおれた原因を一緒に考えてみましょう。

しおれる原因①土の乾燥

苗を植えてすぐは、根が深くまで張っていないので、特にしおれやすい

そーやん

まずシンプルに土が乾きすぎていて、水分が足りない時。特に苗で植えたばかりなどで根が土に広がっていない時は起こりやすいです。これは土の乾き具合を見ればだいたいわかるかと思います。
確かにうちの畑って、砂質なので乾きやすいかもしれません。

生徒

そーやん

ただ今回はこれが原因ではないと思いますね。写真を見ると、一株だけしおれていて、その周りは元気そうなので、そこだけ水不足というのはあまり考えられませんね。

もし水不足が原因の時はとにかく水をいっぱいあげれば良いってことですか。

生徒

そーやん

そうですね。少しの水だと深くまで染み込まずに、根が深くまで伸びなくなるので、できるだけ水やりする時はたっぷりやるのが大事です。
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そーやん

ついでに言っておくと水やりの仕方によっては、それによってしおれてしまうこともあります。
え〜! 水やりしたのにしおれちゃうこともあるんですか?

生徒

そーやん

そうですね。気温の高い日中は土の中の水分も減りがちなので、植物は葉の裏にある気孔を閉じて、水分が出ないようにします。ところがこのときに葉に水をかけてしまうと、気孔が開いてしまうので、土の方にも十分な水分があれば良いのですが、もし十分にない場合は抜けていく水分の量が多すぎて、しおれてしまうことがあります。
そうなんですね。葉に水をかけるのは良いのかと思っていました〜

生徒

そーやん

葉に水をかけること自体は必ずしも悪い訳ではないのですが、土の中の水分量が少なければ、しおれることもあるということですね。あとは熱帯の植物などは葉からも水分を吸収する力に優れているようなので、植物の種類にもよると思います。

しおれる原因②病気

水不足や水やりが原因じゃないとすると、病気なんでしょうか?

生徒

そーやん

はい、今回で一番確率が高そうなのが病気かなと思います。病気の場合だとこの写真のように、スポット的に急にしおれるということが起こります。ジャガイモやトマト、ナス、キュウリなどの果菜類だと青枯(あおがれ)病という病気や、豆類や葉物、サツマイモとかだと立ち枯れ病、カブや白菜などのアブラナ科野菜だと根こぶ病などがありますね。

一株だけスポット的にしおれるのは、病気であることが多い

じゃあ今回のジャガイモは青枯病の可能性が高いってことですね。

生徒

そーやん

そうですね。青枯病の場合、茎を切ると中が褐色に変色していて、乳白色の液体が出てきます。この液体がネバネバしていて、これによって水の流れが詰まってしまうので、しおれてしまうのかもしれませんね。
水道管が泥だらけで流れが悪くなっているようなイメージってことですね。

生徒

そーやん

立ち枯れ病や根こぶ病の場合は、根が侵されてしまうので、土から水分をうまく吸えなくなってしまうことによってしおれるのではないかと考えています。
やっぱり病気の可能性が高そうですね。病気の場合はどう対策したら良いですか?

生徒

そーやん

残念ながら今回ご紹介したような病気に感染してしまった場合は、進行が遅くなることはあっても、ほとんど治らないものが多いです。病気になった株は引き抜いて焼却処分するか、畑の外に持ち出すと良いです。
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青枯病と見られるピーマン

しおれる原因③虫や動物

ジャガイモの周りに虫や動物の様子は見えなかったですが、これらが原因の可能性もあるんですか?

生徒

そーやん

はい、姿は見えなくても土の中から虫が根に寄生したり、動物がかじって傷つけてしまっている可能性もあります。例えば虫だと根に寄生するネコブセンチュウやネグサレセンチュウなどですね。あとはネキリムシと呼ばれるコガネムシの幼虫なども根をかじることがあります。

ネコブセンチュウに侵された根の様子

土の中なんですね。それは土を掘って探せばいいんですか?

生徒

そーやん

そうですね。センチュウに関しては小さくて透明なので目に見えないんですが、引き抜いた時の根の様子を見て診断します。寄生されている根にコブができていたり、腐ったりしているので、異常が起こっているのは見れば分かると思います。コガネムシの幼虫の場合は、カブトムシの幼虫みたいなのが土にいるので、掘って探すことになりますね。

コガネムシの幼虫

ジャガイモもセンチュウにやられる可能性はあるんですか?

生徒

そーやん

はい、ジャガイモもジャガイモシストセンチュウというセンチュウに寄生されることがあります。これもネコブセンチュウのように根に粒がたくさんできるので、根の様子を観察することで分かります。ただセンチュウの被害ですと今回のようにスポット的になることはあまりないので、これも違う可能性が高いかなと思います。
なるほど。あと土の中にいる動物って、モグラとかですか?

生徒

そーやん

そうですね。モグラは植物の根を食べることはないですが、モグラがその野菜の下を通ることで、根が浮いてしまうことがあります。あとは野ネズミがそのモグラの穴を通ることがあって、こちらの場合は野菜の根や芋をかじることがあります。どちらにせよ土の中を掘れば穴があるはずなので分かります。

しおれる原因④肥料の質や量の問題

そーやん

同じく根に障害が起こる要因として、成分の濃い化学肥料を使いすぎたり、完熟していない堆肥(たいひ)を使った場合などもありますね。
肥料も多すぎると良くないんですね〜

生徒

そーやん

そうですね。ただこの場合も今回のようにスポット的に発生するものではないので、今回のジャガイモの場合は違うと思います。
堆肥の質ってどうやって見分けたらいいんですか?

生徒

そーやん

単純なところでは臭い堆肥は完熟しきっていないので、畑に入れたすぐ後に野菜を植えると根に障害が起こることがあります。この場合は堆肥を土に入れて1カ月ほど置いてから植えましょう。

しおれる原因⑤急激な気温の上昇

そーやん

水不足だけでなく急に気温が上昇した時にも、しおれることがあります。例えば日陰や涼しいところで管理していた苗を、いきなり強い日差しの当たる暑い場所に移動させるとしおれてしまうことがよくあります。
クーラーの利いた室内にずっといた後に、外の暑さとのギャップに体調を崩してしまうみたいな感じですね。

生徒

そーやん

そうですね。逆に温室内でぬくぬくと育った野菜苗をいきなり、寒い屋外に出すとまたやられてしまうので、急激な気温の変化はどちらにせよ、植物にとっては大きなダメージになります。

青枯病の可能性が大きい

そーやん

以上の①土の乾燥、②病気、③虫や動物、④肥料の質や量の問題、⑤急激な気温の上昇の5つが野菜がしおれた時の主な原因になります。
その中でも、今回の場合はスポット的にしおれていたので、②病気の可能性が高いってことですね。

生徒

そーやん

そうですね。その中でも一番可能性が高いのが青枯病なので、まずは茎を切ってみて、中が褐色になっていないか、乳白色の液体が出てこないか見てください。あとはどちらにせよ抜いて処分した方が良いので、掘り出して根に異常はないかも一応確認してみてください。
なるほど! よく分かりました! 処分しちゃうのは悲しいですが、他の株に病気が広がらない方がいいですもんね。

生徒

そーやん

はい、今後も野菜がしおれたら、今回紹介した5つの原因を当たってみてくださいね。
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