ネットワークという最大の武器【ゼロからはじめる独立農家#04】

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ネットワークという最大の武器【ゼロからはじめる独立農家#04】

連載企画:ゼロからはじめる独立農家

ネットワークという最大の武器【ゼロからはじめる独立農家#04】
最終更新日:2020年03月23日

農家である私がいうのも何ですが、このご時世に農家になっている人たちというのはみんな個性的。最初すごくとっつきにくいのに、気に入られると一番大切な栽培技術を惜しげもなく教えてくれたりもします。そこには農家だからこその仲間意識があります。実は、この「横のつながり」を得ることが、農業技術を持つことと同じくらいに大切なことなのです。

農家に必要な能力とは?

私は石川県で少量多品種で野菜を育て販売しています。営農していて思うのは、農地、技術、資金力、販売能力、この4つのうち2つ、人より抜きんでている部分があれば独立農家としてやっていけるということです。広い農地と栽培技術があれば、市場出荷で食べていくのも充分可能です。資金力と技術がある程度あれば、露地より管理しやすいビニールハウスを建てることもできます。また、多くの初期費用が必要で収穫までに時間がかかるため敬遠されてしまう果樹も、ある程度の資金力があればやることが可能になります。

これらの中で、これから農業をやる人にとって必要不可欠なのが販売能力です。何せ広い農地があり、農業機械も揃っていて栽培技術も持っていても大変と言われる農業の世界。そこに飛び込んでいくわけですから何か武器がないと到底太刀打ちできません。新規就農者が持てるのはこの販売能力だけと言っても過言ではないでしょう。

これら4つに匹敵する、と言うよりこの4つを手に入れるために必要なのが、つながり力、つまりネットワークになります。今、インターネットで買えないものはないと言われている時代ですが、こと農地となるとそんなに簡単にはいきません。ゼロから始めて、農地を手に入れている、または借りられている人は、誰か知っている人に紹介されたものがほとんどではないでしょうか。今は都道府県、市町村でも農地をあっせんしてくれるところもありますが、それもつながりあってこそ。

また先輩農家とつながることでいろいろな情報をもらえます。私自身実際あったこととして……「いらなくなったハウスがあるみたいよ」と紹介され行ってみると、「自分で解体して運べるなら、持っていっていいよ」とハウスを譲ってもらえたこともありました(ビニールハウス1棟、幅5.4メートル・奥行き40メートルのものを新品で建ててもらうと100万円を軽く超えたりします)。また初期の頃は農業機械を貸していただき、どれだけ助けられたか。何より、大切な栽培技術を惜しみなく教えてくれる農家さんがたくさんいることにビックリしました。ある意味ライバルを作り出すことなのに、なぜそんなことができるのでしょう。

私の畑で毎年豊作のソラマメも、先輩農家からコツを教えてもらったからこそ

農作物の生産量は農地の広さに比例するので自身で出せる量に限りがある、また土質や気候によって同じ技術が通用しないことも多々あるのでおいそれとマネできないだろうという自信もあるでしょう。でもその根底には仲間意識がとても高いというのがあります。本気で農家になりたいという人に対しては、先輩農家たちが助けてくれる率が高いです。時には自分が野菜を置いている販売先を紹介して、同じものを育てて置いてもいいよと言ってくれたりもします。

ただそこで勘違いしてはいけないのは、そこまでしてくれるのは「農家を目指しているあなた」だからであって、「あなた個人」ではありません。時々そのことを勘違いして、俺が農家になってやってるんだ!と増長する人もいますが、そうなると一気にそっぽを向かれます。どこからどこまでがフレンドリーでどこからどこまでは図々しいのか、そのあたりの機微はなんとも難しいのですが、中に入り込むと本当に気持ちのいい人が多いです。どの農家も自然の理不尽さを体験しているので人にやさしくなれるのかもしれません。

つながる方法 一に名刺、二にネット

つながりを持つために、まず必須なのは名刺です。現役農家でも結構名刺を持たない人が多いのですが、先に書いたように、これからの農家は販売能力が必要となってきます。それにもかかわらず名刺も持っていないようでは、「この人は売るつもりはない」と思われても仕方ありません。情報の交換という意味ではLINEやFacebookなどでつながることも可能ですが、そんな気軽につながれる時代だからこそ名刺を持っていると信用性が違ってきます。ネットショップで安価で簡単に、また小ロットで名刺を作れるサービスも多々ありますので、気軽にいろいろ作ってみて見つけていくのがいいかと思います。

現在、直接会わなくてもSNSなどを通してつながれる便利な時代になりました。その反面多くの人の中に埋没してしまいがち。目標にしている農家など、その人とつながりを深くしたいのであればブログやホームページを持つのをおすすめします。ホームページを持つといってもネット販売する必要はなく、最初は無料のサービスを使ってもいいでしょう。大切なのは、どんな考え方で作物を育てているのか? またどんな思いで農家をしているのか、もしくはどんな農家になりたいのか。そんな思いが伝わればひとりの人として認識されます。ホームページ、またSNSでのプロフィールは本人の写真を載せましょう。顔と名前が一致しますし、顔を出すことで信頼度が高まります。あとFacebookで友達リクエストをする時は、たとえ会ったことがある人であってもメッセージを添えるのを忘れないようにしてください。

イベント参加は未来への投資

つながりを深めるという意味においてはリアルに会うことに勝るものはありません。各都道府県の農業試験所などで行っている農業塾に参加するのもお勧めです。もしかしたら栽培方法や販売方法などは自分が目指している農ではないかもしれません。それでもネットワークを作るという観点で参加すると違った目で見ることができますし、行政の方は情報をたくさん持っているので、こちらから飛び込んでいくと非常に頼りになる存在となります。

今は農家や食に興味がある人がさまざまな体験イベントを開催しています。Facebookのイベントページで検索するといろいろ出てきます。そんなイベントに積極的に参加してみるのも良いことです。すべてが満足できるイベントではないかもしれませんが、何度か参加すると自分の好みも分かってきますし、将来自分がイベントを運営する時のためにも勉強になります。何よりSNSでやりとりするにしてもリアルに会ってからだと親しみが違ってきます。就農初期の頃、または就農する前の時間に余裕がある時に参加しておくといいでしょう。

今もいろいろなイベントに参加しています

ちなみにファーマーズマーケットや収穫祭でも農家さんと会える機会は確かに多いのですが、そこは基本、農家が農産物を販売している場になります。つまり生鮮品を売っているので持ってきたものはできるだけ売り切りたいという思いでいます。なので、その農家さんが話せる余裕はなかったりします。その場では名刺交換ぐらいにして、別の機会にその人が主催するイベントに参加するとか、視察の約束をするにとどめておく方が好印象となります。

リアルにしてもネットにしても、人として礼儀があることが大切です。農家というと豪快で細かいところは気にしないというイメージもあるかもしれませんが、普段から自然の変化、作物に対する観察眼があるので繊細なところも多々あります。その分、自然の厳しさに互いに立ち向かっているという共通認識がある仲間には損得を超えたものも存在します。つきあいを深め、助け助けられる存在になるためにも、ぜひいろいろなところに積極的に参加してくださいね。

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