外国人観光客の農泊キャンセルの影響
農林水産省で農泊を管轄する都市農村交流課は、各地の農政局等を通じて新型コロナウイルスによる農泊事業への影響について聞き取り調査を行った。平成30年度までに農泊推進対策を採択した349地域のうち、外国人観光客の受入実績がある264地域から回答を得た(調査期間は3月26日まで)。
それによると、宿泊客のキャンセルにより影響を受けたと回答したのは264地域のうち142地域で、全体のおよそ54%。キャンセルの人数はのべ約45,500人で総額は約4億5,100万円にのぼる。このほか、食事や農業体験のキャンセルもあり、キャンセルの総額は約5億円とみられる。
これに対する対応策としては、新型コロナウイルス収束後に、観光庁などと一体となって需要喚起を行っていくとしている。
農泊の現場への影響は
農泊ポータルサイトを運営する株式会社百戦錬磨の代表取締役の上山康博(かみやま・やすひろ)さんによると、2月以降続々と海外からの予約のキャンセルが続き、売り上げは9割減、4月の予約数はほぼゼロだという。
また日本人客については、2月の末からテレワークで仕事をする人が増え、また学校も休校になったことから、家族連れなどが別荘感覚での農泊の利用が一定数あったとのこと。しかし、3月下旬からの移動自粛の要請などで、いったん入った予約も多くがキャンセルとなった。前年から入っていたゴールデンウィークの予約がまだ残ってはいるが、今後キャンセルになるのではないかとみている。
一方、実際に農泊に携わる農家への影響については、農泊自体が収入の主軸という農家は多くなく、全く収入がなくなったとの声は聞かないそうだが、観光客との交流などを楽しみにしている農家も多く、気落ちしている人もいるという。また、古民家の改修などの投資をしている場合もあり、経済的な影響はさまざまだ。
新型コロナウイルス収束後の農泊とは
上山さんは「海外からの観光客の皆さんにやっと日本の地方の良さが伝わり、中でも農泊はディープな日本の生活そのものが味わえるものとして脚光を浴びつつあったので、今回の新型コロナウイルスの影響は大変残念」としながらも、コロナ収束後の需要の揺り戻しを予測しているという。
また、今後の都市生活者のライフスタイルに影響を及ぼす可能性については、「今回のことでテレワークが増え、実際に出社しなくても仕事に支障がないと実感した人も多いのでは。そうなると、地方と都市に2つの拠点を持つ“デュアルライフ”を真剣に考える人にとって、試しに農泊を利用するというのはとても有意義だと思います」と、地方への人の流れについても言及した。
今後について「コロナ収束後、農泊は一気に盛り上がります。その時のために今は投資をするべき時と考え、農泊の受け入れ態勢やオンラインでのコンテンツ紹介や予約のシステムを充実させ、その時に備えたいと思っています」と、来年以降の需要の復活に期待を寄せた。