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新規就農 有機栽培農家の実情に迫る 高倉農園@福岡県糸島市

鶴田 祐一郎

ライター:

連載企画:有機栽培の現場に迫る!

新規就農 有機栽培農家の実情に迫る 高倉農園@福岡県糸島市

農業系Podcastノウカノタネのパーソナリティー・つるちゃんが、新規就農・有機栽培が盛んな福岡県糸島市へ赴き、その実態と有機農業の未来について現場取材してきました!
有機農業やオーガニックって、イメージだけでとらえられることが多いように思います。しかしその実態とは……? 意外な有機農業の現状について、また新規就農して数年経った彼らが有機農業の未来をどう見ているのか、リアルな現場からお届けします。

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もしあなたが有機栽培、オーガニックで新規就農するならどこが良い、と考えたときに、九州の福岡県糸島市を候補から外す訳にはいきません。よくある農村と漁村が中心の地域なのですが、福岡市街地に近く、全国からの移住先としてとても人気の地域です。

有機栽培

ノマドワーカーやアーティストなどのクリエイティブな若者が集まる場所でもあり、おしゃれでおいしいお店も多い一方で、昔ながらの農村と漁村エリアでは空き家問題、高齢化問題などを抱える、二面性が強い地域です。

糸島市には、全国にあるJA直売所のうち売上高が日本一(2016年度、日本経済新聞調べ)となった直売所「伊都菜彩(いとさいさい)」があります。これができたことによって、販路が保証されやすくなった小規模農家の販売力が強くなり、糸島市としても新規就農の条件を緩和するなどハードルを下げることで、全国からたくさんの小規模新規就農者を集めることとなりました。

もちろん多くの地元農業者も大変活躍しているのですが、この連載では、新規就農した有機栽培農家3人に焦点をあて、有機栽培の現状とこれからについて迫っていきたいと思います!

有機栽培

一人目は、高倉農園の高倉雅昭(たかくら・まさあき)さん。
糸島市で有機無農薬のショウガや多品目の季節野菜を栽培している新規就農者です。
京都出身で、映像関係の仕事をしていたのですが、5年前に農業を志すこととなり福岡へとやってきました。

有機栽培

合計1ヘクタール程の圃場(ほじょう)で多品目栽培を行っています。取材をした1月は作目が少ない時期になるそうなのですが、それでもなんと40品目以上の野菜が植わっていました。

有機農業を始めた動機

高倉さんはなぜ糸島に来て農業をしようと思ったんですか?
福岡県南部で農業をやっている親戚がいたので、福岡でやろうとは思っていました。でも、糸島っていう素敵なところがあるよって聞いたもので。個人的にも一回来たことがあって、その時からすごく良いなと思っていたのもありました。伊都菜彩の存在も大きかったんですが、何より海が奇麗じゃないですか? やっぱり糸島の海にあこがれはありましたね。

糸島への移住を決断する理由に海をあげる人はとても多いですよね。でもなんで農業を、しかも有機栽培でやっていこうと思ったんですか?
前の仕事で撮影をしていて、農家さんと接していた時に、こういう職業って良いなと思ったんですよね。
そして、僕としては、当時農業を始めようと思って有機栽培以外の選択を考えづらかったというのが正直なところです

小規模で回そうと思ったら、という意味ですか?
いえ、確かに経営的な問題もありますけど、今の時流として、完全に新規で参入するときに慣行農業を選ぶための理由が、僕のいた環境では見いだせなかったのかなぁと思います。

有機栽培の実態

有機栽培の肥料

有機栽培

実際に畑の様子を見ていると、青々としていますね。欠乏症状等も出ていないようです。肥料はどんなものを与えるんですか?
牛ふんとぼかし肥料に、あとはミネラル成分をいろいろと……たくさんあるんですが。

例えばどんなものですか?
カルシウムとマグネシウムは炭酸苦土石灰や、カキ殻を使ってます。水溶性のマグネシウムも別で入れるんですが、鉄やマンガンや他の微量要素も……。

そういう成分を配合して製品化された肥料があるんですね。
はい。有機JASを取得しているものです。すごく高くつくんですけどね。

なるほど、それだと非常に肥料設計がしやすいですね。
そうですね。肥料成分が満遍なくバランスのとれた状態にしておかないといけないと思っています。ただ、それ以外の外的要因でダメになったときのリスクはやっぱり大きいですね。高いので……。

有機農業のほうが安くつくと思い込んでいましたが、肥料代はかなり高くなるんですね。

農薬を使わないで病害虫から作物を守る

肥料に関しては近年慣行農法も有機主体になってきてはいますが、やはり気になるのは病害虫です。
基本的には防虫ネットで物理的に守る感じでしょうか。

有機栽培

そうですね。ただ、それ以上に肥料管理で病害虫を寄せ付けないことを意識します。BLOF(ブロフ)理論はご存じですか?

ある程度は……。
(BLOF理論について詳しく知りたい場合は下記リンク記事へ)
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ミネラルである鉄やマンガン、銅などを施用しているのは、基本的にBLOF理論に則った手法を採用しているためです。鉄とマンガン、なによりもマグネシウムは光合成効率をあげるために必要なのですが、銅やカルシウムは物理的に植物の表面を硬くしてくれますので、きちんとバランスのとれた状態を用意することができれば、病害虫にやられるということは少なくなります。

なるほど、高くついた肥料代も、農薬代も兼ねていると思えばやっぱり妥当な値段なのかもしれないですね。

今後の有機農業

有機栽培

最後に、高倉さんはこれからの有機農業はどうなっていくと思いますか?
もっともっと広がっていくと思います! どんどん科学的に解明されていっていますし。海外では日本よりも広がっていますよね。

確かに。日本とは違い、オーガニックが農業のメインストリームに食い込む程の盛り上がりを見せている国もあるようですね。
科学的な説明が追い付いていることは大きいです。大ベテランの人が勘と経験でやる仕事ではなくなっていくんではないかなぁと感じます。

そうかぁ。これは有機農業というよりも、農業全体が新しいフェーズに入ったと見ていたほうが良いですね。
そうだと思いますね。

有機農業は確実に新しい時代へと変化しています。
引き続き有機栽培の現場に迫る!シリーズをお楽しみください。

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