牛飼育頭数はトップクラス!  愛知県半田市ミルキーファームに乳肉複合経営を学ぶ

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牛飼育頭数はトップクラス!  愛知県半田市ミルキーファームに乳肉複合経営を学ぶ

牛飼育頭数はトップクラス!  愛知県半田市ミルキーファームに乳肉複合経営を学ぶ
最終更新日:2020年04月24日

愛知県半田市の農業は酪農や畜産が主体となっています。古くから醸造業が盛んで酒やみりんのしぼり粕(かす)などを牛の餌に混ぜていたことから、半田市の酪農は「粕酪農」とも呼ばれます。近郊酪農で大規模経営体が多く、愛知県における1戸あたりの飼養頭数が、乳肉いずれも第1位(2017年、愛知県調べ)。そんな半田市にあるミルキーファームは、市で盛んな「乳肉複合経営」に取り組むことで安定した経営を続けています。新たな酪農と畜産を目指す榊原守男(さかきばら・もりお)さんにお話を聞きました。

大規模化が進む半田市の酪農

ミルキーファーム

半田市では、2019年9月時点で乳牛が4088頭、肉牛は6370頭が飼養され、1戸あたりの飼養頭数の全国平均が乳牛88.8頭、肉牛54.1頭に対して、半田市は乳牛157.2頭、肉牛235.9頭とトップクラス(半田市調べ)。年々、全国的に飼養戸数は減っていますが半田市全体の牛の飼養数はそれほど変わらず、1戸あたりの牛の飼養数は増加傾向にあり、大規模化が進んでいます。

ミルキーファーム

JR半田駅前にある「知多酪農発祥の地 由来」の碑。1881(明治14)年頃、ミツカングループ四代目の中埜又左衛門が、滋養と健康のために自家用で乳牛を飼ったのが始まりです

ミルキーファーム

半田市のある知多半島には、知多牛というブランド牛があります。出荷月齢が22カ月齢以上で、かつ知多半島で1年以上肥育された交雑種の肉牛です。飼育システムに特徴があり、知多牛を飼育しているほとんどの飼育場では子牛の出産から飼育、出荷まで同じ農家が育て上げます。知多牛は比較的手頃な価格で味が良いことから、大阪市場で高い評価を得ています。

ミルキーファームが取り組んできた乳肉複合経営とは

ミルキーファーム

左の建物は、乳牛と子牛を飼育している牛舎。右側は、ふんを堆肥(たいひ)にするための施設。敷地は両方合わせて約8000平方メートル

半田市の市街地からほど近い山寄りにあるミルキーファーム。牛を飼育する施設は2カ所に分かれていて、ホルスタイン170頭と知多牛270頭を飼養しています。現在スタッフは榊原さんを含めて5人。交代で休みをとるようにしていますが、牧場の定休日はスタッフ全員を休ませるために月1の頻度で酪農ヘルパーを利用しています。

榊原さんが実家の経営するミルキーファームに就農した1981年頃、牧場で飼育していたのは乳牛のみでした。1979年に生乳計画生産(※)が始まって以来、半田市周辺では乳牛と自家用交雑種(F1)の肉牛の両方を肥育する「乳肉複合経営」が行われるようになったのです。ミルキーファームも、榊原さんが就農後、肉牛を育てるための牛舎など準備を整えて乳肉複合の経営をスタートさせました。
半田市では、明治時代に酪農が始まり食肉文化の普及に伴い畜産も広まったとされています。乳肉複合経営を行う農家は、やはり生乳計画生産が始まった時期に本格的に切り替えたところが多いようです。
肉や乳を生産するために動物を飼育することを畜産といいます。そのなかでも、肉牛の生産には母牛に子牛を産ませ育てる「繁殖」と、子牛の哺育・育成を行い大きく育てる「肥育」という工程があります。牛やヤギなどを飼育して乳や乳製品を生産する酪農とは異なる仕事です。どちらも同じ牛に携わる仕事ですが、必要とされる技術も飼育方法も違います。そのため乳肉複合は難しく、導入している農場は全国的に珍しいです。
「知多牛は、暑い夏のお産を楽にしてあげるために、雌のホルスタインに体が小さめの雄の黒毛和牛を交配したのがきっかけで誕生した牛と言われています。評判は上々で、肉質が良く、良い値段でたくさん売れていたそうです。生乳の生産調整後の収入確保のために本格的な交雑牛の生産を始め、ブランド化したと聞いています」と榊原さんは話します。生まれた子牛を肉牛として肥育して販売する一方で、母牛から搾った生乳も販売できるハイブリッドな生産方法が「乳肉複合経営」なのです。

※ 当時、生乳生産が需要を上回り、乳製品の在庫増加が問題になったことから、生乳の需給を安定させるために始まった生産者団体の自主的な取り組み。

乳肉複合経営のメリットとは

乳肉複合経営は、乳牛または肉牛だけ育てるよりも、両方を飼育することでコストの削減になります。肉牛を育てるためには母牛(乳牛)の餌代がかかりますが、乳も販売できれば収入がプラスになるためです。ミルキーファームでは先に乳牛の飼育を始めていましたが、子牛から市場に出荷できるレベルの知多牛を育てるためには時間をかけた飼育が必要です。子牛にはミルク、育成期には牧草、肥育期には穀類など、成長過程に合わせて飼料の配合方法や飼育環境の改善などを繰り返しながら、納得のいく肉牛を育て上げます。

乳牛は太りすぎると種が付かなくなったり、病気になることがあります。また、肉牛には格付けがあり、A5ランクが最高ランクですが、そう簡単にできる肉質ではありません。榊原さんもはじめのうちは乳牛を太らせてしまうなど、失敗したこともあったそうです。そんな経験から学び、牛の血液検査やデータ分析、飼料の変更や環境の改善などの取り組みを始めました。そうすることで健康な牛が育ち、牛肉や生乳の品質向上と搾乳量のアップにつながり、収益が上がります。牛乳消費量の減少や飼料の価格高騰など、畜産業を続けて行くうえでさまざまな問題はありますが、酪農と畜産を組み合わせることでメリットが生まれ、安定した経営を実現させます。

ミルキーファーム

知多牛を肥育している牛舎。敷地の広さは約3000平方メートル

ミルキーファーム

ミルキーファームの朝は7時にスタートします。牛舎の掃除が済んだら牛たちのごはんの時間です

効率的な生産で規模拡大。作業の自動化で生産効率をUP

牛舎での作業効率を向上させるため、19年前に自動搾乳ロボットを導入した榊原さん。勉強のために他の牧場に視察へ行くことも多く、搾乳ロボットの管理システムは北海道の牧場で見て「なんて便利なんだー!」と感動してすぐに導入したそうです。

オランダの搾乳ロボット「アストロノートA2」(レリー社)は、24時間搾乳はもちろんのこと、あらかじめ牛の個体登録をすることで、健康状態や搾乳した回数や量、搾乳した生乳の品質をロボットがチェックします。受精適期や危険性が高い疾病などの専門的なデータも牛から採取し、それらのデータはパソコンで見ることができます。

搾乳ロボット

ロボット内給餌で自発的訪問を促します。牛が餌を食べている間に、搾乳ロボットは乳頭をブラシで洗浄し、赤いセンサーで位置を確認して搾乳します

【最新の搾乳ロボットを動画で見てみよう!】レリー アストロノートA5(日本語訳)
「CORNESAG」コーンズエージー

搾乳ロボット

「搾乳ロボットは1台が何千万円もします。ですが、24時間体制のアフターサポートサービスが受けられるので、万が一トラブルがあっても安心なんです」と榊原さん。搾乳ロボットを導入したことで作業負担が大幅に軽減したことから、乳牛の飼養頭数を80頭から170頭に増やすことができました。

牧場で働くにはどうしたらいい? 就農するためにしたこと

搾乳ロボット

ミルキーファームは、先代の父・紳仁(しんじ)さんが60年以上前に5頭の牛からスタートしました。榊原さんが就農してからは39年目になります。榊原さんに酪農家になったきっかけを聞きました。「私が生まれた時から家に牛がいて酪農を営んでいましたから、将来は家業を継ぐのが当たり前だと思っていました。農業高校を卒業した後、岡崎市にある農業大学校で酪農を2年間学び、卒業してすぐに実家の牧場に就農しました。牧場で働いている人のほとんどが農業高校や大学を卒業して牧場に就職します。もし、就農を考えているのなら、まずは農業関係の学校へ行って酪農を現場で体験しながら学ぶのが一番早いと思います」

生産した生乳と牛肉は、各組合から市場へ

ミルキーファームで搾乳した生乳は、毎日すべて県酪農(愛知県酪農農業協同組合)が引き取りに来て、他の牧場の生乳と一つにまとめられ、乳業メーカーに販売されます。取引金額は、生乳の加工品目によって違います。
知多牛は、愛知県酪農農業協同組合の尾張支所に所属する知多牛肉牛部会から、主に大阪市食肉市場に出荷され、そこから東海、近畿方面に流通しています。
「収入に関しては乳牛の方が安定しますが、肉牛は良い牛を育てると枝肉共進会で表彰されるため、やりがいがあります」(榊原さん)

今後の展望と、酪農家を目指す人へのメッセージ

搾乳ロボット

榊原さんは今後、作業効率を上げて時間に余裕ができたら、自社牧場でのチーズ作りにも挑戦したいそう。「最近仲良くなった知人が、モッツァレラチーズの作り方を教えてくれたので、牧場のミルクで作ってみたんですけど、すごくおいしかったです」

酪農家を目指している人に伝えたいことは?と聞くと、「酪農や畜産の仕事は体力が必要なので、憧れや動物が好きという気持ちだけでは続けるのは難しいかもしれません」とのこと。「まずは、実際に牧場で体験してみることから始めてみてください。酪農ヘルパーの仕事からスタートするのも仕事内容が把握できてよいでしょう。いちから牧場を立ち上げるのは、莫大な費用がかかってしまうので難しいと思います。半田市も酪農は盛んですが、北海道は特に牧場も多く働き手を募集している酪農家もあると聞いています。そういった酪農、畜産の本場でぜひ体験してくださいね!」

* * *

確かに酪農の仕事は、体力が必要ですね。一方で搾乳ロボットなど作業効率をアップさせて牛を管理するための技術も進んでいることを知り、乳肉複合経営のメリットについて学ぶこともできました。酪農や畜産、牛に興味がある人は、まずは体験してみてはいかがでしょうか。

ミルキーファーム
半田市経済課 食べる!買う!まるごと知多牛(PDF)

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