品種改良とは? メリットとデメリット、私たちの生活への関わりを考える

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品種改良とは? メリットとデメリット、私たちの生活への関わりを考える

品種改良とは? メリットとデメリット、私たちの生活への関わりを考える
最終更新日:2020年06月09日

豊かになった私たちの暮らし。77億人を超えた世界の人口。それを支える技術はたくさんある。品種改良はそのひとつであり、貢献度と重要度で測れば上位に位置するに違いない。ところが品種改良そのものについては、まだいまひとつ世間の理解が進んでいないように見える。人類をここまで繁栄させ、また人類の将来を占う技術でもある品種改良。そのメリットとデメリットを解説しよう。

「品種改良」という言葉の意味

農業における品種とは、農作物や家畜の種類のことをいう。具体的に品種名を挙げてみると、イネの「コシヒカリ」、ジャガイモの「男爵」、リンゴの「ふじ」、ウシの「ホルスタイン」、ブタの「バークシャー」等。私たちにとって品種は、とても身近な存在であることがわかる。
一方で野生種という単語がある。こちらは文字通り、自然のまま地球上に存在する生物の種類をあらわす。先ほどの例に当てはめれば、イネ、ジャガイモ、リンゴ、牛、豚のご先祖様にあたる。

したがって品種改良とは、いまある品種をより良くする開発行為であるし、元をたどれば有用な野生種を大量生産するための栽培化がはじまりなのである。後者については、マグロの完全養殖を思い浮かべてもらうとわかりやすくなるはずだ。

品種改良の方法・技術

品種改良にはものすごく長い歴史がある。最初は野生種をそのまま栽培していた中で、たまたま出現した人類にとって都合の良い性質を持つ株を、選んで増やす、ということから始まった。早く収穫できる株、たくさん収穫できる株、丈夫な株、おいしい株といった具合である。この方法を選抜育種という。

つぎの段階が異なる性質を持つ株同士を交配して、それぞれの良い所どりの個体を作る交雑育種である。品種改良の中心となっているこの技術も、じつはプラントハンターという植物採集を行う人たちによって世界各地から収集された野生種同士が、虫によってタネを結び、見たこともない素晴らしい個体が得られたことから始まったのである。

近年ではトウモロコシ、ダイズ、ワタといった作物で、遺伝子組み換え技術によって育成された品種も世界各地で栽培されている。

品種改良の功罪(メリット・デメリット)

改良という言葉がついているだけに、品種改良は良いことばかりだと思われがちだが、じつはひとつ大きな問題を抱えている。その問題点とは、自然の摂理に背く行為だという事実だ。
すなわち現代の品種はそのほぼほぼすべてが、自然のままに任せていたら生まれ得なかった生物なのである。この観点では、品種とは、人類を守るために町を破壊してしまうウルトラマンに近い存在と言ってもよいのかもしれない。

まずは品種改良のデメリットを挙げてみよう。

①遺伝的な多様性が失われている
19世紀アイルランドのジャガイモ飢饉(ききん)のように、ごく限られた品種を生産していると、ひとたびその品種が抵抗性を持たない病気が発生すると当該作物自体が全滅という事態も起きかねない。

②環境破壊につながる
大量生産するようになった品種を好む病気や害虫が発生し、それを防ぐために農薬の使用量が増える。


メリットの方はわざわざ挙げるまでもないだろう。

①消費者にとっては、おいしい食料をいつでも安く買えるようになり、
 
②流通関係者にとっては、いつでもどこでも規格の揃った売りやすい食材を扱え、
 
③生産者にとっては、栽培しやすくなるうえ生産量を増やせるようになり、
 
④開発者にとっては、ヒット品種を生み出せば大儲けできるようになる

と、近江商人の三方よしどころか、四方よしである。

念のために損している人はいるのかを確認してみても、この開発から消費者までの大くくりなバリューチェーン上には見当たらない。

品種改良を身近な事例に置き換えて考えてみると

トウモロコシでいえば、野生種はいまのトウモロコシと似ても似つかない姿をしている。つぶつぶの子実の数にいたっては、10数粒にすぎない。現代品種はだいたい400~800粒であるから、品種改良の成果がどれほど大きいかは明らかだ。

ふだんあまり意識していないかもしれないが、キャベツの仲間もわかりやすい事例である。キャベツの学名は、ブラシカ・オレラセアという。野生種の姿は強いてあげればケールに近い。そこから、柔らかい葉を食べるキャベツ、つぼみを食べるブロッコリーやカリフラワー、茎を食べるコールラビ、葉を鑑賞するハボタンなどに、それぞれの目的に合わせて改良されてきて、それぞれが似ても似つかないいまの姿になったのだ。

品種改良の目的についてさらに理解を深めるには、別のものに置き換えて考えてみるとわかりやすい。そこで私たちの身の回りで改良されてきた事例をいくつか挙げてみよう。

  • 固定電話 から 携帯電話 への変化
  • ガス台 から 電磁調理器 への変化
  • ろうそく から LED への変化
  • 馬車 から 自動車や電車 への変化
  • 和服 から 洋服 への変化
  • わらじ から 靴 への変化
  • 等々、少し考えればいくらでも出てくる。

そしてそれぞれのメリットとデメリットも簡単に考えつくに違いない。

ここで品種改良について抽象度を上げて考えてみると、どのような言葉が思い浮かぶだろうか。

私の場合は、「生活改良」が一番しっくりくる。
言い換えれば、「人類の暮らしを快適にするための知恵の結晶」だ。

みんなで深く考えてみたいこと

最後にみんなで深く考えてみたいことがある。
 
私たち現代日本人を品種に例えてみたら、いったいどうなるだろう?

安全で便利で衛生的な生活に慣れ切った私たちは、ヒトとして改良は進んでいるのだろうか。それとも退化しているのだろうか。

あなたが本気で暮らしたいのは何時代の日本だろうか?

そしてアマゾンのジャングルにケガひとつせずに不時着したとして、あなたは何日間生き延びる自信をお持ちだろうか?

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