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期待を超えるサービスが、既存顧客をつくる【実録!観光農園化レポVol.4】

連載企画:観光農園オープン1年目で満足度No.1を獲った理由

期待を超えるサービスが、既存顧客をつくる【実録!観光農園化レポVol.4】

観光農園を始める場合、初年度は新規顧客獲得のための広報戦略に力を入れるだけではなく、2年目以降も来園してくれるリピーターの囲い込みも大切です。既存顧客の囲い込み、というと難しく感じるかもしれませんが、基本はシンプルで「期待値を超え、満足度を高める」こと。観光農園化レポの第4回は、私たちがお客様の満足度を高めるために実践した方法を紹介します。

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遊び体験サービスの口コミ評価4.9の裏側

ありがたいことに、遊び体験サービス「じゃらんnet 遊び・体験予約サービス」の当農園の口コミ評価の星は5段階評価で4.9(121件/シーズン終了時)で、九州圏内の100件以上口コミのある農園の中ではNo.1です。当農園は「いちごがり写真館」という、イチゴ狩りに写真サービスをつけたプランで売り出したため、イチゴ狩り価格で比べると県内最高値です。そのため、来園前のお客様の期待値が高くなるのは自然なことでしょう。では、その期待値を超えて満足してもらうためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。

口コミで星1がついている理由を徹底調査

まず、満足度を高める前提として、お客様の「満足」に関わる要因と「不満足」に関わる要因を洗い出すために、「じゃらんnet 遊び・体験予約サービス」で評価の高い全国のイチゴ狩り観光農園の口コミをひたすらチェックしました。
私独自の調査でわかったことは、満足度は減点法で評価される傾向にあるということ。例えば、「①赤いイチゴが少ない」「②イチゴ狩りの説明・接客が不親切」「③休憩するベンチがない」と感じて低評価を付けている人が多いです。逆に、この不満足につながる要因をすべてクリアすれば、いくらでも満足度は向上させられると考えました。

そこで私たちは、お客様の期待を超え、さらに満足度を高めるために5つのことを実践しました。

期待を超えるために実践したこと5つ

1. 完全予約制にする

上記にあげた3大不満を一度に解決できるのが「完全予約制」にすることだと考えました。完全予約制にすれば、①来園者が満足に食べられる完熟イチゴを確保できる、②受付時間が決まっているのでイチゴ狩りの説明を一度にじっくりていねいにできる、③来園者数に制限を設けることで休憩スペースの混雑がなくなる、と不満の解消につながります。

私たちは初年度である今年、イチゴ作付け20アールに対し、接客はすべて2人で行うことにして、1日2回、1回につき70人の定員に限った完全予約制を取りました。

2. お客さん同士の会話を増やす

「サービスの満足度に比例するものって何だろう?」と考えたときに、真っ先に思い浮かぶのは「接客の質」ですが、それ以上に私たちが着目したのが「お客さん同士の会話の多さ」です。特に私たちは「思い出づくり」を打ち出す内容で広報しているので、同行者との思い出づくりのために来園している人が多いとすると、グループ内のコミュニケーション量を増やすことは、お客様が潜在的に望んでいることになります。

そこで、会話を増やすために行ったことは3つ。「①品種の数を増やす」「②皿回し体験と写真撮影で、私たちから会話をつくる」「③家族連れの場合、シャイなお父さんを一番楽しませる」
まず、「①品種の数を増やす」については、品種を増やすことで、自然とそれぞれの味を食べ比べます。そこで同行者と「この品種が好み」「この品種は中まで赤いね」などの会話が生まれます。また、それに加え、品種を擬人化したイラストのカードを作って掲示することで、「紅ほっぺちゃんカワイイ」というように、会話に色が出ました。

「②皿回し体験と写真撮影で、私たちから会話をつくる」については、特にカップルや家族連れは、どこか照れ臭くて沈黙してしまう場面も見かけます。そこに農園長である旦那が皿回し道具、私がカメラを持って話しかけに行くことで、自然と会話が生まれます。つまり、私たち夫婦は来園者の「コミュニケーションの潤滑剤」の役割に徹しました。

最後の「③家族連れの場合、シャイなお父さんを一番楽しませる」については、家族の雰囲気をつくるのは「父」といっても過言でないほど、家族の中でお父さんの存在が大きいと感じることが多いです。ただ、多くのお父さんがシャイなので、家族との接し方にとまどっている場面を多々見かけます。そういうとき、例えば私がイチゴの帽子を持って「お父さんが一番イチゴの帽子が似合いますね!」などと話しかけながらその家族と写真を撮ることで、家族間の緊張の糸がゆるむことがありました。

3. 品種を増やし、いつでもおいしいイチゴに出会えるようにする

イチゴ狩り以外のサービスを売りにしても、やっぱりイチゴ食べ放題を目当てで来園するお客様が8割です。つまり、イチゴの味がおいしくなければ、満足度が下がります。
しかし、残念なことにイチゴの味は品種や日によってムラがあります。また、お客さんの「おいしい」と感じる好みは人それぞれです。その好みの差がある中でも、全員の満足度を高めるためには「多品種の食べ比べ」は有効です。つまり、多品種あることでお客さんは好みの品種に出会うことができ、「いつ来てもおいしいイチゴが食べられる」というメリットになります。

4. 帰宅後も今日を振り返るきっかけをつくる

私たちは、撮影した写真データをその日のうちにLINEで送るサービスを設けました。これにより、その時の写真を見返すことで楽しかった体験を思い出したり、その写真を同行者とシェアしたり話したりすることで、満足度の高い記憶に残る体験、つまり思い出として定着する体験にすることを狙いました。

5. 過剰と思われるくらいのサービスをする

当農園のイチゴ狩り料金は県内最高値。ただ最高値に設定しただけではなく、「私たちがしたいサービスを心ゆくまでした上で納得できる価格」に設定しました。特に写真撮影サービスでは、私自身が母になってから「娘とパパのツーショットはあるけど、私と娘の写真は撮ってもらう機会がない」と寂しく思うことが多々あったので、母娘の写真撮影は特にやりたいサービスでした。その他、各テーブルに濡れティッシュを置く、授乳室やおむつ台の設置、お子さん用のエプロン貸し出し、行き届いた清掃をするなど、私たち自身が「あったらいいな」と思うサービスをそろえました。

また、サプライズの相談も受け付け、その演出としてケーキを事前購入し、お客様自らがイチゴでデコレーションできるサービスも行い、喜ばれました。

中には「結婚式用の写真撮影に協力してほしい」という声もありました。

少し「過剰」だと思われるくらい、私たちが納得するサービスをすることで、結果的にお客様の満足度を向上させられたと、LINEの返信や口コミで感じました。

今回は観光農園における満足度の高め方を紹介しましたが、これはイチゴづくりの技術がベースにあってこそ成り立つものだと思います。当農園もこの点はまだまだ技術が足らず思い悩まされますが、やっぱりイチゴがおいしいときの方がお土産用のイチゴの売り上げは高く、お客様の「おいしい」という声がよく聞こえてきます。おいしいイチゴが食べられて、さらにサービスにも満足する。そんなイチゴ観光農園を目指していきたいです。

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