1. 県内最高値というブランド価値
客単価を上げる一番単純な方法は、イチゴ狩りの料金を上げること。私たちのイチゴ狩りは最高で2500円と、県平均より1000円ほど高い県内最高値で設定しました。しかし、お客様はできるだけリーズナブルに楽しみたいと思う人が大半です。県内最高値でお客様に選ばれるには、それ相当のサービスが必要です。そこで私たちは写真撮影や皿回し体験など、イチゴ狩り以外の「思い出づくりのためのサービス」に価値を置くことで、この価格を実現させました。
さらに県内最高値のポジションを取るのであれば、県内最高値の農園よりたった100円程度高くするのではなく、他の農園に埋もれない、誰が見ても高いと感じる価格にする必要があります。つまり、圧倒的な最高値にすることが差別化になり、それがブランドになるのです。実際に地域で「くらうんふぁーむのイチゴ狩りは高い」といううわさが広がりました。これこそ、私たちの狙い通り、ブランディングとしては成功です。
2. 摘み取りプランはやらない入園料制
「イチゴ狩り」というと、制限時間内に好きなだけイチゴを食べられる「食べ放題」プランと、摘み取ったイチゴの重さで料金が決定する「量り売り」プランの2つが一般的です。量り売りプランは、少量食べたいお客様にはうれしいプランですが、客単価で考えると食べ放題の半分以下になります。私たちは写真撮影や皿回し体験なども含めたサービスを1つの商品として売り出したかったので、お客様によって価格が変わる量り売りプランは体験サービスを含めた価格設定がしづらいと判断し、食べ放題のみの入園料制を採用することにしました。もちろん、入園料を払って入園したお客様には、お土産用として量り売りしました。
3. 価格は松竹梅の法則
よく価格設定の際に使われるのが「松竹梅の法則」。これは、同じ商品の価格帯を3つ設定すると、多くの人は真ん中の価格帯の商品を購入するという心理傾向のことで、ゴルディロックス効果とも呼ばれます。
その法則にのっとり、私たちは食べ比べられる品種に差を出し、3つのプランを用意しました。しかし、予想外なことにお客様の8割が一番高いプラチナプランを選びました。おそらく、イチゴ狩りはシーズン1回ものという人も多いので、下位プランからたった400円払うだけで、13品種を食べ比べられることに魅力を感じたのだと思います。
また、イチゴ狩り価格は多くの媒体で最低価格が提示されるので、Web上では見かけは安く感じるという効果もあります。
(もちろん、誤解を生まないように、掲載ページには食べ比べる品種の数によって値段が変わることは目立つように記載しました。)
4. イートインメニューで客単価アップ
客単価アップの秘策、4つ目は定番のイートイン。私たちは保健所の許可がおりる調理施設を確保することが予算的に難しかったので、中古のキッチンカーを50万円で購入。メニューは「アイスクリーム」と「ドリンク」に絞りました。
アイスクリームは当初、ソフトクリームにする予定でしたが、業務用ソフトクリームのマシンは中古でも30万円以上かかることが分かり、アイスをカップによそって提供しました。この方法ならば、アイスを保管する冷凍庫を、中古であれば1万円弱で用意できます。
アイスクリームは当農園のイチゴを練り込んだストロベリーアイスにしたかったのですが、予算の都合上、バニラアイスクリームにイチゴジャムをのせたものを提供しました。また、アイスクリームはハウス内の温度が「ちょっと暑いな」と感じるくらいから売れ行きが良くなるので、戦略的に「20度」くらいを保つようにしました。
5. お土産で客単価アップ
最後の秘策は、お土産。私たちはお土産の数を絞り、「食べ放題とは別に、持ち帰る用の摘み取り」「ジャム3サイズ」「皿回しセット(その名のとおり皿回しの道具です!)」の3つを用意しました。
お土産の売り上げと、イチゴ狩り体験の満足度は比例し、「イチゴの品質が良ければ良いほど」「皿回し体験が盛り上がれば盛り上がるほど」、摘み取りや皿回しセットが売れました。
イチゴジャムは、アイスクリームに添えるジャムとしても使用しているため、アイスクリームを食べたお客様は、自然と試食していることになります。そこでおいしいと感じると、お土産にも買うという傾向がありました。
また、ジャムも松竹梅の法則にのっとり3サイズ用意し、中サイズが一番売れました。
さらにお客様の意見を聞き、在庫管理も考え、シーズン終了後にサイズを1つに絞ってパッケージを刷新。ギフト用でも販売できる体制にしました。
商売をする上で、なかなか正解が見つからない「商品価格設定」。私たちは最終的には「自分たちが気持ちよくサービスできる値段で、気持ちよくお客様に楽しんでもらえること」を大切に考えて設定しました。値段に見合う価値を感じてもらえる商品やサービスは社会の変化とともに変わるので、私たちも常日頃からアンテナを張り、考え続けます。