タマネギの播種と育苗
タマネギの栽培は、まず均一で良質な苗作りからスタートします。
本圃(ほんぽ)10平方メートル分の栽培には、約0.5平方メートルの苗床が必要です。苗床は肥料を10平方メートル当たりチッソ成分で約70~100グラム施し、畝の高さは15センチ程度にします。
床面が平らになるように苗床を準備します。床面に起伏があると、覆土や水分にムラが生じやすく、発芽や生育に差が出やすくなります。播種は管理のしやすい条(すじ)まきがおすすめです。深さ8ミリほどの溝を8~10センチ間隔でつけ、タネを約1センチ間隔でまきます。
覆土は溝が埋まる程度とし、その上にもみ殻などの有機物を被せ、しっかり潅水します。特に、育苗初期は適湿を保つようていねいに潅水します。約1週間後に発芽してきますが、苗が混みあっているところは、本葉2枚目が見えるころまでに間引きし、間隔をそろえておきます。育苗期間は約55日、葉枚数3~4枚、長さ25センチほどの苗を目標にします。
タマネギの定植・施肥管理
堆肥(たいひ)や緑肥などの有機物は、少なくとも定植の約1カ月前に施しておきます。栽培に必要な本圃の肥料は10平方メートル当たりチッソ成分で約200~250グラムです。極早生・早生種のような早期出荷用品種は、マルチ栽培で全量を元肥とします。貯蔵種を露地栽培する場合は、半分を元肥とし、残りを追肥として投入します。
苗とりでは、できるだけ根を切らないようにすることが、活着をよくするポイントです。定植は、葉の分岐点が埋まらないように、2~3センチ程度の深さで植えましょう。
年明けからの貯蔵種(中生・中晩生)の追肥は、1月上旬、2月上旬、3月上旬の3回に分けて行います。1月の追肥は、根張りを促進して葉数分化を促し、2月は低温期に肥効を高めてチッソ欠乏による抽苔(ちゅうだい)を抑える効果があります。3月上旬は止め肥になります。多肥や止め肥の遅れは、食味や貯蔵性の低下、過繁茂による病害虫の発生にも影響しますので注意しましょう。
タマネギの収穫・貯蔵
タマネギは収穫時期が近づくと、葉が徐々に倒伏します。全体の8割ほどが倒伏して、1週間後くらいの晴天日をねらって収穫しましょう。
1~2日ほど天日干しして十分に乾燥させ、雨の当たらない風通しのよい場所で、つり貯蔵やコンテナ貯蔵で保管します。
貯蔵中に発生する病害の多くは、圃場(ほじょう)で感染したものです。収穫時の十分な乾燥に加えて、栽培中の圃場の排水対策や適切な施肥管理を行いましょう。
プロがお答え!栽培Q&A
Q.育苗中に葉を切っても大丈夫ですか?
A. 苗が旺盛に生育して、倒れて曲がってしまったり、過湿で病気になったりと、お困りのこともあるかと思います。
そのような場合は、葉が倒れる前に長さ20センチ前後に切るとよいでしょう。一度に切る長さは5センチ程度とし、短く切りすぎないことに気を付けます。
切り口からの病気の感染を防ぐために、切り口が早く乾燥する晴天日の午前中に行いましょう。定植時も、苗を持ちやすい長さに切っておくことでスムーズに植え付けを行うことができます。
抽苔(トウ立ち)を防ぐには
タマネギはグリーンプラントバーナリゼーション型といわれ、一定の大きさに達した苗が低温に一定期間あうことで花芽を形成し、日が長くなるにつれて抽苔が促進される野菜です。
抽苔を防ぐには植え付ける苗の大きさを直径5〜6ミリ(鉛筆の太さ程度)にすることがポイントになります。大苗を定植すると抽苔や分球を生じやすくなります。逆に、小苗になると肥大が悪くなり収量が低下することにも気をつけなければなりません。
まずは栽培する品種、作型を確認し、それに応じた適期播種を心掛けます。チェックシートを用意しました。ご自分で設問に答えながら原因を探ってみましょう。
ブリーダーのおすすめ! 秋種ワークショップ
直売所向けには、中生の貯蔵種としては熟期が早く作りやすい「ターボ」がおすすめです。梅雨入り前に収穫でき、玉太りもよい「ターボ」は、切り玉出荷と年内までの貯蔵出荷、どちらにも適した品種です。貯蔵出荷をねらう場合には、密植によりかたくしまった中玉に仕上げることがポイントになります。
抗酸化作用、抗炎症作用、動脈硬化予防……機能性で選ぶなら
「ケルたま」は機能性成分ケルセチンを秋まき従来品種に比べて約1.5倍多く含んでいる品種です。ケルセチンはポリフェノールの一種で、抗酸化作用、抗炎症作用、動脈硬化予防などの効果があることが報告されています。
玉のしまりがよく、皮は密着性にすぐれており、濃赤褐色で美しく仕上がります。貯蔵中の萌芽や尻部の動きが遅く、3月までの長期貯蔵が可能です。
中生種と同様、9月中下旬に播種し、11月中下旬までには定植(中間地標準)、スムーズな活着を図ります。収穫時期は晩生の6月中旬ごろとなりますので、梅雨の晴れ間をねらって収穫し、圃場でしっかり乾燥させることが長期貯蔵させるためのポイントです。
寒さで葉が傷みにくい品種で、一番出荷に挑戦
早期出荷には「スパート」をおすすめします。4月中下旬から収穫ができ、甲高でそろいのよい大玉に仕上がります。育苗時から生育が旺盛であること、抽苔や分球の発生が少ないこと、また冬の寒さに対しても葉が傷みにくいことから、適応性が広くどのような天候の年でも安心して作りやすい品種です。
執筆:タキイ研究農場 坂本和貴(さかもと・かずき)