簡単にできるはずのタマネギ栽培ですが、ここ数年、筆者の元には多くのタマネギに関する相談が相次いでいます。多くは玉の肥大に関することなのですが、ちょっと増えてきて困っているのが、気候によっては猛威をふるう“べと病”に関してです。なかなか治療は難しいのですが、予防方法はいくつかあります。
それも含めてここでは、家庭菜園でタマネギを育てる方に向け、栽培のコツや要点を分かりやすくまとめたいと思います。
栽培カレンダーに沿ってタマネギの一生を見ていきましょう。
タマネギ育苗のしかた 種まきから草管理まで
種まき
タマネギ栽培は比較的容易であると言っておきながらなんですが、種からタマネギを育てようと思うとそれなりの手間ひまを要してしまいます。初めて育てる方や、あまり畑仕事を増やしたくない方には苗の購入をお勧めします。
とはいえ、ここ数年は異常気象が重なり、タマネギ苗の流通が不安定でなかなか入手できない!という行き場のないお怒りの相談も多いので、種まきからの栽培方法を説明します。購入苗をご利用の方は飛ばして「購入苗を利用する場合」に進んでください。
タマネギの苗作りは、基本的に畑の空いたスペースを利用しておこないます。
1平方メートルあたり堆肥(たいひ:牛ふんや腐葉土)を2キロと、苦土石灰を100グラム程度施し、畑を耕します。
1週間空けて、化成肥料を120グラム程度(窒素-リン酸-カリの含有率が8-8-8の場合)施し、畝を立てます。
約8センチ間隔で筋まきします。パラパラと重ならない程度に隙間なく種を落としましょう。種を落とす位置に板などを押し当てて均一にへこませておくことで、発芽がよく揃います。
5ミリ程度の覆土をし、しっかりと水やりをしておきましょう。乾燥すると発芽に失敗しやすいので、発芽まではワラや不織布などで覆っておくと良いでしょう。
間引き・除草
発芽後2週間の管理が何よりも重要な成否の分かれ道です。

1センチの間隔に間引く
本葉が2枚に分かれたころに、約1センチ間隔になるように間引きするのですが、タマネギは初期成育が遅く、すぐに雑草と混ざってしまいどれがタマネギでどれが雑草なのか分からなくなってしまいます。
元々雑草が生えていた場所に植える場合は、雑草がタマネギよりも先に成長してしまうことを防ぐためにも、堆肥と石灰は1カ月以上前に施しておいて、余っている黒マルチなどであらかじめ被覆しておきましょう。種まき直前にマルチを剥がしてタマネギをまけば、地表面の雑草の種がマルチの熱で死滅しており、タマネギだけを生やすことができます。除草剤散布に抵抗がある方はこの方法も試してみてください。
購入苗を利用する場合
よほど大面積での栽培をしないのであれば、購入苗の利用をお勧めします。
タマネギ苗は10月頃からホームセンターや園芸店で販売されます。タマネギ苗は、あまり青々として元気が良すぎるものを購入すると、最後の収穫時に葉ばかり立派に育ち、肝心の玉が太らず後悔することがありますので、ほどほどに元気が良いもの(鉛筆より細いもの)を選択するようにしてください。一見しおれていて、もう枯れそうだなと思えるような苗でも、畑に植え付ければすぐに元通りに復活しますので安心してください。「一旦枯らした方が根付きは良い」と言う人もいるくらいです。もちろん枯らしてはいけませんが、ぐたっとしおれた苗の方が、ピンピンしている苗よりも良いタマネギができるように思います。
タマネギの植え付け方
植え付ける畑に1平方メートルあたり堆肥2キロ、化成肥料150グラム程度(8-8-8の場合)を投入し、畝をつくります。
普段石灰を入れている畑であれば、わざわざ石灰を入れる必要はありません。
12~15センチの間を空けて植え付けます。タマネギを栽培するために、そのような幅で穴の開いたマルチ資材も販売されていますので、それを利用すると分かりやすいでしょう。
基本的に、長い期間あまり手間をかけないで栽培するものなので、マルチの使用をお勧めします。
深植えし過ぎないことがとても重要です。根元の白い部分が見える程度が目安です。
根が長くて邪魔であれば、1センチくらいに切り詰めた方が植えやすく、また新しい根も出やすくなるのでお勧めします。
タマネギの植え付けは、12月中旬までと説明されることが多いのですが、遅れても玉が多少小さくなるだけで、収穫に至ります。年末忙しくて植え付けられなかったとしても、苗を捨てるくらいなら、正月明けにでも植え付けておきましょう。

無理に直立させなくても、地面についてさえいれば垂直に起き上がります
タマネギの管理
生育適温は15℃前後です。春までの長い期間、ゆっくりと成長するのでやるべきことはあまりありません。しかし植え付けた後にも注意しておかなければならないことが主に2点あります。1つは追肥、もう1つは病害虫の防除です。
タマネギの追肥
タマネギの栽培管理において追肥はとても重要です。タイミングがずれると玉の肥大が悪くなることもあります。
最も大切な追肥のタイミングは2月下旬です。これが遅れて3月以降になると、肥大にも影響しますが、貯蔵期間が極端に短くなってしまうので、必ず2月いっぱい、どんなに遅くても3月上旬までに終わらせましょう。
1月はほとんど成長していない時期なのですが、この時期に肥料が切れているとトウ立ち(花、つまりネギボウズができること)の可能性が高くなるので、心配な方は、もったいないようですが1月にもパラっとまいておきましょう。
べと病の予防
非常に相談の多い病害です。
葉先の方から黄化し(この時点では判明しにくい)、徐々に白いカビが現れます。最も重要な対策は、畑の排水をよくしておくことです。もしも発生した場合には、3月中下旬頃に畑を見回り、罹病株を引き抜いてしまいましょう。3月下旬以降、病原菌が活発になりどんどん浸食していきます。
5月頃、収穫直前に全滅しそうになってからよく相談が来ますが、3月下旬の対応がとても大切です。
もっとも安価で入手の容易な対応できる薬剤としては、ジマンダイセン水和剤やダコニール1000があります。これもやはり3月下旬に散布することでべと病を防除することができます。
タマネギの収穫時期
タマネギの収穫時期は、早生品種で5月、晩生品種で6月下旬ごろになります。自分の植えたタマネギがどちらか分からない人は来年からちゃんと見て買ってください。
早生品種は収穫後すぐに食べると生でも軟らかくておいしく、中晩生品種は長期保存ができるという利点があります。
収穫が近付いてくると、風も吹いていないのにタマネギの葉が倒れ始めます。畑全体の80%が倒伏したころが収穫適期で、よく晴れた日を狙って収穫します。
晴れ間が続いていることが重要で、収穫後、掘り上げたあとそのまま2~3日間畑に放って天日干ししておくことで乾燥し、長く保存することができます。
長期保存する場合は、根を完全に切り落とし、葉を20センチにカットして、5~6玉を1セットに縛って風通しの良く暗い場所に干しておきましょう。
あって困ることのないタマネギ、貯蔵も利いて言うことなしのマスト菜園品目です! ぜひつくってみましょう。