栽培時期
小松菜の発芽温度は5〜30度で、生育適温は15〜25度とされていますが、暑さ寒さに強く、寒冷地以外ではほぼ一年中栽培することができます。最も育てやすいのは害虫が減ってくる時期に成長させる秋まきです。春まきは花芽がつくので早めに収穫したほうがよいでしょう。夏まきは播種(はしゅ)から収穫まで22〜25日と非常に早いので収穫遅れに気をつけます。夏場は防虫と遮光、冬場は防寒がポイントです。
土づくり
小松菜は土壌が酸性でも育ちますが、酸性の強い畑では播種2週間前に苦土石灰を入れて耕しておきます。さらに1週間前に元肥を入れて耕し、高さ10〜15センチ程度の畝を立てます。
農家の一口メモ
小松菜を専業で作る農家のほとんどがビニールハウスで小松菜を栽培しています。その場合、雨が降った時に水がたまるような畑でなければ畝は立てません。畝がない分、広い面積にぎっしりと小松菜を植え付けることができます。畝がないと畑の中に入って作業することが難しいため、間引きや追肥をすることはほとんどありません。この方法でうまく栽培するためには、かん水チューブなど、畑に均一に水を与えられるかん水設備があること、また土の性質にムラがなく、元肥もまんべんなく混和させられることが重要となってきます。家庭菜園では難度の高い方法ですが、もしビニールハウスを持っていて、一度に大量の小松菜を作りたいということであれば、プロのような畝を立てない方法を試してみてもよいでしょう。
播種
土の表面を平らにならし、深さ1センチ、幅約1〜2センチのまき溝をつけます。まき溝は支柱や木板を土に押し付けると簡単につけることができます。三角クワで掘ってもいいですが、深さにムラがでないように気をつけましょう。ムラがでると、発芽の時期がバラバラになり、収穫時の大きさにもばらつきが出ます。
まき溝ができたら、種が重ならないように注意しながら1〜2センチ間隔で、1粒ずつ種をまきます。すべての種まきが終わったら、両側から土を寄せるようにかぶせ、平クワで鎮圧し、上から水をかけます。水をかけるときはじょうろの蓮口をつけ、種が水圧で流れてしまわないように優しくかけてあげましょう。プランターの場合は土が乾燥しやすいので、発芽するまで濡れた新聞紙をかけておくといいでしょう。
チョウチョが飛んでいるような畑であれば、発芽したらさっそく葉っぱに卵を産みつけられます。小松菜はアブラナ科に属し、アオムシたちの大好物です。家庭菜園では農薬をかけたくないという方も多いでしょうし、初心者には適切に農薬を散布するのが難しい場合もあります。そんな方におすすめなのが、防虫ネットです。播種したら、直ちに防虫ネットをかけましょう。かけ方は支柱を利用する「トンネルがけ」と、畑に直接かける「ベタがけ」の2種類です。小松菜にはアブラムシも寄ってくるので、目合い1ミリ以下の物を使用してください。
防虫ネットをかけずに栽培し、気がついたら小松菜がアオムシだらけになっていた。でも農薬は使いたくないから打つ手がない……そんなときでも諦めるのはまだ早い! アオムシの防除にはBT剤がおすすめです。BT剤は一般の化学農薬とは異なり、「生物農薬」と呼ばれる農薬です。BT(バチルス・チューリンゲンシス)というのはアオムシが食べるとおなかを壊す微生物の名前で、アオムシ以外の昆虫や人間を含むほ乳類、その他の生態系へ与える影響も少ないことが知られています。有機農産物(JAS)でも使用が認められており、世界中で利用されている農薬です。使い方は一般的な農薬と同様に、粉末を水に溶いて、スプレーで散布します。ネットや農協、また大型のホームセンターでも購入することができます。
間引き
芽が出て葉が混み合ってきたら、生育の悪いものを指先でつまんで、2〜3センチ間隔を目安に間引きします。間引き後は土の表面を軽く耕し、土に空気を入れてやると同時に除草をしておきましょう。
さらに背丈が伸び、本葉2〜3枚になったころ2回目の間引きを行い5〜6センチ間隔にします。この時は手で抜くのは難しいので、はさみで切った方がよいでしょう。葉が絡まり合って取りにくいときは、根元を持ってゆすったり、霧吹きなどで葉を濡らしてやると取りやすくなります。間引き後は1回目と同様に中耕、除草をします。
2回目の間引きのときに、葉の色が黄色がかっていたり、まだらになったりしている場合は肥料が足りていません。追肥として化成肥料を条間に入れて、表面の土と軽くまぜましょう。小松菜は肥料をやりすぎるとエグみがでておいしくないので、肥料のやりすぎには注意します。葉が青々としているときは特に追肥する必要はなく、成長する途中で色が悪くなってきたと感じたときに追肥するくらいにとどめます。ただし有機肥料を使いたい場合は、鶏ふん以外は効き目がゆっくりしているので、早めに施肥したほうがいいでしょう。
収穫
背丈が15センチ以上になったら収穫を開始します。家庭菜園の場合、一度に大量に食べることができないので、小さいうちから収穫を始めないと終盤は大きくなりすぎて硬くなってしまいます。市販の種は小袋であっても一度にまくと一家庭では食べきれないほどの収穫量になります。食べられる量を考えて播種量を少なくしたり、播種回数を複数に分けたりするのもおすすめです。寒くなっていく秋口では1週間空けて播種すれば、収穫時期が2〜4週間ずれていきます。
スーパーなど一般に売られている小松菜は20〜30センチですが、小さめだと軟らかく、サラダに入れて生で食べることもできます。もし、この小さくて軟らかい小松菜が気に入ったら、次回の栽培では間引きを2〜3センチのまま密集させて育ててもいいですね。
主な病害虫
アオムシ類
コナガやモンシロチョウなどの幼虫であるアオムシが葉を食べて穴だらけにします。食欲旺盛であっという間に成虫となり産卵して、どんどん増殖します。また、ヨトウムシの幼虫は、1カ所に100〜200個の卵を産むので、集団で葉を食い荒らします。防虫ネットをかけるか、農薬を散布して防除しましょう。
キスジノミハムシ
成虫は体長3ミリ程度の黒褐色で黄色の筋がある甲虫です。葉を食べ、葉の表面に1ミリ以下の丸い穴をあけます。また、幼虫は根を食べます。発生が毎年起こるような畑では、播種時に土壌に粒剤の農薬をまいておくと効果的です。
ハモグリバエ
葉の中を食べながら進んでいくため、葉に白いペンで絵を描いたように模様をつけます。見つけたら葉の上から爪でつぶすか、ひどい場合は農薬散布をする必要があります。
アブラムシ
春と秋に多く発生しますが、ビニールハウスなどでは一年中見られます。ウイルス病を媒介するので、しっかりと防除することが大切です。とても小さい虫なので、目合い1ミリ以下の細かい防虫ネットを使用しましょう。
病害
小松菜は生育期間が短いため病気にはなりにくいと言えますが、それでも炭そ病、萎黄(いおう)病、白さび病、モザイク病などが発生します。病気になった個体は他の個体への感染源となるため、見つけたらすぐに抜き取り処分しましょう。このとき畑に捨てると畑に菌が残ってしまうため、必ず畑の外に持ち出して処理するようにしてください。萎黄病は他のアブラナ科の野菜にも感染することがあり、耐病品種の利用が効果的です。
栽培の難度は低い小松菜ですが、葉を食べる野菜のため、大根やカブなどの根菜に比べて虫との戦いはシビアになってきます。とにかく播種したらすぐに防虫ネット、間引きや追肥の後もすぐに防虫ネットをして虫の飛来を防いでください。「あとからでいいか」としばらくネットを開けっ放しにしておくとすぐに虫が寄って来ます。防虫ネットを再度かけたときには中に虫を閉じ込めて虫かご状態…となってしまわないよう注意しましょう。