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農家が教えるシュンギク(春菊)の栽培方法 プランターでも育つ主役級野菜

久保田 夕夏

ライター:

連載企画:農家が教える栽培方法

農家が教えるシュンギク(春菊)の栽培方法 プランターでも育つ主役級野菜

独特の香りがくせになる! 脇役になりがちな葉野菜にもかかわらず、鍋も白和えもサラダでも、ずばっと主役級の存在感を示す冬の定番野菜です。β-カロテンをホウレンソウよりも多く含み、カルシウム、鉄分、ミネラルも豊富な緑黄色野菜。その名の通り菊の仲間で、虫がつきにくいため家庭菜園にもおすすめです。摘み取り栽培ならプランターでも長く何回も収穫することができますよ。ぜひ気候の良い秋、春に挑戦してみましょう。

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シュンギクの栽培時期

シュンギクの発芽適温、生育適温は15〜20度で冷涼な気候を好みます。ただし霜にはめっぽう弱く一気に枯れてしまうことも。「霜に当てて甘みを出す」という白菜やホウレンソウとは違うので、秋の種まきは遅くならないように気をつけましょう。春まきは花芽がつくので摘み取りは行わず、根元から引き抜く「株取り」にして早めに収穫します。

栽培暦

シュンギクの種類

シュンギクは葉の形によって大葉、中葉、小葉の3種類に大きく分けられます。

品種

大葉

葉のギザギザが少なく、葉が肉厚でやわらかく甘みがあります。シュンギク特有の苦みが少ないのでサラダにもぴったりです。主に九州、四国で栽培されています。

中葉

ほとんどの人がイメージするシュンギクは中葉です。日本で最も多く栽培されている品種で、葉はギザギザしています。根元から側枝がたくさん出て株が張る「株張り型」と、茎が伸びやすい「立性型(株立ち型)」に分類されます。株張り型は株取り(引き抜き)収穫、立性型は摘み取り収穫に向いています。冬場は摘み取りタイプで長期間収穫を楽しみましょう。

小葉

中葉よりもっと細かいギザギザがあります。茎や葉がやわらかく香りも良いのですが、収量が少ない、花がすぐ咲いてしまうということから、現在はほとんど栽培されていません。食べてみたい人は家庭菜園がうってつけです。

土づくり

播種(はしゅ)2週間前に苦土石灰を入れて畑を耕しておきます。さらに1週間前に元肥を入れて耕し、高さ10〜15センチ程度の畝を立てます。畝幅は広くても狭くても大丈夫ですが、幅によって種のまき筋の方向を変えると作業しやすくなります。シュンギクは乾燥を嫌うので堆肥(たいひ)や有機質肥料を入れ保水性を高めるといいでしょう。プランター栽培の場合はホームセンター等で購入できる野菜用培土を利用します。

畝と播種幅

シュンギクの播種(はしゅ)

畝の表面を平らにならし、深さ約1センチ、条間約15センチのまき筋をつけます。シュンギクはもともと発芽率の低い植物で、発芽適温の15〜20度を外れるとさらに発芽は難しくなります。あまり芽が出ないことを考えて種は多めにまきましょう。種が重なっても気にしなくて大丈夫です。また、シュンギクの種は好光性種子といって芽を出すときに光が必要です。そのため覆土が厚くならないよう注意してください。種がぎりぎり隠れるくらいの覆土が理想です。
発芽率を上げるためには種を乾燥させないことが重要です。種まきのあとはしっかり水やりをし、その後も乾かないようこまめに水をあげてください。プランターの場合は土が乾燥しやすいので、発芽するまで濡れた新聞紙をかけておくといいでしょう。
シュンギクの種を買うとたいていたくさん入っています。株どりする場合は一度に食べきれる量だけをまいたほうがいいので、数回に分けて種をまくのがおすすめです。

種まき

シュンギクの間引き

芽が出て葉が混み合ってきたら、生育の悪いものを指先でつまんで、2〜3センチ間隔を目安に間引きします。間引き後は残した株が倒れないように、軽く土寄せします。
さらに背丈が伸び、本葉3〜4枚になったころ2回目の間引きを行い5〜6センチ間隔にします。この時は手で抜くのは難しいので、はさみで切った方がよいでしょう。株取り(根を引き抜いて収穫)するシュンギクはこれで間引き終了です。

間引き1,2

摘み取り栽培をする場合は最後に3回目の間引きをしておきましょう。株間は10〜15センチにしますが、より長くたくさん収穫したい場合は思いきって20センチ空けてみましょう。摘み取り型のシュンギクはしっかり肥料を効かせてあげればかなり大きく育ちます。間引き菜はもちろん食べられるので、収穫を兼ねて間引きをするとちょうどいいです。

間引き3

シュンギクの追肥

2、3回目の間引きのときに追肥として化成肥料を条間に入れて、表面の土と軽くまぜます。シュンギクは肥料を好む野菜です。肥料は雨が降って溶けることで植物の根から吸収されます。しばらく雨が降らないようであれば水やりをしてください。

追肥

シュンギクの収穫

背丈が20〜30センチになったら収穫します。株取りの場合は根元から引き抜くか、はさみで切り取ります。摘み取りの場合は下から3〜4枚の葉を残してカットします。すると残した葉の脇から側枝が伸びてくるので、今度は側枝が大きくなったときに収穫します。側枝を収穫するときは、その側枝にある下から2枚の葉を残してカットしてください。すると残した葉の脇からまた側枝が伸びてきます。こうして何度も収穫することができます。収穫が始まったら2週間に1度追肥して、肥料が切れないようにしましょう。

収穫

真冬でもシュンギクを収穫する方法

前述のとおりシュンギクは寒さに弱いため、一番シュンギクが食べたくなるお鍋の季節、つまり冬には枯れて収穫ができなくなってしまいます。でもせっかく育てるのであれば冬にこそシュンギクが食べたい! それを解決してくれるのが「トンネル」です。畝を覆うように半円状に支柱をたて、それをビニールで覆います。この方法で霜が降りない温度を保ってあげれば、うまくいくと春までシュンギクを収穫し続けることが可能です。2月の終わりか3月頃にはつぼみがつくのでそこで収穫を終了し、また新しく種をまくといいでしょう。

主な害虫

シュンギクは独特な香りのおかげで虫がつきにくい植物ですが、それでもアブラムシやハモグリバエがやってきます。アブラムシはウイルス病を媒介するうえ増殖スピードが非常に早いので、発生したらすぐに駆除したほうがいいでしょう。ハモグリバエは葉の中を食べながら進んでいくため、葉に白いペンで絵を描いたように模様をつけ「絵かき虫」とも呼ばれます。見つけたら葉の上から爪でつぶすか、ひどい場合は農薬散布が必要です。また、ヨトウムシに食べられることもあります。

主な病気

炭そ病、べと病がよく発生します。炭そ病は葉に茶色くぼけたような斑点ができ、その後茶色の部分は枯れてへこみます。べと病は葉の表に黄白色の病斑ができ、葉の裏にはすす状の灰色のカビが生えます。病気は高温多湿のときによく発生するので、対策として密植を避け風通しをよくしましょう。病気になった個体は他の個体への感染源となるため、見つけたらすぐに抜き取り処分しましょう。このとき畑に捨てると畑に菌が残ってしまうため、必ず畑の外に持ち出して処理するようにしてください。
また、生理障害としてよく発生するものに芯が茶色く枯れる心枯れ症があります。これはカルシウム不足のときに起きる症状で病気とは違います。

シュンギクは加熱すると苦みが出ますが、生で食べれば意外とあっさりと食べやすくなります。家庭菜園ならではの食べ方として、収穫したての新鮮なシュンギクを使ってサラダを作ってみましょう。また、花も菊のようでかわいいので、2、3株を春まで残しておいて花を咲かせるのも良い楽しみ方です。シュンギクには大葉、中葉、小葉のほかにもスティック春菊、サラダ春菊などたくさんの品種があります。いろいろ試してお気に入りを見つけてください。

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