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農家が教えるユズ(柚子)の育て方 剪定・病害虫対策のポイントも解説

鶴田 祐一郎

ライター:

連載企画:農家が教える栽培方法

農家が教えるユズ(柚子)の育て方 剪定・病害虫対策のポイントも解説

ユズは果樹栽培の中では比較的手間のかからない部類の品目になります。基本的には地植えされることが多いため、大木に育ちがちです。しかし、鉢植えでも、樹齢は短くなってしまいますが栽培することは可能です。

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ユズの木を育てること自体はそれほど難しくなく、ほとんど失敗して枯らすことはありません。柑橘(かんきつ)類の中では寒さにも強い方なのですが、氷点下の気温が長く続く寒冷地では、特に鉢植えや幼木期の間は枯れてしまう可能性があります。
成木になってもマイナス5℃以下の気温に長く当たると葉が散ってしまい大変弱ってしまいますし、マイナス7℃を下回る場合は枯れてしまうこともあるので、寒冷地では最低気温を意識して苗の購入判断をしましょう。

とても丈夫で力強い植物ですが、果実の皮があまり丈夫でないため、外皮がピカピカの奇麗なユズでないといけないという場合はそれなりの手間を要します。しかし、味は一緒だし無農薬で栽培したいという場合はおすすめしやすい果樹の一つです。

そもそも皮を利用したいけど農薬がついているのが嫌だから自分で植える、という人もいるでしょう。
そんなに大量にいらないのなら、一本のユズの木にレモンやカボスなどのいわゆる「酢ミカン」を接ぎ木して、一本のスペースで何種類もならすと面白いです。接ぎ木を楽しむための台木としてもユズは適していますので、とりあえずユズを植えてから、そのユズにいろいろと接ぎ木してみましょう。

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では栽培の手順について解説していきます。


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ユズの植え付け方

ユズの植え付け時期は3~4月の、新芽が動き出す直前です。常緑樹なので冬を越えて暖かくなってからの植え付けが基本です。
もし早い段階でユズを植え付ける予定が決まっている場合は、前の年の12月頃から植え穴を掘り上げておいて土づくりしておくと良いでしょう。一回掘り上げた土を冬の霜に当てておくことで病害虫や害のあるガスをあらかじめ取り除き、一年目に根を巡らす場所に新鮮な空気を送り込むことができます。

とはいえ3~4月の植え付け直前に掘り上げても全く問題ありませんので、余裕のある人はやってみてください。
50センチ四方を掘り上げて、堆肥(たいひ)20キロ、苦土石灰1キロを混ぜて置いておき、植え付け直前に市販の配合肥料を1キロ混ぜて図のように植え付けます。

注意点は3つ

  • ① 根をできるだけ広げて植え付ける
  • ② 接ぎ木部分が埋まらないように浅く植え付ける(添え木がないと倒れる程度で良い)
  • ③ 植え付けたら土と根が密着するようにたっぷりと水やりする

ユズの肥料管理

植え付け後は、最初の3年間はひたすらに木を大きくさせる時期です。木を庭で小さく育てたい人や鉢植えの人は2年目から収穫できますが、どの場合であっても最初の植え付け1年目は果実をならせないようにしましょう。実ってしまったものは6月までに全て取り除きます。

木を大きくしたい場合は、3月から10月にかけて毎月肥料を散布します。月1回、配合肥料を200グラムずつ根元に散布しましょう。
小さく育てたい人も、6月と10月の2回だけは同量の追肥をおすすめします。翌年から始まる収穫に影響します。
鉢植えの場合は毎月大さじ1杯の追肥を欠かさないようにしましょう。

収穫が始まってからは、3月、6月、10月の3回の追肥をすることで安定した生育を確保することができます。

ユズの病害虫防除

ユズに発生する病害虫はたくさんありますが、おそらく家庭果樹での栽培ではある程度の放任栽培が望まれていると思いますので、いざという時のために役に立つ薬をいくつか紹介します。
まず「マシン油」これはとても安価な園芸用に調合された油です。かけることでダニなどの小さな虫は窒息して死にますし、木を枯らすこともあるカイガラムシにも効果があります。
もう一つは「ボルドー剤」これは銅と石灰を混ぜた薬剤です。見た目は汚くなりますが、あらゆる病気から身を守ってくれる保護殺菌効果があります。

困った時のために、ジマンダイセン水和剤とスミチオン乳剤という安価で手に入りやすい殺菌剤と殺虫剤を手元に置いておくと役に立つでしょう。
もっとちゃんと防除したい!と思った人には、スプラサイド水和剤とデランフロアブルという薬剤をおすすめします。最後の二つはある程度専門性の高い園芸店やJAの資材センターでないと手に入りにくいでしょう。

特に重要な病害虫が侵入してきやすい時期は、3~4月と、6~7月の二回です。注意しておきましょう。

ユズの摘果

ユズは摘果してあげたほうが1果あたりが大きくなることもありますが、たくさんなる年と全くならない年を繰り返す「隔年結果」という現象を摘果によって抑えれば、毎年安定してならせることができるようになります。その年になっている果実のためというよりは、来年のためにもなりすぎた年は摘果をしましょう。
摘果は早ければ早いほど効果が高いのですが、6月までは生理落下という、勝手に果実が落ちていく期間なので、その時期が終わってから開始しましょう。
1果実あたり、葉っぱが100枚あるくらいの状態が木の理想的なバランスです。

ユズの収穫

ユズは糖度を上げる必要がないので、かなり若どりすることができるため、比較的長い期間にわたって収穫を楽しむことができます。
最初は8月から9月にかけて青ユズとして収穫して、あとは年末にかけて黄色く熟したものを順次収穫していきましょう。特に完熟したユズはあまり長く貯蔵できないので、青ユズから積極的に収穫して長く楽しみましょう。
2月3月頃まで貯蔵するためにも、完熟しきってからではなく、年内に9割程度の着色で収穫し終えるのが理想です。

ユズの剪定(せんてい)の仕方

メインとなる主枝を3~4本斜めに伸ばしていき、主枝の進行方向とは逆方向の内向きに伸びようとしている枝が繁りすぎないように整理していきましょう。

家庭果樹であれば、数年間は触らずに、ある程度育って枝の選択肢が増えた段階で木の形を矯正するやり方が最も単純でわかりやすいかと思います。

剪定は木全体の2割程度に抑えるようにしましょう。枯れている枝があまり発生しないように、木の内部にチラチラと木漏れ日が差す程度に透かした状態を目指しましょう。繁りすぎて日が当たらなくなると、日の当たらない部分が枯れてしまいますので、枯れている部分が増えてきたら繁りすぎているなと考えましょう。
また、枝にあるトゲを剪定時にできる限り除去しておくことで、病気も減りますし、収穫も楽になります。

以上、自家製ジャムや柚子こしょうなどユズは加工用途がたくさんありますので、特に料理好きの人が庭で育てると人生がとても豊かになりますよ! ぜひ、育ててみてください。

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