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農家が教えるレモンの育て方 虫・鳥獣害に強い? 実は簡単な家庭果樹

鶴田 祐一郎

ライター:

連載企画:農家が教える栽培方法

農家が教えるレモンの育て方 虫・鳥獣害に強い? 実は簡単な家庭果樹

プロアマ問わず、スペースが空いている場所にとりあえず植えておく果樹としてとても人気のレモン。家庭果樹でのレモン採用率は、統計をとればきっと上位に食い込んでくるでしょう。
基本的には果汁を利用するものですが、購入すると意外に高額(特に国産!)ですし、自分で育てておくと便利で経済的です。外見を気にしなければ無農薬でも十分収穫できますし、糖度よりも酸味を楽しむ果実なので、虫や鳥獣の被害が少ないレモンの栽培は、思っているほどハードルは高くありません。

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レモンの木は、樹勢が強く、ほったらかしにしているとなかなかの大木に成長します。鉢植えであればそこまで大きくなる心配はありませんが、代わりに収穫量もそれなりです。永続的な栽培にするためには、鉢の中で根が詰まってしまわないように根を切ったりほぐしたり鉢上げ作業をしてあげなければいけません。

植え付け1~2年目は10号鉢(10リットル容量程度)でも育ち、2~3年目には数個の収穫はかないます。しかし、スペースが許すのであれば最終的には40リットル容量程度の大きめのプランターまで鉢上げすることで何十個ものレモンを永続的に収穫することができます。
地植えの場合は、木の中に入り込んで収穫しなければならないので(剪定の項目参照)、トゲだらけのレモンの木からレモンを収穫し終えるまでに自分が傷だらけになってしまうことになります。近年ではトゲなし品種も出回っているので、そういった品種を選んでおいた方が幸せになれるかもしれません。

では栽培カレンダーに沿って育て方を見ていきましょう。

レモンの寒さ対策

レモンは寒さにとても弱い種類の植物です。最低気温が-2℃を下回る場合、最悪枯れてしまい、枯れずとも葉が全て落ちてしまい極端に弱ってしまうことがあります。
鉢植えであれば雪の予報が出ている間は室内に置いておくのも良いでしょう。地植えの場合でも、幼木期は寒さ対策に不織布などで冬の間包んであげた方が良いです。とは言え関東以北でもレモンを栽培している人はいますので、工夫してあげれば十分に楽しめるでしょう。

レモンの植え付け

このように寒さに弱いレモンは、基本的に春、暖かくなってきた3~4月にかけて植え付けます。
1~2月の寒いうちに、植え付ける位置に縦横30センチ以上の穴を掘り、堆肥(たいひ)10キロ、苦土石灰50グラムを掘り上げた土とよく混ぜておきます。
暖かくなってきたら土を埋め戻して、浅めに植え付け、倒れないように支柱を立てて固定しておきましょう。

鉢植えの場合は、購入した培養土を使用すればpH調整のための石灰などが必要ないため便利です。
自分で土づくりをする場合は、赤土6:腐葉土4くらいの割合で、苦土石灰を一握り入れてよく混ぜ、植え付けます。

レモンの植え付け後の管理

レモンを植え付けたその年は果実を収穫しません。今後何年も収穫し続けるためにも、実がなってしまったら全部摘果して木への負担を抑えましょう。
地植えの場合は2カ月に1回、鶏ふんなどの有機質肥料を3キロ程度与えて木を大きくしていきます。
鉢植えの場合は毎月、大さじ1杯分の有機質肥料を与えてください。
地植えだと3~4年目くらいから結実が始まります。鉢植えでは2年目から結実が始まりますが、どんどん鉢上げして木を大きくしたいのであれば、2年目までは摘果してしまいましょう。
次の春が来るまでは、ただただ肥料と水やりを行うだけで構いません。夏以降に発生した新しい葉に、模様が出てきて縮れたような見た目になるかと思いますが、ハモグリバエという害虫の仕業です。見た目は気になりますが大勢に影響はないので放置して構いません。

レモンの剪定(せんてい)

1年経って2年目の春(2~3月)がくると、1回目の剪定時期になります。
レモンの木は、あまり細かい剪定を必要としません。地植えの場合は、わかりやすいようにメインとなる主枝を3~4本決めて、その主枝候補の枝に光が当たるように透かしてあげます。
基本的に常緑樹の剪定は、木全体の2割程度しか切ってはいけません。切りすぎないように注意して形を目標の樹形に整えてあげましょう。

理想的なレモンの樹形はこのような形で、外から見てもわかりづらいですが、木の内部に空間ができる状態になります。レモンは木の内側に良い果実をならせる傾向があるので、内側のスペースをしっかり確保し、病害虫の原因になる枯れ枝を全て除去します。
枯れ枝があるということは、夏の間その場所に光が当たっていなかった証拠です。春の剪定時期に枯れている部分ができるだけ無いように枝を透かして、内部まで光がチラチラと届くようにしてあげましょう。

鉢植えの場合は、レモンの理想的な“内なり”状態をつくることは難しいので、あまり気にせず、枯れ枝を取り除く程度で構いません。枯れ枝があるということは光が当たっていないということ。全体の2割くらいの枝を間引いて透かしてあげましょう。
全体の1/4も切ってしまったら切りすぎですので、その辺でやめておいて、来年度また枝を整理しましょう。

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レモンの肥料(結実しているとき)

果実をならせるころになってくると、幼木期と同じ量の肥料では多すぎますので、隔月ではなく、3月と6月と11月の3回、2キロずつ有機質肥料を根元から1~2メートル離して与えてください。元肥となるのが3月ですので、3月に木の周囲に堆肥を散布できると根の張りが良くなります。
鉢植えの場合も同時期で構いませんが、施肥量は鉢の大きさに合わせて減らしてください。

レモンの実がならない

レモンの相談でダントツ一番多いのは「何年経ってもレモンの実がならない」というものです。
特に地植えしている場合、5年経っても、10年経っても木ばかり大きくなって果実がならないという相談がよくあります。かくいう筆者の畑にあった、母がなんとなく植えて放置されていたレモンの木は、16年目まで一切実をつけず、ある年を境に突然毎年鈴なりになり始めました。
ユズやレモンは、地力の高い肥沃(ひよく)な土地に植えられた場合、往々にしてこのようなケースが発生します。
果実がならないからと言って肥料を与えるとさらに悪化しますので、そのような肥沃な土地の場合、肥料を一切やらずに育て、また、真上に立ち上がっている枝をひもで外側に引っ張るなどして横向きに矯正してみてください。その枝は次の年から鈴なりにレモンがなり始めるでしょう。

レモンの収穫

レモンは、原産地においては四季なりと言って、年に何回も収穫できます。残念ながら冬のある日本では、年に何回も収穫できる場所は少ないため、ほとんどの場合、秋~冬にかけての収穫になります。
糖度の高い作物ではないので、10~11月の緑色のレモンでもグリーンレモンとして楽しむことができますし、春が来て暖かくなる4月まで木にならせたまま置いておくこともできますので、必要な時に必要なだけ収穫しましょう。ただし、置いておけば置いておくほど皮が分厚くなります。

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レモンの病害虫

レモンは無農薬でも容易に育てられることが魅力の果樹です。あまり神経質になる必要はありませんが、カミキリムシにやられると枯れることもあり得ます。夏場に木の周りを見て、木くずが散らばっていた場合、間違いなくカミキリムシの幼虫が木の中に入り込んでいます。

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ユズは果樹栽培の中では比較的手間のかからない部類の品目になります。基本的には地植えされることが多いため、大木に育ちがちです。しかし、鉢植えでも、樹齢は短くなってしまいますが栽培することは可能です。

ホームセンターにカミキリムシやコスカシバ専用のスプレーがありますので、木くずの真上に開いている穴に差し込んで噴霧しましょう。
果実表面に発症するかいよう病やダニがどうしても気になる場合は、3月下旬にボルドー液、6月中旬にジマンダイセンかマシン油を散布しましょう。いずれも毒性の非常に少ない農薬になります。

以上がレモンの栽培方法です。庭にレモンの木があるってオシャレですよね! 簡単果樹、ぜひお試しください。

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