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農家が教えるカラシナの栽培方法 葉っぱは食べて、種で手作りマスタードに挑戦!

久保田 夕夏

ライター:

連載企画:農家が教える栽培方法

農家が教えるカラシナの栽培方法 葉っぱは食べて、種で手作りマスタードに挑戦!

「カラシナ」と聞いてすぐに葉っぱの形を思い浮かべるのはちょっと難しいかもしれません。ですがサラダに入っているピリッとする葉っぱや、鼻にツンとくる漬物、それに河原に生えている菜の花も、実はカラシナだったりします。チューブのからしやホットドッグにかける粒マスタードはカラシナの種子をすりつぶしたものです。カラシナの葉は栄養もたっぷり。病害虫にも強くて育てやすい植物なので、畑の隅に植えて葉っぱも種も楽しみましょう。

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カラシナの栽培時期

カラシナの播種(はしゅ)適期は春と秋です。冬に葉を収穫しますが、寒さに強く越冬するので春にはつぼみを収穫して食べることもできます。花が咲いた後は細長い実がつき、梅雨ごろに種ができます。夏の暑さには弱いので、暖かい地域では秋まきが育てやすいでしょう。また、種だけを楽しむ場合は春に種をまいて収穫するといいでしょう。

カラシナの栽培暦

カラシナの種類

カラシナにはたくさんの種類があります。まず和食でお浸しや漬物、煮物に使用される「葉からし菜」。こちらは株間を広くとり大ぶりに育てます。また、ベビーリーフを収穫するのが「グリーンマスタード」や「レッドマスタード」です。グリーンマスタードは葉からし菜に比べて葉の切れ込みが細かくチリチリと葉が縮れたような外見が特徴的です。レッドマスタードは平たい葉がその名のとおり赤みがかった色あいになっています。
「リアスからし菜」や「からし水菜」「コーラルリーフ」は前述のカラシナ類とは異なり水菜によく似た形で、葉身が細くツンツンとした葉っぱです。リアスからし菜とからし水菜は名前に「赤/レッド」と付く紫色のものもあり、コーラルリーフは紫色。見た目にも鮮やかなのでサラダと相性がよい野菜です。ベビーリーフとして収穫してもいいですし、大株に育てて漬物などにすることもできます。
さらに「高菜」や「ザーサイ」「つぼみ菜」「わさび菜」といった野菜もカラシナの仲間です。
からしの原料としてはオリエンタルマスタード、イエロー(ホワイト)マスタード、ブラウンマスタードなどの品種がありますが、これら以外でも基本的にカラシナ類であればマスタードを作ることが可能です。熊本県阿蘇地方では高菜のマスタード(タカナード)も販売されています。

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カラシナの土づくり

カラシナはとても丈夫な野菜なのでそれほどデリケートに考える必要はありません。ただし他のアブラナ科のキャベツや白菜と同様に根こぶ病にはかかります。根こぶ病が出たことのある畑に植える際は、植え付け前に専用の薬剤を土に混ぜ込んでおきましょう。また、根こぶ病は土壌が酸性になるほど発病しやすいので、石灰をいれて土壌pHを中性にしておくことも効果的です。プランターで栽培する場合は市販の野菜用の土を使用します。

カラシナの播種

畑に播種する場合はまず畝の表面を平らにならし、深さ約1センチ、条間約20センチのまき筋をつけます。まき筋は支柱や木板を土に押し付けると簡単につけることができます。プランターの場合は大きな縦長のプランターならまっすぐ平行に2列、条間約15センチのまき筋をつけます。

カラシナの株間

まき筋ができたら約1センチ間隔で、1粒ずつ種をまきます。すべての種まきが終わったら、平クワなどで1センチほど覆土し、軽く鎮圧してからじょうろでやさしく水をかけます。プランターの場合は手で土をかけてから、軽く土を押さえて、水をやりましょう。

カラシナの種まき

葉を食べる目的で育てるならば、播種後すぐに防虫ネットをかけておくと安心です。種だけが目的なら多少は虫に食われても問題ないので防虫ネットなしでいいでしょう。

カラシナの防虫ネット

カラシナの間引き

アブラナ科の種は発芽が早いので、暖かい頃であれば種をまいて2〜3日で芽が出てきます。間引きは本葉1〜2枚で3〜4センチとし、ベビーリーフで収穫する場合はこのまま育てます。もっと大きくしたい場合は本葉3〜4枚頃に6~8センチ、本葉5〜6枚で15センチ程度にします。間引きをするときははさみでおこない、他の株を傷つけないように注意しましょう。

カラシナの間引き

間引き後は株がぐらぐらするので軽く株もとに土を寄せておきます。また、間引きのときに雑草が生えていれば除草します。小さいうちに取っておかないと、あっというまに雑草に埋もれてしまいます。切り取った間引き菜はサラダに入れてさっそく食べてみましょう。防虫ネットは間引き作業の時は開けて、作業が終わったらさっとかけなおします。

カラシナの移植

カラシナは苗を育ててから移植することもできます。特に葉からし菜や水菜タイプのカラシナを大株に育てたいときは移植に向いています。苗作りはセルトレイやポリポット、苗床などに種をまき、本葉3~4枚まで育ててから畑に植え付けます。

カラシナの移植

カラシナの追肥

葉っぱの色が黄色っぽいときは肥料不足です。間引きのときに化成肥料を1平方メートルあたり30グラム程度入れ、株もとに軽く土寄せしておきます。秋まきのカラシナで種も取りたい場合は栽培が長期間になるので、春先にも追肥をしておくと種がたくさんつくでしょう。

カラシナの追肥

カラシナの収穫(葉)

葉からし菜は草丈が20センチくらいになったら収穫します。株もとから包丁か、はさみで切り取りましょう。グリーンマスタードやレッドマスタードはベビーリーフで食べられるので、好きな時に収穫します。成長点をつまなければどんどん新しい葉が出てくるので長く楽しむことができます。

カラシナの収穫

もちろんずっと収穫していると肥料がなくなっていくので途中で生育が鈍くなってきたら追肥をおこなってください。また、株が古くなってくると葉が筋張っておいしくなくなるので、その時は収穫を終了しましょう。また、トウ(花芽のついた茎)を収穫する場合も花が咲くと筋っぽくなるので咲く前につぼみを収穫します。収穫の目安はカラシナの種類によって異なるので、種袋の裏に書いてあるサイズや時期を参考にしてください。

カラシナの収穫(種)

春になるとカラシナはにゅうっと茎を高く伸ばし、菜の花を咲かせます。その後緑色の細長いさやをつけ、梅雨ごろになるとそれが熟し下のほうからうす茶色になってきます。上部のさやが成熟するのを待っていると下部のさやははじけて種が出てしまうので、だいたい茶色っぽくなってきたら収穫しましょう。収穫が遅れると次の年には大量のカラシナが畑から生えてくるかもしれません。収穫したさやは1~2週間乾燥させてから中の種を取り出します。カラシナの種は非常に小さいので目の細かいネットやビニール袋に入れて上からたたいたりもんだりするか、大きなビニールシートに広げてたたいて中の種を出します。種を集めるとごみもたくさんついてくるのでザルや扇風機などでごみと分けます。その後、種はさっと水洗いして天日で乾かしてから保存します。炎天下で長時間乾燥させると種が割れるので、短時間で引きあげましょう。酢や水にひたし柔らかくしてからすりつぶせば自家製マスタードのできあがりです。少し熟成させたほうが味が落ち着きます。

カラシナの主な病害虫

コナガ、ヨトウムシ、アオムシ、アブラムシがよくやってきます。コナガは1個ずつ点々と、ヨトウムシは一カ所に100〜200個の卵を産み付けて集団で葉を食い荒らします。アブラムシもどこからかやって来てどんどん増えます。防虫ネットをかけるか、農薬を散布して防除しましょう。ただし前述のように種を収穫するのが目的であれば気にするほどではないので、多少の虫食いならば放っておきましょう。

病気は根こぶ病がよく出ます。その他べと病や白さび病、モザイク病になりますが、わりと病気には強いほうだといえるでしょう。病気になった株は抜き取って畑の外に持ち出して処分します。

マスタードは、紀元前から利用が始まったとされる最も古い香辛料の一つです。葉や茎、つぼみにもピリリとした辛み成分を含み、血液循環や食欲増進などに効果があるとされています。いろいろな種類があるので、用途に合わせてぜひお気に入りのカラシナを見つけてください。

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